未来のケアマネジャー

ケアマネジャーと保険者の二人三脚/石山麗子(連載9)

ケアマネジャーと保険者の二人三脚/石山麗子(連載9)

 ケアマネジャーは自分の実践の強み・弱みを把握しているだろうか。特に弱みを知り補填し、バランスのとれた技能を身に着けることは専門職の責任の一つだ。

 なぜならその技能は利用者のためにあるからだ。そう考えると事業所内ミーティングや研修は恰好の研さんの場といえる。もし自分の強み・弱みに気づかなければ研修テーマの選択一つとっても、単に興味関心の高いテーマを優先するだろうし、他者が指摘してくれたことを、受け入れられず自分を否定されたかのように感情的に捉えてしまうかもしれない。「誰にとってもプラスの状況にならない」と正論を言っても自分のことは他人を知る以上に難しい。自ら振り返り、事業所内で確認し合うことのほか、居宅介護支援事業所の指定・指導監督権限が移譲されたいま、保険者がサポートすることもできる。まさに保険者による居宅介護支援事業所の質の向上の取組だ。今回はある保険者のケアプラン点検の取組みを紹介する。

 福岡県介護保険広域連合(以下、広域連合)は、全国最大規模の広域連合だ。ここでは2018年度から独自の点検項目・点検指標を作成し、要介護1~3の全件(約9000件)の「ケアプランチェック」を実行中だ。この新構想は広域連合が主導され、筆者は点検項目・点検指標の作成、点検者の指導等の監修を、点検者は福岡県介護支援専門員協会にお願いし、その結果を集計したものとなる。特徴は(表1)のとおりだ。
 なかには全件点検は可能なのか、書面での確認で良いのかと疑問を持たれる方もおられるだろう。なぜならケアプラン点検は厚生労働省が08年にマニュアルを作成し、手法として対面・対話形式を主としてきたからだ。筆者も対面方式はケアマネジャーも保険者職員も相互に学びを得る価値ある方法だと考えていた。だからこそ厚生労働省に勤務していた17年度には居宅介護支援事業所の指定・指導監査権限移譲に際し、ケアプラン点検支援マニュアル追補版の作成にも力を入れた。去年、広域連合からご相談を受けた『書面での全件点検』はコペルニクス的な発想で最初は少し戸惑ったが、冷静に考えてみると対面式にはない複数の利点があることに気づきすぐに賛同した(表2)
 8月20日、広域連合では居宅介護支援事業所を対象とした集団指導が行われた。介護保険事業は3年1クールなので、2年目はあまり目新しい事項は多くない。そのため法令事項を一方的に説明されても聞き手にとって魅力は感じられず、保険者から招集された集団指導に出席することが目的化しやすい。
 改正2年目に行うべき集団指導は『業務の振り返り』だ。広域連合ではケアプランチェックの集計表をケアマネジャーにフィードバックした。まさに実践結果(事実)から自らの業務を振り返る機会である。会場のあちこちから「あっ、確かにこれやってない」という声が聞こえてきた。ケアマネジャーが点検結果に納得した声である。ケアマネジャーはもともときっかけさえあれば自分で気づく力を持っている。保険者が指導という強い方法ではなく、上下関係ではない「協働」という自然な形でケアマネジャーの強み・弱みに気づくきっかけづくりを行ったのだ。集団指導の会場にはケアマネジャーと保険者がお互いを尊重し、二人三脚で善くしていこうという空気を感じた。

 強権的な指導は何ら益をもたらさない。信頼関係をベースとしたケアプランチェックに発想を転換すべきだ。この取組、構想はまだ途についたばかりで、これからが本番である。筆者自身今後の展開を楽しみにしているところだ。
 石山麗子(国際医療福祉大学大学院 教授)

(シルバー産業新聞2019年9月10日号)

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