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摂食障害に多職種で支援/宮下今日子(連載85)

摂食障害に多職種で支援/宮下今日子(連載85)

 前回に引き続き、「ケアマネジメントの標準化」実践編の第2回目として、摂食障害で体重増加を目指した取組を紹介したい。

ケアマネジメントの標準化 実践編その2

 昨年5月に実施された「ケアマネジメントの標準化」基本ケアの研修(品川区介護支援専門員連絡協議会主催)に参加した井上知子ケアマネジャー(テルウェル東日本、南品川ケアプランセンター)は、摂食障害で悩む利用者を看護師とヘルパーら多職種連携で支えてきた。

 Tさん(70歳女性)は、出会った当初、身長156cmで、体重が28kg。26kgを下回ると人間は死ぬと医師に言われたそうだ。体重に無自覚だったTさんは、ある日、突然倒れ救急車で運ばれた。

 検査の結果、心臓や腎臓などに病気が見つかった。しかし、食べられないことが一番の問題で、江東区にある「くじらホスピタル」という摂食障害に詳しい心療内科病院に転院した。

 Tさんの回復は時間がかかると言われていた。Tさんは18年6月に体重28kgで退院。井上さんは在宅のケアプランを立て、訪問看護を入れた。しかし、持病の腎臓、心臓などの疾患から入退院を繰り返した。

 井上さんは、入院時にも病院に足を運び、食事内容の把握に努め、訪問看護師やヘルパーに伝えてきた。Tさんは病院にいると食事を守り体重の変動はなかった。在宅でも病院のメニューを参考にしたが、体重は増えない。なぜか?チーム3人での話し合いは続いた。丁度その頃に、今回の「ケアマネジメントの標準化」の研修があった。

 井上さんはすぐにTさんを選び、標準化のモニタリングの目標を「主治医との約束で、体重が32kg以下にならないように見守ること」とした。そして、食事・水分摂取量、活動、排泄、カロリー摂取を確認していった。

 その中で気づいたことは次の2点だった。
 
 1.食事内容は医師や看護師が把握していたが、食べる順番に問題があった。野菜が好きで、野菜を先に食べて炭水化物は残していた。さらにパソコン作業に夢中になり欠食があった。

 2.活動量が多かった。医師からは体重が減少するので、活動量が制限されていたが、本人は夢中になり気づかなかった。

 そこで、温野菜にしたり、経腸栄養剤を凍らせたり、おにぎりを冷凍したりと工夫を重ねた。その後も、10月に入院したが、11月20日の退院後には、医師との約束であった33kgまで体重が増えた。
 体重が33kgになった要因としては次の3点を挙げる。

 1.医師に「自宅での決め事」として、活動制限事項を紙に書いてもらった。

 2.本人の食事内容の記述が、以前よりも細かくなり、本人の食事に対する意識が高くなった。

 3.新たに導入した配食弁当が本人に合っていた。

 Tさんは「痩せることが嬉しいと思っていたんですよ」と当時を振り返る。またその頃、仕事を辞め、自分だけが取り残されたと落ち込んでいた。それが、友人の退職で精神的落ち込みが無くなり、摂食障害から抜け出した。

 専門家のアドバイスにも素直に耳を傾けるようになり「食と身体と脳は繋がっていると自覚したのよ」と聡明なTさんは自己分析してみせた。友人と楽しく過ごすには体を作らなきゃ、と思ったそうだ。それが食欲に繋がった。「Tさんからは教えて頂くことばかり」と井上さんも嬉しそうに話す。
 井上さんは、今回の研修の数値化を振り返り、Tさんがカロリーの高い物から食べ始める意識が高くなったことを挙げる。

 また、ケアマネとして、食事制限のある利用者に調理を依頼する時、専門的なアドバイスができるようになったこと、体重を減らす必要のある人にも食事のカロリーに対するアドバイスができるようになったと実感する。ケアマネジメントの標準化に手ごたえを感じているようだった。
宮下今日子

(シルバー産業新聞2020年2月10日号)

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