インタビュー・座談会
日台の福祉用具・介護テクノロジー普及へ向けて
台湾の新たな長期介護政策「長照3.0」で、今年7月1日からスマート福祉用具のレンタル給付が始まる。対象は移動支援、移乗支援、入浴・排泄支援、在宅介護ベッド、安全見守りの5分野。従来の購入補助を中心とする仕組みに加え、最新機能をもつ福祉用具を、利用者の身体状況や生活課題の変化に応じて使い替えられるレンタル制度が導入される。テクノエイド協会企画部長の五島清国氏と、台湾の福祉用具制度に詳しい国立陽明交通大学ICF&支援技術研究センター長の李淑貞氏が、台湾の新制度と日台の福祉用具・介護テクノロジーの今後について意見を交わした。
五島
日本では2000年に介護保険制度が始まり、福祉用具レンタルは26年の歴史を持つ。当初は「福祉用具は購入するもの」という意識も強かったが、高齢者の身体状況は変化する。その時々の状態に応じて、必要な用具を選び直すことが重要だ。
この26年間で、日本の福祉用具産業はレンタルに適した製品づくりを進めてきた。一人でも組み立てやすい、搬入しやすい、レンタル品でありながら調整機能を備えるといった工夫だ。台湾の展示会を見ても、そうした視点を持つ製品が増えている。日本にはない発想の製品もあり、台湾でレンタル制度が本格化することに大きな期待を持っている。
李
台湾ではこれまで、福祉用具は購入を中心に考えられてきた。しかし高齢者や障がい者の状態は変わる。必要な時に必要な用具を使い、合わなくなれば交換できる仕組みが求められる。長照3.0でスマート福祉用具のレンタルが制度化されることは、台湾の福祉用具サービスにとって大きな転換点だ。
台湾では2023年ごろから、展示会や表彰制度を通じて、レンタルに適した製品の考え方を業界に広げてきた。五島氏にも台湾のメーカーや関係者に対し、レンタル製品の評価方法や審査の視点を説明してもらった。当時はまだ製品開発も少なかったが、この数年で、レンタルが福祉用具ビジネスとして成り立つという認識が広がってきた。
五島
レンタルは単に「売り切りではない」というだけではない。継続して利用する仕組みである以上、フィッティングや調整、必要に応じた返却・交換が欠かせない。つまり、福祉用具そのものだけでなく、利用者の生活課題を把握し、適切に用具を合わせるサービスが重要になる。
日本にはケアマネジメントの仕組みがある。福祉用具を使うこと自体が目的ではなく、高齢者や家族が抱える課題を解決するために用具を活用する。台湾でも、スマートテクノロジーが現場の課題解決に結び付くサービスとして提供されれば、日本以上に優れた仕組みが実現する可能性がある。
李
台湾でも在宅ケアを重視している。今後は、在宅で使うスマート福祉用具と医療との連携が重要になる。医療から在宅へ移行する際、必要な情報を介護現場へつなぐことができれば、利用者の生活をより安定させることができる。
そのためには、政府内の横の連携も必要だ。医療、介護、福祉用具、テクノロジー産業が別々に動くのではなく、利用者の生活を中心に結び付ける必要がある。台湾の政策は、制度が完全に整う前にまず実行し、実践しながら改善していく面がある。今回のレンタル制度も、始めてから見えてくる課題を修正しながら育てていくことになる。
五島
そこは非常に興味深い。日本でも介護保険開始前には、レンタルへの不安や反対があった。しかし実際に積み上げていく中で、高齢者の状態変化に合わせて用具を選び直せることの価値が理解されていった。売り切りであれば一度渡して終わりだが、レンタルでは継続的な関わりが生まれる。そこに福祉用具サービスの意味がある。
李
台湾の流通側も、制度設計によっては大きく反対しないと考えている。単に販売機会が失われる制度であれば反発が出るが、サービスとして正当に収益が生まれる仕組みになれば、流通事業者も受け入れやすい。購入からレンタルへ移ることは、業界にとってもサービス化への転換だ。
五島
日台の連携にも大きな可能性がある。介護テクノロジーの進歩は非常に速い。どこまでを公的な介護サービスとして位置付け、どこからを本人の選択や自費とするのか。各国が同じ課題に直面している。近い国同士で、製品開発や評価、課題の共有を進めることには大きな意味がある。
李
台湾はICTや精密工業、製造業に強みがある。日本の福祉用具の経験や現場の知見と組み合わせることで、共同開発の可能性は広がる。特に健康増進・予防の領域と、介護の領域をつなぐ製品開発に期待している。
五島
今年のATLifeで印象的だったのは、障がいのある人や高齢者自身が会場に来て、製品を探し、実際に試していたこと。家族と一緒にメーカーのブースで話し、自分に合うものを選ぼうとしていた。これは非常に重要だ。
福祉用具や介護テクノロジーは、専門職だけが選ぶものではない。利用者本人が自分の身体や生活を理解し、予防やリハビリ、社会参加に向けて主体的に選ぶ。そのような流れが台湾で広がっていると感じた。
李
利用者が自ら選び、試すことは、今後の福祉用具制度にとって欠かせない。身体機能や生活課題を把握しながら、自分に必要な支援を選べる環境を整えることが重要だ。長照3.0のスマート福祉用具レンタルは、そのための一歩となる。
台湾は制度を動かしながら改善していく。日本の経験を学びつつ、台湾のICTや製造業の力を生かし、利用者の生活を支えるレンタル制度を育てていきたい。
五島
福祉用具は、用具そのものではなく生活を支える手段だ。台湾の新制度が、利用者の状態変化に応じて適切な用具を届け、在宅生活を支える仕組みとして発展することを期待している。日台で経験を共有しながら、よりよい介護テクノロジーの活用を進めていきたい。
日本では2000年に介護保険制度が始まり、福祉用具レンタルは26年の歴史を持つ。当初は「福祉用具は購入するもの」という意識も強かったが、高齢者の身体状況は変化する。その時々の状態に応じて、必要な用具を選び直すことが重要だ。
この26年間で、日本の福祉用具産業はレンタルに適した製品づくりを進めてきた。一人でも組み立てやすい、搬入しやすい、レンタル品でありながら調整機能を備えるといった工夫だ。台湾の展示会を見ても、そうした視点を持つ製品が増えている。日本にはない発想の製品もあり、台湾でレンタル制度が本格化することに大きな期待を持っている。
李
台湾ではこれまで、福祉用具は購入を中心に考えられてきた。しかし高齢者や障がい者の状態は変わる。必要な時に必要な用具を使い、合わなくなれば交換できる仕組みが求められる。長照3.0でスマート福祉用具のレンタルが制度化されることは、台湾の福祉用具サービスにとって大きな転換点だ。
台湾では2023年ごろから、展示会や表彰制度を通じて、レンタルに適した製品の考え方を業界に広げてきた。五島氏にも台湾のメーカーや関係者に対し、レンタル製品の評価方法や審査の視点を説明してもらった。当時はまだ製品開発も少なかったが、この数年で、レンタルが福祉用具ビジネスとして成り立つという認識が広がってきた。
五島
レンタルは単に「売り切りではない」というだけではない。継続して利用する仕組みである以上、フィッティングや調整、必要に応じた返却・交換が欠かせない。つまり、福祉用具そのものだけでなく、利用者の生活課題を把握し、適切に用具を合わせるサービスが重要になる。
日本にはケアマネジメントの仕組みがある。福祉用具を使うこと自体が目的ではなく、高齢者や家族が抱える課題を解決するために用具を活用する。台湾でも、スマートテクノロジーが現場の課題解決に結び付くサービスとして提供されれば、日本以上に優れた仕組みが実現する可能性がある。
李
台湾でも在宅ケアを重視している。今後は、在宅で使うスマート福祉用具と医療との連携が重要になる。医療から在宅へ移行する際、必要な情報を介護現場へつなぐことができれば、利用者の生活をより安定させることができる。
そのためには、政府内の横の連携も必要だ。医療、介護、福祉用具、テクノロジー産業が別々に動くのではなく、利用者の生活を中心に結び付ける必要がある。台湾の政策は、制度が完全に整う前にまず実行し、実践しながら改善していく面がある。今回のレンタル制度も、始めてから見えてくる課題を修正しながら育てていくことになる。
五島
そこは非常に興味深い。日本でも介護保険開始前には、レンタルへの不安や反対があった。しかし実際に積み上げていく中で、高齢者の状態変化に合わせて用具を選び直せることの価値が理解されていった。売り切りであれば一度渡して終わりだが、レンタルでは継続的な関わりが生まれる。そこに福祉用具サービスの意味がある。
李
台湾の流通側も、制度設計によっては大きく反対しないと考えている。単に販売機会が失われる制度であれば反発が出るが、サービスとして正当に収益が生まれる仕組みになれば、流通事業者も受け入れやすい。購入からレンタルへ移ることは、業界にとってもサービス化への転換だ。
五島
日台の連携にも大きな可能性がある。介護テクノロジーの進歩は非常に速い。どこまでを公的な介護サービスとして位置付け、どこからを本人の選択や自費とするのか。各国が同じ課題に直面している。近い国同士で、製品開発や評価、課題の共有を進めることには大きな意味がある。
李
台湾はICTや精密工業、製造業に強みがある。日本の福祉用具の経験や現場の知見と組み合わせることで、共同開発の可能性は広がる。特に健康増進・予防の領域と、介護の領域をつなぐ製品開発に期待している。
五島
今年のATLifeで印象的だったのは、障がいのある人や高齢者自身が会場に来て、製品を探し、実際に試していたこと。家族と一緒にメーカーのブースで話し、自分に合うものを選ぼうとしていた。これは非常に重要だ。
福祉用具や介護テクノロジーは、専門職だけが選ぶものではない。利用者本人が自分の身体や生活を理解し、予防やリハビリ、社会参加に向けて主体的に選ぶ。そのような流れが台湾で広がっていると感じた。
李
利用者が自ら選び、試すことは、今後の福祉用具制度にとって欠かせない。身体機能や生活課題を把握しながら、自分に必要な支援を選べる環境を整えることが重要だ。長照3.0のスマート福祉用具レンタルは、そのための一歩となる。
台湾は制度を動かしながら改善していく。日本の経験を学びつつ、台湾のICTや製造業の力を生かし、利用者の生活を支えるレンタル制度を育てていきたい。
五島
福祉用具は、用具そのものではなく生活を支える手段だ。台湾の新制度が、利用者の状態変化に応じて適切な用具を届け、在宅生活を支える仕組みとして発展することを期待している。日台で経験を共有しながら、よりよい介護テクノロジーの活用を進めていきたい。
(シルバー産業新聞2026年6月10日号)


