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居宅介護支援 逓減制45件から ICT活用・事務員配置で

居宅介護支援 逓減制45件から ICT活用・事務員配置で

 厚生労働省は11月26日、社会保障審議会介護給付費分科会(分科会長=田中滋・埼玉県立大学理事長)を開き、次期介護報酬改定に向け、居宅介護支援の見直し内容を議論した。俎上に上がっていた基本報酬の逓減制の緩和については、45件から適用する案を示したほか、質の高いケアマネジメントと経営の安定の両立を図っていく観点から、特定事業所加算に小規模事業所でも取得しやすい新たな区分を設ける案などを提示した。

 10月末に公表された介護事業経営実態調査で、居宅介護支援の収差率は▲1.6%と、全サービスの中で唯一の赤字となっている。次期介護報酬改定では、質の高いケアマネジメントを推進しつつ、居宅介護支援事業所の厳しい経営状況を改善していく見直しが求められている。

 こうした中、改善策の一つとして検討されているのが基本報酬の逓減制の緩和だ。この日の分科会で厚労省は、ICTの活用や事務職員を配置している事業所の場合、ケアマネジャー1人当たりの利用者数が、それ以外の事業所よりも約3人多く、労働投入時間もおよそ3~12時間短くなっているデータなどを示し、一定のICT活用や事務職員の配置を図っている事業所に対し、逓減制の適用上限を40件から45件に引き上げる案を示した。

 ICT活用の例として示されたのは、「事業者内外や利用者の情報を共有できるチャット機能のアプリを備えたスマホ」「訪問記録を随時記載できる機能のソフトを組み込んだタブレット」など。事務職員の勤務形態についても縛りは設けず、こうした機器や体制を整えられる事業所については、逓減制が緩和されるイメージだ。

 ただ、居宅介護支援は小規模な事業所が多く経営状況も厳しいため、事務職員を配置している事業所は全体の36.5%、スマホやタブレットなどの携帯端末を利用している事業所は11.6%にとどまっている。現場には「対応できるだけの余裕がない」との声も多く、全体の改善を図っていくのであれば、事業所の規模拡大やICT化を図っていくための支援策なども必要になる。

 また、逓減制が緩和されることにより、ケアマネジメントの質の低下を懸念する意見もあるため、逓減制緩和の効果検証を行うとともに、より適切なケアマネジメント手法の実効が担保されるような方策なども検討していく考えを示した。委員からは目立った反対意見は出なかった。なお、この日の案では、中山間地域などで、やむを得ない理由で利用者を受け入れた場合、逓減制の適用の件数に含めない考えも示されている。

特定事業所加算に新区分

 さらに質の高いケアマネジメントと経営の安定を両立させる策として、厚労省が新たに提案したのが、特定事業所加算に新区分を設ける案だ。経営実態調査の結果では、特定事業所加算を取得している事業所の収支差率が、全体よりもよい傾向になっている実態を踏まえ、小規模事業所や地方の事業所でも取得しやすい区分を設ける。

 具体的には、特定事業所加算を取得するために必要な12要件のうち、▽主任ケアマネ常勤1人以上▽ケアマネ常勤1人以上、非常勤1人以上――に人員要件を緩和するとともに、▽24時間の連絡体制確保▽計画的な研修の実施▽基礎研修の実習協力体制の確保▽他法人との共同事例検討会等の実施――の要件については、他の事業所との「連携でも可」とする案を示した(表)。事業所間の連携を評価することで、小規模事業所でも算定要件を満たしやすくし、質の高いケアマネジメントの実施と経営改善の両立を図っていく考えになっている。

 さらに、特定事業所加算については、13要件目として、「必要に応じて、多様な主体等が提供する生活支援サービス(インフォーマルサービス含む)が包括的に提供されるような居宅サービス計画を作成していること」を新設し、全ての区分で必須とする案を示したほか、評価軸が異なる加算(Ⅳ)については、名称を「医療介護連携体制強化加算(仮称)」に改める案も示した。

介護予防支援に 「委託連携加算 (仮称)」 創設

 この他の見直しでは、通院時に医療機関と情報連携した場合に報酬上で評価する案や、利用者の死亡でサービスにつながらなかった場合などに限って、一連のケアマジメントプロセスが行われた場合、基本報酬の請求を可能にする案などが検討されている。

 一方、これまで俎上に上っていたケアマネジメント業務以外の業務を実施した場合の実費徴収については、「実費を徴収することで、本来業務以外の作業についても対応しなければならない事象が発生するのではないか」などの意見を踏まえ、「法令による対応ではなく、必要に応じて参考事例の周知等を検討することとしてはどうか」と、法令の改正を見送る考えを示した。

 また、介護予防支援については、地域包括支援センターと居宅介護支援事業所との連携を評価する「委託連携加算(仮称)」を創設する考えが示された。

 年内の取りまとめに向け、議論は大詰めを迎えている。

(シルバー産業新聞2020年12月10日号)

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