地域力発見

ケアマネジャーに聞くフードケア② 森岡真也さん/宮下今日子(連載98)

ケアマネジャーに聞くフードケア② 森岡真也さん/宮下今日子(連載98)

 モテギケアプランニング新宿の管理者、森岡真也さんは、区内にある「新宿食支援研究会」(五島朋幸代表)に、その立ち上げ時から関わり、現在はリーダー格となり「食支援サポーター養成講座」を受け持っている。区内のケアマネ団体(ケアマネット新宿、会員約200人)の副代表も務め、専門職だけでなく、地域住民にも〝食〟の話をしてきた。今回は食支援に明るいケアマネジャーを紹介したい。

食支援チームをプランに位置付け、ムース食からトロミ餡付き刻み食に改善

新宿区を面で把握

 地域特性を把握するのはケアマネの基本だが、新宿区は人口約35万人弱で、高齢化率は約20%弱。独居の高齢者と高齢者のみ世帯が多く、その数は23区内でもトップクラス。生活保護世帯は23区内5位ととても多い。また、高齢化率50%を超える大規模都営住宅が2カ所ある。「都営住宅の約6000人が住むエリアは、約半数が高齢者。超高齢社会はこういう街か」と思うこともあるそうだ。

 また、大きな病院が多いのも特徴で、国立国際医療研究センターをはじめ、大学病院が3カ所もある。大規模病院が多いと、必然的に難病や病気が重い人が多くなる。区内には医療依存度が高い要介護者が多いと日々感じているそうだ。

 施設は、特養は要介護5の人しか入れないような状況が続き、他市町の特養と連携している。経済力から有老も簡単には選べず、施設は難しい面がある。しかし、訪問診療や訪問看護事業所は多い。自宅で最期まで暮らしたい人も多いそうだ。

 こうした地域特性を背景に、ケアマネット新宿では医療知識や難病、ACPを学ぶ機会を増やしている。また低所得層や、生活トラブルを抱える複合的な課題も積極的に学んでいる。医療、介護、福祉が一体となるケースが多い分、多職種連携も進むのかもしれない。

食支援を取り入れた事例

 要介護5のSさんは、独居で生活保護を受けている。難病の脊髄小脳変性症で寝たきり。手の力と嚥下に課題があり、口から食べて最期まで家で暮らしたい希望をもっている。昼食はベッドサイドに置き、手を伸ばして自分で食べていた。
 誤嚥性肺炎で入院
 神経難病のため飲み込み機能は少しずつ落ちていた。ある日、自分で食べられなくなった時、森岡さんはヘルパーだけでなく、すでに入っていた看護師、リハ3職種にも水分と食事をお願いした。誤嚥防止のため、こまめな食事摂取が必要だったからだ。

 しかし、その後、誤嚥性肺炎で入院となり、食事は全介助になった。森岡さんはこれまでのスタッフに管理栄養士と訪問入浴を追加した。こんな大人数の調整は大変だろう。さらに、障がい者の支援制度を使おうと、区の障がい者福祉課にも掛け合った。最初は介護保険の定期巡回を使えば、と突き返されたが、定期巡回は男性ヘルパーが多く(本人の拒否あり)、時間も短いため難しいと説明したら、すぐに応じてくれた。根拠ある説明が大事になる。

 食支援の主な中身は、まず歯科医師が嚥下評価し、食形態を決め、管理栄養士が食事指導する。教えを受けたヘルパーが調理を行うという流れ。歯科衛生士、リハ職も関わった。食事はトロミ餡を付けてくれる配食弁当を選び、ヘルパーにひと工夫してもらった。管理栄養士は、練り梅や昆布茶を上手に使って味を濃くしたり、ウニペーストでカロリーを上げたり、試供品も上手に活用していた。

 こうしたチームプレーにより、Sさんはムース食まで食形態が落ちていたが、トロミ餡付きの刻み食が食べられるようになった。「おいしい!と言ってくれた」と電話口からのサ責の声に、森岡さんも思わず「よっしゃー!」と叫んだそうだ。Sさんは噛むことでやっと味が分かるようになったのだ。森岡さんはすぐに皆に喜びを伝えた。「多職種の組み合わせの妙を味わえるのはケアマネの醍醐味」と話すが、扇の要となり、調整がうまくいった喜びを実感できたようだ。

食への気づきを大切に

 「食の希望が叶えられない在宅生活なんて嫌じゃないですか」と森岡さんは言う。要介護者は何かのきっかけで食支援が必要になるが、食支援をケアプランに入れられるケアマネはまだまだ少ないと実感している。

 まずは、歯の状態が合っていない?痩せてきた?偏った食生活をしてない?など、気付ける人を増やしていきたいと話している。
(シルバー産業新聞2020年3月10日号)

関連する記事