千田透の時代を読む視点

ケアマネの受験者激減 納得のいく説明を/千田透(連載73)

ケアマネの受験者激減 納得のいく説明を/千田透(連載73)

 一部報道によると、介護支援専門員実務研修受講試験の受験者数が、昨年同様に激減する見通しになっている。2018年10月に実施された試験では、前年に比べ受験数が6割も減少したが、今年も同様の傾向が続いているのだ。

 受験者数を減らした大きな要因の一つが、受験要件の厳格化と言われている。これまでは、法定資格の保有者、相談援助業務の経験者に加え、「介護等の業務経験が5年または10年以上」など、「介護業務等従事者」も受験できていたが、前回の試験から「介護業務等従事者」は受験資格から除外され、法定資格保有者と相談業務経験者に限定されることになった。

 ただ、過去の試験結果を見ると、合格者のうち「介護業務等従事者」の割合は全体のおよそ1割に過ぎない。そこの門戸を閉ざしたところで、これほど受験者数が減少する理由にはならない。なぜこうした事態になっているのか、国はきちんと検証し、説明していく必要があるだろう。

 個人的には、ケアマネジャーという仕事の魅力が他の介護職に比べ、相対的に低くなってきているのではないかと危惧している。

 特に待遇面では、これまで処遇改善加算の対象になってこなかったことや、10月に創設が予定されている特定処遇改善加算でも、居宅介護支援が対象から外れていることで、勤続年数に応じた賃金の上昇が期待できにくい状況がある。

 一方で、地域包括ケアシステムの構築が推し進められる中で、複合課題を抱えた相談や医療と介護の連携など、ケアマネジャーに求められる役割や責任が、制度創設当時よりもはるかに重くなってきている実態がある。業務内容が介護報酬に見合っているのかも含め、検証していく必要があるだろう。

 中には受験者数が減少したことで、試験にかかる手数料を引き上げる自治体も出てきている。そのことでさらに受験者数が減るといった事態が生じているのだとすれば、由々しき問題ではないだろうか。

 質の確保という観点から受験要件を見直したのであれば、その判断を下した検討会の責任において、いま起きている事態が本当に質の確保につながっているのか、納得がいく説明が必要だ。

 ケアマネジャーはこれまでもこれからも介護保険制度の要の存在である。要介護高齢者が増えていく中で、ケアマネジャーが足りなくなることはあってはならないし、政策の変更によって、いま働いている人達や、これからケアマネジャーを志そうとする人に悪影響を与えてはいけない。

 千田透(全国生活協同組合連合会 常務理事)

(シルバー産業新聞2019年9月10日号)

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