I C Fからの福祉用具アプローチ

屋外用歩行器編/加島守(連載8)

屋外用歩行器編/加島守(連載8)

 福祉用具に関わる専門職には、環境が変われば参加や活動を促し、そして福祉用具の活用で生活が変わる可能性をしっかりと利用者・家族へ示し、提案することが求められています。本連載では「ICF(国際生活機能分類)」の考え方をモデルに、活動・参加、生活を変える福祉用具支援を解説します。今回は屋外用歩行器の導入事例について、ICFの考え方から読み解いてみましょう。

 自宅で夫と2人で暮らすDさん(65歳女性・要介護1)は40歳ごろから、歩行時などに右股関のも難しいので、イスとテーブルを使って調理や洗濯物をたたんだりしています。Dさんは「家事は私の仕事」という気持ちがとても強く、痛みが増してからは、買い物を夫に任せていることをとても気にしている様子です。

家での生活を安定させると、 外出意欲が高まる

 まずは家の中での移動がしやすくなるように、手すりを導入することにしました。手すりに体重を預けながら歩くことでDさんも「痛みがだいぶましになった」と喜んでいました。家の中での生活が安定してくると、Dさんの気持ちも外へ向き始めました。「ちょっとした買い物くらいは自分で行けるようになりたい」と口にするようになってきました。

買い物に最適な屋外用歩行器を選定

 そこでDさんの外出ニーズを叶えるため、ケアマネジャーの方とも相談し、屋外用歩行車をレンタルすることが決まりました。痛みが出たり、疲れたりした時には駐車して座ることができる座面付きの機種を選びました。バッグが付いているので、買い物にもピッタリです。Dさん宅の玄関には20cmの上がり框があったので、玄関用手すりもあわせて導入しました。一人で近くのコンビニに買い物へ行くことができるようになり、Dさんはとても満足げです。さらに、少し離れた大型スーパーにも行ってみたいと意気込んでいるようです。

 Dさんのケースでは股関節の痛みにより、屋内移動や、本人が役割と強く意識している家事などに支障をきたしていました。まずは家の中の課題が解決されれば、Dさんのように気持ちが家の外へと向くケースは少なくありません。

 一足飛びに外出支援ではなく、本人の気持ちの変化とともに、生活範囲を拡大していくアプローチも大切です。そうした支援を実践するためにも、ICFの体系的視点で利用者の状況の変化を適宜把握するようにしましょう。
 加島 守(高齢者生活福祉研究所・所長/理学療法士)

(シルバー産業新聞2020年1月10日号) 

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