ニュース

福祉用具事業者 発電機など付属品備蓄し早期対応

福祉用具事業者 発電機など付属品備蓄し早期対応

 9月6日午前3時7分に北海道胆振(いぶり)地方中東部で最大震度7(マグニチュード6.7)の地震が発生し、9月27日時点で死者41人、重軽傷者689人の被害をもたらした。道内全ての火力発電所が停止し、一時は道内全戸約295万戸が停電。ライフラインが途絶える中、被災地の介護事業所は利用者の安否確認や電動福祉用具の対応などに奔走した。各社の対応を取材した。

 北海道全域で福祉用具貸与事業所を展開するマルベリー(高橋和則社長)のさわやかセンター苫小牧では、被害の大きかった安平町、厚真町、むかわ町、平取町、日高町の5町に利用者が250人ほどいる。

 在宅事業部長の山上勝宏さんは「安否確認はスムーズにできた。土砂で交通が遮断されている場所もあり、電話も混み合っていたため、すぐには安否の確認がとれない人も一部でいたが、地域社協などと情報を共有しながらすすめた」と当時を振り返る。地震発生直後は、事務員は自宅待機、福祉用具専門相談員は社内で待機し、緊急対応に備えた。

 停電時の対応について山上さんは「エアマットレスのエアホースを折り曲げて空気が抜けるのを防ぐなど、メーカー研修で対応法を学んでいたため、大きな混乱なく対応できた」と話す。電動ベッドが傾いたまま止まってしまったとの問合せに対して、現場の専門相談員の機転で営業車から電源を引っ張り(シガーソケット用コンセントに延長コードをつないだ)、フラットな状態に戻すことができた。

 山上さんは「これまでの全国の災害を受け、被災マニュアルは作成していたが、実際に対応をして被災慣れをしていないことを痛感した。緊急時の電源確保など、今回の教訓を今後に生かしたい」と話した。

 このほか、社協や行政から物資支援の要請もあり、さわやかセンター苫小牧を窓口に対応。要請が多かったのは、おむつやポータブルトイレなどの排泄関連用具だった。
 福祉用具貸与事業やクリーニング事業を展開するエンパイアー(山下譲社長)では、停電により固定電話が使用できず、携帯電話を使用して安否確認・情報共有を行ったという。利用者宅の個別訪問はせず、電動ベッドやエアマットレスの利用者をリストアップし、「ベッドを水平にしてほしい」などの要望があればすぐに対応できる体制を整えた。

 ホームヘルスケア事業部の伊藤祐司さんは「停電により信号機がとまるなど、車の使用は危険だと判断して社員に出勤不要と指示していたが、利用者からの依頼対応のため動いていたというのが実態だ」と説明する。利用者からの依頼は地震発生直後の午前3時ごろにもあったという。

 苫小牧営業所では利用者宅の電力復旧の方が早く、電動福祉用具の対応依頼は10件未満に留まった。成田聡さんは「利用者情報を紙ベースで保存していたため、停電中でもすぐに電動ベッド対象者をリストアップでき、体制を整えられた」と説明する。

 「停電時に活用できる特殊寝台用の手動発電装置などを用意していたため、依頼後すぐに対応できたが、今後は所持個数を増やしたほうが良いと考えている」(成田さん)

停電時の電動ベッド・リフトの対応方法

 今回の停電により貸与事業所へ依頼が多かった用具の1つが特殊寝台だ。停電が発生した場合の対応としては各社共通で①電気復旧後の故障を防ぐため、電源プラグを抜く②取扱説明書に従い、手動で水平にする③電気復旧後は、取扱説明書に従い、外した部品等を戻しベッドを元の状態にして、電源プラグをコンセントに差し込む――流れ。この他、企業独自の停電時対応として、予備バッテリーの使用や専用の手回し発電機などもある。
 パラマウントベッド(東京都江東区、木村恭介社長)は電動ベッド専用手回し発電機「スマートハンドル」を販売している。適合するベッドと組み合わせることで、ベッドの背上げ・下げや、膝上げ・下げ、高さ調節が手動でできる。
 シーホネンス(大阪市、増本龍樹社長)では緊急時の昇降装置「セーフティハンドスイッチ」を取り揃えている。使用方法は9V角型アルカリ乾電池をスイッチ本体に付け、ジョイントケーブルをベッド本体と接続するだけ。操作スイッチで背ボトムや膝ボトム、高さの操作が数回行える。また簡易ライトとしても使用でき、停電時でも手元を照らしながら作業が出来る。同社製の全ての電動ベッドに対応。

 手動や予備電力で動かす対応のほか、プラッツ(福岡県大野城市、城雅宏社長)の1+1モーターのベッドは市販の9V電池を利用して動かすことができる。9V角型乾電池をベッドに取り付けることで1回のみ背か脚を下げることができる。同社担当者は「手動で多くのベッドの対応をすると、現場職員の腰などへの負担が大きくなってしまう。そこで1回限りとなるが、負担が少なく対応できる方法を用意した」と説明する。

 移動用リフトは大きく固定式、床走行式、天井走行式に分かれる。ベッドや浴槽脇など設置する固定式は、多くが直電源を使用しているため、停電になると基本的に使用ができなくなる。

 仮に、利用者が吊り具に乗った状態で停電が発生した場合、手動でゆっくり下降できる安全機能は各社備えている。また、モリトーの「つるべー」シリーズは入浴中の停電も想定し、手動での上昇操作も可能。①電源プラグを抜く②ツマミネジを取り外す③付属のステンレス棒を貫通穴に差し込む④上から見て右回転で下降、左回転で上昇――の手順で行う。

 一方、本体が移動する床走行式、天井走行式は多くがバッテリー(充電)型。満充電や予備バッテリーの管理を日常的に行うことで、停電時も引き続き使用できる。 万が一、使用中にバッテリーが切れた場合、天井走行式は固定式同様、手動での下降が可能。床走式は手動でできないタイプが多いので、できるだけ利用者が同じ高さで座ることができる移乗先(ベッドなど)へ下ろすといった対処となる。

(シルバー産業新聞2018年10月10日号)

関連する記事

2024年度改定速報バナー
web展示会 こちらで好評開催中! シルバー産業新聞 電子版 シルバー産業新聞 お申込みはこちら

お知らせ

もっと見る

週間ランキング

おすすめ記事

人気のジャンル