在宅栄養ケアのすすめ

新栄養指標「GLIM基準」退院支援にも有効 :中村育子

 2018年に世界の主要な臨床栄養学会(ESPEN、ASPENなど)が新しい低栄養診断基準として策定したのが「GLIM基準」です。これまで国・地域で差異があった栄養評価を統一基準として提唱しています。診療報酬改定では入院基本料等の施設基準に栄養管理体制が明確化され、特に回復期リハ病棟ではその評価方法として「GLIM基準が望ましい」と明記されています。介護事業所やケアマネジャーの立場からすると、退院時等に同基準による栄養情報提供を受ける機会が、今後増えてくると考えられます。

軽度~重度を把握する3ステップ

 GLIM基準は①栄養スクリーニング②低栄養診断の確定③重症度判定――の3段階で構成されます。①は全対象者へ、既存のスクリーニングツール(MNASFなど)を用いて行い、「栄養リスクあり」と判定された人は②の低栄養診断に進みます。
 低栄養診断は「表現型基準」と「病因基準」に分かれ、表現型では▽意図しない体重減少(6カ月以内に5%超の減少、または6カ月以上で10%超の減少)▽低BMI(70歳未満18.5%未満、70歳以上20%未満)▽筋肉量減少――をチェックします。

 筋肉量が入っている点には注目です。リハ・口腔・栄養の一体的実施が推進される中、病院ではリハ職も関わる指標になると期待できます。また、測定は下腿(ふくらはぎ)周囲長も可としていますので、スクリーニングの段階で得られる情報もあります。ただし、現時点で筋肉量に関して日本人のカットオフ値(低栄養を判断する境目)は示されていません。

 一方、同基準には血清アルブミン値が含まれないこともポイントです。例えば脱水状態だと一時的に血液が濃縮され、評価に影響することがありますので、判定には不十分との判断だったのでしょう。
 病因基準では食事摂取量や消化吸収能、疾病負荷や炎症をみます。両基準で1項目以上が該当する場合「低栄養」と診断され、最後の重症度判定に進みます。重症度判定では、例えば意図しない体重減少が「6カ月で10%超」など、表現型基準の値がより高度な場合に該当するとしています。
 病院の栄養評価指標が統一されることは、情報を受け取る側にもメリットです。これまで分かりづらかった低栄養(リスク)の度合いや原因について、今まで以上に把握しやすくなるのではないかと期待できます。

関連する記事

2024年度改定速報バナー
web展示会 こちらで好評開催中! シルバー産業新聞 電子版 シルバー産業新聞 お申込みはこちら

お知らせ

もっと見る

週間ランキング

おすすめ記事

人気のジャンル