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福祉用具 平均価格説明・上限制開始

福祉用具 平均価格説明・上限制開始

 2018年10月から福祉用具貸与での全国平均価格の説明と貸与価格の上限制が始まった。貸与価格を「見える化」することで、利用者が適切な価格で福祉用具を借りられるようにする仕組みだが、将来的に事業者が適正な利益を確保できなくなるおそれや、サービスの質の低下を招くことが懸念されている。制度のポイントや福祉用具事業者の対応などをまとめた。

実態踏まえた適切な制度運用を

 18年度介護保険制度改正により、福祉用具貸与では4月からの複数用具の提案に加え、10月以降、①福祉用具専門相談員が、貸与しようとする商品の特徴や貸与価格に加え、当該商品の全国平均価格を利用者に説明する②商品ごとの貸与価格の上限を超えて貸与を行った場合、福祉用具貸与費が算定されない――の2つのルールが新たに追加された。

 商品ごとの全国平均価格や上限価格は、7月13日時点で厚生労働省のホームページ上で公表されており、月平均100件以上の貸与実績をもつ2807商品が新制度の対象となる。さらに来年度以降、「概ね1年に1度」の頻度で全国平均価格と上限価格の見直しが行われるほか、新商品についても19年度以降、3カ月に1度の頻度で公表リストに追加されていくことが決まっている。厚労省の説明では、一度公表リストに掲載された商品は、たとえ100件の実績を下回っても全国平均価格の公表と上限価格の適用を受けるとしている。

サービスの質の低下を懸念

 上限価格は、商品ごとに「全国平均貸与価格+1標準偏差」で計算され、正規分布の場合、高い値段をつけた上位約16%が保険給付の対象から外れる仕組みになっている。これが「概ね1年に1度」見直されることで、基本的には毎年、上限価格と平均価格が下がっていくことが予想される。

 今回の制度の狙いは、貸与価格の「見える化」を通じて、利用者の適切な選択と事業者間の競争を加速させることだが、市場原理でなく、制度として半ば強制的に価格を押し下げていくため、事業者が将来的に適正な利益を確保できなくなるおそれや、教育やメンテナンスにかかるコストの削減などにより、サービスの質の低下を招くことが懸念されている。

 国の審議報告でも、利用者や事業者に与える影響が大きいことを考慮して、「施行後の実態も踏まえつつ、実施していく」との一文が付け加えられるなど、慎重に制度の運用を進めていくことになっている。

 具体的には10月以降、「介護報酬改定検証・研究委員会」を通じて、制度施行前後の▽貸与価格の実態▽事業者の経営状況▽利用者への影響――などを把握し、「実態をよく見た上で、適切に対応していく」(厚労省担当課)としている。

 また、事業者団体である日本福祉用具供給協会(小野木孝二理事長)も、独自に全国510社の企業を対象に緊急調査を実施。調査では、上限を超えた商品の数や値下げする場合の基本方針、価格の見直しの方法、売上高の減少など、経営への影響を明らかにし、過度な見直しとならないよう、事業者団体として必要な要望を国に届けていく考えだ。

 そもそもは、同一製品でありながら著しく高額な貸与価格でレンタルされている、いわゆる「外れ値」を締め出す目的で議論が始まった今回の見直し。過度な給付の抑制や安易な値下げによって、適正な競争が阻害され、業界全体のサービスの質が低下してしまわぬよう、行政・現場が適切に制度を運用していくことが求められる。

福祉用具貸与事業者の対応

ヤマシタコーポレーション



1001yama.jpg 全国展開するヤマシタコーポレーション(東京本部:東京都港区、山下和洋社長)は、10月からの上限価格の施行を機に、営業所ごとに0~5%の価格引下げを実施。売上減は、物流拠点の統合や業務改善によるコストダウンによってカバーする。これまで別々だった顧客管理システム、請求システム、在庫管理システムの3本を1つにまとめるなど、生産性向上の取り組むことに加え、「研修を強化してサービス向上に努め、利用者増を図っていく」(前橋伸治本部長)としている。



シルバーホクソン(埼玉県川口市)



1001hoku.jpg 埼玉県で貸与事業を展開するシルバーホクソン(梅田成道社長)では、上限価格を超える商品がおよそ半数の利用者に存在。多くの利用者で価格の変更の手続きが生じるため、「早めの対応を心掛けた」と梅田社長。



 同社では7月の価格公表を受け、すぐに値段を再設定。カタログも7月下旬から8月上旬にかけて変更。利用者との手続きは、7月末時点で文書と返信用の封筒を郵送するとともに、ケアマネジャーにも案内を送付。



 上限価格付近に値段を引き下げたことで2%弱の売上減となった。



ひまわり(兵庫県神戸市)



1001hima.jpg 神戸市に本拠を置くひまわり(槙山良夫社長)では、約3,000人の利用者に上限価格より高い価格で貸出す商品が存在。「上限付近まで値下げしたことで、全体で約2%の売上減となった」(山田隆司副社長)。



 同社の場合、契約書本体には貸与価格は記載しておらず、別紙に明記しているため、契約書そのものを変更する手続きはとらなかった。利用者とケアマネジャーに「価格改定(ご利用料金の引き下げ)の詳細について」と題した通知書を郵送する形で、価格改定をおこなった。



フランスベッド(東京都新宿区)



1001fb.jpg 全国展開するフランスベッド(池田茂社長)では、「貸与価格が上限価格を超えた商品はごく一部で、事業全体への影響は軽微」(門田和己副社長)と分析。



 上限価格と同時に始まった全国平均価格の説明については、「平均価格より自社価格が高い場合に、その根拠をどう示すかが課題」としつつも、「自社の提案力やメンテナンスといった、サービスの質を理解してもらう機会と捉えて、利用者に丁寧に説明していく」と、シェアを拡大するチャンスと捉えている。



サンメディカル(岩手県盛岡市)



1001sun.jpg 東北地方で貸与事業を展開するサンメディカル(大村喜代子社長)は、今回の上限価格の適用によって2.5%の減収となった。



 新商品を積極的に取り揃えるほか、新たに介護保険外の事業にも取り組むなどして、マイナス分をカバーしていく方針。



 今後も上限価格が1年に1度の頻度で見直されることについて、「真面目に努力している業者にとっては、給付抑制にしかならない」と福田裕子常務。



 高額で貸し出される「外れ値」を排除するのであれば、上限を1度適用すれば済むだけの話とし、「毎年見直す必要性はない」と訴える。


(シルバー産業新聞2018年10月10日号)

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