連載《プリズム》

健康観の転換

健康観の転換

 運動と栄養摂取が介護予防に欠かせないことが明白になってきた。運動効果は、スポーツ庁の委託調査で2年前に三菱総研が手がけた内外の文献調査では、筋力・筋量増加、バランス能力や歩行速度・移動能力の維持改善などに役立つとする文献が多かった。運動には、認知機能の維持や向上の効果もあるとされた。(プリズム2019年11月)

 高齢期の栄養摂取の必要性は、国立健康・栄養研究所などが長年研究を続けている。本紙の「フードケア」面でも、福岡クリニックの中村育子さんの連載など、毎号情報提供を行っている。近年の高齢者の健康度が向上してきたのは、以前の高齢者に比べて、カロリーやタンパク質を摂取し、積極的に歩行する人も増えてきたからだろう。

 姉妹紙「ねんりんピック新聞2019in和歌山」で、和歌山県立医科大学リハビリテーション医学講座の田島文博さんは、「じっとしていたら、どんどん筋肉がなくなって、骨がもろくなり、精神機能が低下する。特に高齢者は病院に入院して、じっとしていたら、1日、2日でも認知症状が出たり、動けなくなることがある」と警鐘を鳴らす。歩行ならば途中で少し走るなどして、運動強度を高めることがポイントと指摘。「『ヒィー』という位の強さがあってもよい」と、田島さんは付け加えた。

 介護保険スタート後、2006年の介護予防導入の論議の中で、筋トレの重要性が主張され、筋トレ機器導入の助成も検討された。病気や健康といえば、臓器ばかりが重視されがちな私たちの健康感も少しずつ変わり始めていた。筋トレ機器助成は実現しなかったが、前回の18年改正で具体化された、健康寿命増進に向けたエビデンス取得に向けた制度見直しの流れは、この頃に芽を吹いたといえる。ICF(国際生活機能分類)の日本語版も国内に浸透し始め、制度の重要性とともに、健康観に「活動」と「参加」の視点が加わる文化的転換点だった。

(シルバー産業新聞2019年11月10日号)

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