千田透の時代を読む視点

介護慰労金、確実に職員の手に届ける必要がある/千田透(連載82)

介護慰労金、確実に職員の手に届ける必要がある/千田透(連載82)

 新型コロナウイルスの感染が再び拡大してきている。前回の稿で第2波が必ず来るという前提の下、準備や対策を進めていく必要があると警鐘を鳴らしてきたが、事態は悪い方へと進んできている。

 新型コロナウイルスの感染者が発生して以降、重症化リスクが高い介護現場では、通常のサービスに加え、ウイルスを持ち込ませないための努力や感染を防止するための努力が必要となっている。また自らも感染リスクにさらされながらも、強い使命感を持って、利用者の健康や生活を維持するため、業務に従事されている。

 こうした介護現場の努力に報いるために介護慰労金の支給事業が始まっている。感染者が発生・濃厚接触者に対応した施設・事業所に勤務し、利用者と接する職員には20万円、感染者や濃厚接触者が出ていなくても、事業所に勤務し、利用者と接する職員には5万円が支給される内容だ。

「何も起きていない」の裏にある努力

 事業の実施主体は都道府県で、事業所を経由して、職員に支給される。申請は、それぞれの職員が代理受領委任状を勤務先の介護事業所に提出し、事業所が法人単位で取りまとめて各都道府県に提出することになっている。事務負担が大変だが、事業所として確実に申請を行い、職員の手に慰労金を届ける必要がある。

 今回の慰労金の支給事業に対して、感染者が発生していない施設・事業所に勤務する職員に対して慰労金が支給されることに、「何もしていないのになぜ慰労金を出すのか。全く説明がつかないような税金の使い方をする気はない」と発言し、対象を絞り込む考えを示した知事がいるが、「何も起きていない」ことの裏にある、介護現場の努力に想像力を働かせる必要があるだろう。

 繰り返すが、新型コロナが発生して以来、介護現場では通常のサービス提供以外に、感染対策の手間や時間が付加されている。また感染リスクにさらされながらも、利用者の生活を支えるために、強い使命感で業務に従事している方々がいる。まずは慰労金が支給される背景を、多くの人に正しく知ってもらう必要がある。

 その上で、第2波、第3波の到来を想定し、こうした慰労金の支給だけで十分なのか、現場の手間が介護報酬できちんと評価されているのかなど、ウィズコロナ時代の介護の形を議論していくことが求められているのである。

 千田透(全国生活協同組合連合会 常務理事)

(シルバー産業新聞2020年8月10日号)

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