ヒヤリハット事例から考える安心・安全な福祉用具利用
ヒヤリハット事例から考える 安心・安全な福祉用具利用⑩
福祉用具に関する事故やヒヤリハットを防ぐには、適切なアセスメントと選定・調整、注意点などのわかりやすい説明、そして継続的なモニタリングが重要です。専門職には、事故やヒヤリハットを予見・回避し、安全な利用を推進する役割が求められます。本連載では、テクノエイド協会の福祉用具「事故・ヒヤリハット」情報の事例をもとに、筆者の視点から事故やヒヤリハットを回避するポイントを解説します。
勾配8分の1を「現実的な目安」に
介護保険で給付されるスロープは、主に車いすや歩行器といった車輪付きの福祉用具の移動を助ける段差解消用具です。
スロープの勾配については、建築基準法で「8分の1を超えないこと」と定められているほか、バリアフリー法に基づく建築物移動等円滑化基準(最低限の基準)では12分の1以下、さらに望ましいとされる建築物移動等円滑化誘導基準では屋外で15分の1以下が推奨されています。
在宅現場において、20㎝の段差に対し15分の1勾配(長さ3m)のスロープを設置しようとすると、スペースの不足や製品重量による取り扱いの難しさが障壁になります。
実際の選定は、住環境や介助者の状況に応じて行わざるを得ないのが実情ですが、安全性を担保するには、勾配は最大でも8分の1程度を目安に検討するとよいでしょう。
スロープの勾配については、建築基準法で「8分の1を超えないこと」と定められているほか、バリアフリー法に基づく建築物移動等円滑化基準(最低限の基準)では12分の1以下、さらに望ましいとされる建築物移動等円滑化誘導基準では屋外で15分の1以下が推奨されています。
在宅現場において、20㎝の段差に対し15分の1勾配(長さ3m)のスロープを設置しようとすると、スペースの不足や製品重量による取り扱いの難しさが障壁になります。
実際の選定は、住環境や介助者の状況に応じて行わざるを得ないのが実情ですが、安全性を担保するには、勾配は最大でも8分の1程度を目安に検討するとよいでしょう。
フットサポートの位置が低すぎたため、スロープにぶつかってしまう(※テクノエイド協会:福祉用具「事故・ヒヤリハット」情報(ケース222))
スロープ衝突の盲点
イラストのスロープはかなり急勾配に見受けられます。男性介助者の体力を考慮した結果かもしれませんが、フットサポートの位置を路面から5㎝未満に設定すると、急な傾斜では接触しやすくなるため注意が必要です。
また、5インチの小径キャスターではスロープ端部のわずかな段差を乗り越えられない場合もあります。一方で、6インチ超のキャスターへの変更は、互いにぶつからないよう、フットサポートが前方へせり出す要因となります。そのせいで膝の角度が90度を超えて広がると、足がフットサポートから脱落しやすくなるだけでなく、座面高の上昇により深く座るのが困難になってしまいます。
その結果、頻繁な座り直しの介助が必要となるほか、いわゆる「仙骨座り(ずっこけ座り)」を誘発するケースもあります。これは褥瘡リスクを高めるだけでなく、内臓圧迫に伴う呼吸困難や浮腫(むくみ)、さらには円背姿勢による誤嚥など、深刻な二次障害を招く恐れもあります。
選定の基本は、利用者の身体状況に適した座位姿勢を優先することにあります。走行上の課題(段差の乗り越え)は、キャスター径の変更を検討する前に、まずは介助技術の習得や環境調整で解決できないかを探るべきです。5インチキャスターを使用する場合は、ティッピングレバーを操作して前輪をわずかに浮かせ、スロープを乗り越える介助技術を丁寧に指導しましょう。その際、助言に留めず、実際の操作確認まで行うことが重要です。
また、集合住宅などでスロープ以外の手段が困難な場合は、勾配の再検討に加え、キャスター径の確認や昇降操作の習熟を徹底する必要があります。一方、戸建て住宅であれば、福祉用具の貸与だけでなく、段差解消機の導入や住宅改修による恒久的なスロープ設置も視野に入れ、安全な昇降環境を整える包括的な支援が求められます。
(シルバー産業新聞2026年3月10日号)
また、5インチの小径キャスターではスロープ端部のわずかな段差を乗り越えられない場合もあります。一方で、6インチ超のキャスターへの変更は、互いにぶつからないよう、フットサポートが前方へせり出す要因となります。そのせいで膝の角度が90度を超えて広がると、足がフットサポートから脱落しやすくなるだけでなく、座面高の上昇により深く座るのが困難になってしまいます。
その結果、頻繁な座り直しの介助が必要となるほか、いわゆる「仙骨座り(ずっこけ座り)」を誘発するケースもあります。これは褥瘡リスクを高めるだけでなく、内臓圧迫に伴う呼吸困難や浮腫(むくみ)、さらには円背姿勢による誤嚥など、深刻な二次障害を招く恐れもあります。
選定の基本は、利用者の身体状況に適した座位姿勢を優先することにあります。走行上の課題(段差の乗り越え)は、キャスター径の変更を検討する前に、まずは介助技術の習得や環境調整で解決できないかを探るべきです。5インチキャスターを使用する場合は、ティッピングレバーを操作して前輪をわずかに浮かせ、スロープを乗り越える介助技術を丁寧に指導しましょう。その際、助言に留めず、実際の操作確認まで行うことが重要です。
また、集合住宅などでスロープ以外の手段が困難な場合は、勾配の再検討に加え、キャスター径の確認や昇降操作の習熟を徹底する必要があります。一方、戸建て住宅であれば、福祉用具の貸与だけでなく、段差解消機の導入や住宅改修による恒久的なスロープ設置も視野に入れ、安全な昇降環境を整える包括的な支援が求められます。
(シルバー産業新聞2026年3月10日号)


