未来のケアマネジャー

施設ケアマネの叫びとも言える相談/石山麗子(連載11)

施設ケアマネの叫びとも言える相談/石山麗子(連載11)

 介護保険部会の議論は佳境に入り、ケアマネジメント関連では、公正中立なケアマネジメントの確保、インフォーマルサービスを盛りこんだケアプランや利用者負担導入等が議論されている。ところで施設介護支援専門員(以下、「施設ケアマネ」という)の議論は?

 おそらく読者のうち施設介護支援専門員の方は大きく頷かれた方もいらっしゃるだろう。今年に入り、私のところには施設ケアマネの方からの相談が急増した。施設ケアプランの作成方法、個別性を出すアセスメントの方法など、ケアマネジメントの技術に関することはもとより、施設ケアマネの役割や存在意義に至るまで相談内容は多岐にわたる。なぜ施設ケアマネからの相談は増えたのか。

 ある施設ケアマネは「国は施設ケアマネには関心ないんですかね?」と言った。私は決してそう思わない。居宅介護支援は給付を伴う関係上どうしても財源と直結し議論の遡上にあがりやすい。実際、ケアプラン点検や地域ケア会議でのケースは居宅介護支援が大半だ。一方で施設ケアマネの方にとって、ケースの対応に困ったとき、地域ケア会議等で検討してほしいという要望もあるようだ。

 さて社会保障審議会に目を向けよう。近年、施設ケアマネに関する議論は取り上げられていない。過去の介護保険部会の資料を紐解いてみると、記録は2010年にさかのぼった。その年、日本介護支援専門員協会は、介護保険部会の場で3度にわたり、施設介護支援専門員と支援相談員等との役割と業務の規定についての整理を求める意見を出した。その年の「意見のとりまとめ」では、表1にみるように「意見があった」という記載に留まり、見直しの必要性がある、との表現には至らなかった。

 次に国で施設ケアマネが議論の遡上にあがったのは12年度「介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会」のこと、そのまとめを表2に示した。
 介護支援専門員の法定研修をみると、大きく課程や科目は見直されたが、その内容は居宅介護支援が中心だ。施設ケアマネジメントは居宅ケアマネジメントを基本とした延長線と考えられた。

 施設ケアマネの方の悩みの言葉は続いた。「相談できる相手がいない」「業務の仕方について、これでいいのか?と疑問をもつ」「周囲の職員から施設ケアマネの役割を理解してもらえない」等である。人員配置基準は100対1である。もしわからないことがあった場合、仲間の施設ケアマネがいれば、その場でちょっと聞いて解決できることも、その機会すらなく、小さな疑問は重なっていく。加えて支援相談員等との役割が曖昧で、兼務の場合にはさらに施設ケアマネの役割や存在意義について周囲から理解してもらいにくいという。実質他の業務を担っている場合も多く、施設ケアプランの作成に専念できる時間にも悩みがあるようだ。

 施設は集団生活だから意図しなければケアプランは画一的になりがちだ。最近では施設での看取りも増加している。ライフステージでいえば人生の最終コーナーの時期を過ごす利用者の方の毎日を支える仕事だ。たとえ自ら声を出せなくなっても人は幸せになりたいという欲求がある。幸せの基準は極めて個別的だ。選択には必ず価値観が伴う。そこに向き合い、声にならない声を拾いあげ、施設ケアプランにその価値を反映するのが施設ケアマネの専門性だ。個々の利用者にしっかりと向き合う必要性が高まる今、意思決定支援を適切に行う観点からも、施設ケアマネの存在意義はますます大きくなっている。今一度施設ケアマネの存在意義の重要性を見つめ、それに見合った育成環境、役割の整理、人員配置を考える必要はないだろうか。施設ケアマネの叫びともいえる相談内容は、自らの責任を全うしたいという強い責任感によるもので、この声を受け止め一緒に考えたい。
 石山麗子(国際医療福祉大学大学院 教授)

(シルバー産業新聞2019年11月10日号)

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