I C Fからの福祉用具アプローチ

手動車いす編/加島守(連載3)

手動車いす編/加島守(連載3)

 福祉用具に関わる専門職には、環境が変われば参加や活動を促し、そして福祉用具の活用で生活が変わる可能性をしっかりと利用者・家族へ示し、提案することが求められています。本連載では「ICF(国際生活機能分類)」の考え方をモデルに、活動・参加、生活を変える福祉用具支援を解説します。今回は手動車いすの導入事例について、ICFの考え方から読み解いてみましょう。

長時間の外出を支援する車いす

 自宅で奥さんと二人暮らしのBさん(70歳・男性)は進行性核上性まひにより、上下肢に可動域制限があり、また肩やひざ、股関節が拘縮していて、日常生活全般に介助が必要な状態です。屋内移動はネックサポートを付けたモジュラー型車いすを使っており、奥さんなどの介助で行っています。

 日中は、リフトを活用してできる限り、ベッドから離れて過ごすようにしています。リビングのリクライニング機能が付いたいすが、Bさんお気に入りの場所で、クラシック音楽を鑑賞するのが日課です。もともと社交的なBさんは、たまに昔の職場の友人が訪問してくれると、とても喜んで昔話に花を咲かせています。

 外出はあまりしておらず、ほとんど自宅の中で過ごしています。奥さんが、「以前みたいにクラシックのコンサートに行きたいね」と呼びかけても、Bさんは「もう難しいかな。仕方ないよね」と自信がない様子です。Bさんの生活機能や環境因子から、より外出しやすくする方法を考えてみると、①玄関の段差が車いすでの外出を困難にしている(環境因子)②自分で座り直しはできないが、リクライニング機能付きのいすで、長時間離床ができている(活動)――などが今回の支援のポイントといえそうです。

 まず段差解消機を庭に設置し、奥さんの介助でも車いすのまま外出しやすい環境を整えました。その結果、週に1、2回は奥さんと散歩ができるようになりました。こうした変化がBさんの意欲や自信に繋がり、改めてコンサートに行きたいかの意思を確認すると、「行きたい」と答えてくれるようになりました。

 そこで、車いすをティルト・リクライニング式の手動車いすに変更しました。介助者が定期的に姿勢を変えることで、Bさんはより長い時間、外出できるようになり、ついに念願のコンサートへ奥さんと行くことができました。

 この事例では、音楽好きのBさんの「コンサートに行って楽しみたい」というニーズを実現するために、何が生かせて、何が障がいになっているかを、ICFの体系的な視点から検討したケースです。利用者の状態、活動、参加、そして環境が、それぞれ相互に作用していることを常に意識し、よりよい支援に繋げていただければと思います。
 加島 守(高齢者生活福祉研究所・所長/理学療法士)

(シルバー産業新聞2019年8月10日号) 

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