I C Fからの福祉用具アプローチ

居室用手すり編/加島守(連載5)

居室用手すり編/加島守(連載5)

 福祉用具に関わる専門職には、環境が変われば参加や活動を促し、そして福祉用具の活用で生活が変わる可能性をしっかりと利用者・家族へ示し、提案することが求められています。本連載では「ICF(国際生活機能分類)」の考え方をモデルに、活動・参加、生活を変える福祉用具支援を解説します。今回は居室用手すりの導入事例について、ICFの考え方から読み解いてみましょう。

据置手すりで立ち上がり、歩き出しを補助

 自宅で夫と2人で暮らすDさん(70歳女性)は2カ月前に左大腿骨頸部骨折で入院。手術を受けて無事退院しました。術後間もないため、左下肢筋力は低下していますが、入院中にT字杖を使って歩行できるまでに回復しました。Dさんのニーズを確認したところ、「特に夜間のトイレへの移動をもっと楽にしたい」ということでしたので、起き上がり・立ち上がりと歩き出しの安定性を高めるため、据置型の居室用手すりを導入することを決めました。

 導入した手すりは連結できるタイプの据置型手すりで、立ち上がりの補助だけでなく、バータイプの手すりを組み合わせることで移動動作も助けてくれます。移動がスムーズにできるようになり、「特に夜にトイレへ行くのがずいぶんと楽になりました」とDさんも満足げでした。

 身の回りの困りごとが解決したためか、Dさんからは「入院してから夫に任せっぱなしになっている家事も自分でしたい」と新たな相談がありました。そこで、近所のスーパーへ買い物に行くことを目標に立て、玄関用手すりと歩行車の導入を提案しました。玄関用手すりによって、玄関の段差昇降も介助なしででき、また買い物しやすいように歩行車はバスケット付きのものを選びました。それがまたDさんの自信につながったのか、料理などの家の中の家事も積極的に行うようになりました。

 この事例で注目すべきポイントは、ニーズが解決されると、また新しいニーズが生まれやすいということです。Dさんの場合、「トイレに行くのが不安」という生活に大きな影響を及ぼす困りごとを抱えていました。それが解決したことで、「買い物に行きたい、以前のように家事をしたい」といった希望を持つ「余裕」が生まれたのでしょう。このように一つのニーズが解決した時こそ、新しい支援が必要なタイミングです。ICFの体系的な視点で、環境要因や活動・参加の変化を改めて整理し、次の支援を提案していきましょう。
 加島 守(高齢者生活福祉研究所・所長/理学療法士)

(シルバー産業新聞2019年10月10日号) 

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