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インセンティブ導入 評価軸「要介護度」には慎重

インセンティブ導入 評価軸「要介護度」には慎重

 18年改正論議を行う介護保険部会は8月23日、「介護サービスの質の評価・自立支援に向けた事業者へのインセンティブ」をテーマに掲げた。

「自立とは何か」から論興す

 厚労省は、「自立」について、可能な限りその居宅において、尊厳を保持しその能力に応じた日常生活を営むことができるように、要介護状態の軽減や悪化の防止をめざして、保健・医療と介護のサービスを行うものと説明した。WHO(世界保健機関)のICF(国際生活機能分類)では、心身機能・身体構造と活動・参加の両面から自立に向けたリハビリテーションが求められているとした。

 介護サービスの質の評価については、人員体制などのサービス構造での評価、訓練の実施などサービスのプロセス評価、社会参加へ移行できた場合の加算などアウトカム評価があると説明。より効果的・効率的な介護サービスの提供を促すには、利用者の状態改善などアウトカム評価が適しているとした。

 しかし、多様なサービスを使う利用者にとって何が効果的であったかの判断が難しいことや、事業者が、改善が見込まれる高齢者を選ぶ、クリームスキミング(牛乳から最もおいしいクリームだけをすくいとることの意味から、いいとこ取りのこと)が起きる可能性の指摘があると、アウトカム評価導入に慎重な姿勢を示した。

データベース構築し具体的な評価手法確立

要介護度を評価指標にすることについても、要介護度が様々な要因が複合的に関連した指標であり、要介護度が変化するのに時間がかかることや個人の要因による影響が大きいとの指摘があることを示した。

 その上で、介護サービスの質を向上させることは重要な課題であるとして、要介護認定データと介護報酬明細書データを突合させたデータベースの構築を行い、具体的な評価手法の確立を図るのがよいのではと掲げた。

 こうした一方で、国の未来投資会議での「自立支援介護の全国展開、介護報酬への組込」の説明や、東京都品川区や川崎市などにおいて、要介護度を評価項目に据えた事業者に対する一定の報酬を与える独自の取組があることを紹介している。

 委員の意見は、要介護度の改善と介護報酬をリンクさせることについては、慎重論が多かった。

集合住宅減算 区分支給限度額算定の枠外

 また、区分支給限度基準額については、訪問系サービスで、集合住宅減算の適用を受けないが故に限度額を超えてしまう場合に、不公平感が増大するとの懸念も。区分支給限度額との関係では、集合住宅減算を適用しないとするかどうかが論点に挙げられた。

 この回の介護給付費分科会で、報酬改定の全テーマについて1巡目の議論が終わった。9月からの事業団体ヒアリングを経て、2巡目の議論に入る。

(シルバー産業新聞2017年9月10日号)

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