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訪問リハ 早期開始・医師関与でADL向上

訪問リハ 早期開始・医師関与でADL向上

 厚生労働省は6月7日の社会保障審議会介護給付費分科会(分科会長=田中滋・慶應義塾大学名誉教授)で効率・効果的な訪問リハビリテーションのあり方について議論、退院後の早期サービス開始や医師の関わり方の促進を課題にあげた。

 訪問リハビリの利用者のうち、退院後2週間未満で開始した人は全体の68%。一方で12週以上空いて開始した人も10%いる。開始時期でADLを比較すると、2週間未満で開始した人は2週間以上の人と比べて機能回復が大きい。

 また、2015年報酬改定で新設された「リハビリテーションマネジメント加算」は、加算(Ⅰ)こそ79.4%と約8割が算定しているが、「本人・家族を含む多職種会議」や、「医師からリハビリ計画を本人・家族へ説明し同意」等の要件を含む加算(Ⅱ)は14.1%。算定が難しい理由は「医師の会議への参加が困難」が約8割、「医師からの説明時間が確保できない」「毎月のリハ会議が負担」が約6割と、医師の関与がポイントとなっている。

 実際、利用者のADLを比べると、理学療法士等のリハ職に対する医師の指示が「リハビリの有無のみ」の場合よりも、▽訓練開始の留意事項▽運動負荷量▽訓練中の留意事項▽中止基準▽リハビリの目的――などの指示を含むほうが、より機能回復が見られている。

 訪問リハビリの早期導入について、委員からは医療介護の連携強化を不可欠とする意見が大半。特に今回は、病院側へ情報提供を求める声が多かった。

 日本介護支援専門員協会の鷲見よしみ会長は「通所リハとの判断基準の一つに、座位保持能力がある。具体的な身体状況は訪問リハの導入イメージにつながる」と意見。全国老人保健施設協会の東憲太郎会長は「老健では入所中のカンファレンスで居宅サービスを検討する。医療保険でも社会参加の視点を取り入れ、その上で必要な情報を介護へ流すようにしてほしい」と述べた。

 また、日本慢性期医療協会の武久洋三会長は、訪問リハビリの開始時期が遅くなる実態について「元気な人が突然脳卒中で入院すると、要介護認定が遅れるケースがある。1次判定結果をケアマネジャーへ通知できる仕組みがあれば、プランの準備が一定程度進められる」と提案。医師の関与については「病院の担当医とリハ職が退院前に自宅の状況を訪問して確認し、退院時も同行する。ここの取組みをさらに評価すべき」と主張した。

 このほか、連携強化の手法として、医療・介護保険の各リハビリ計画書の一部共通化、サービス担当者会議などの情報共有へICTの積極活用を促す意見もあがった。

居宅療養管理指導 居住場所で報酬の細分化

 医師や看護師、薬剤師、管理栄養士等が自宅で療養上の管理・指導を行う「居宅療養管理指導」は現行では、利用者が事業所と同一建物に居住しているか否かで、報酬が2種類に分かれる。同省はこの日の分科会で、医療保険と介護保険の整合性の観点も踏まえ、居住場所や人数によるきめ細かい報酬のあり方を論点とした。

 参考として示したのは16年診療報酬改定の訪問診療。①訪問先(自宅・集合住宅・施設など)②患者重症度③1月あたり訪問回数④同じ建物で訪問診療を行う患者の数――によって細かく点数が設定されている。

 特に④に関しては、患者と事業所が同一建物かどうかは要件から除外されており、訪問先の建物に患者が何人いるか(単一建物診療患者数)が基準。同患者数が「1人」と「10人以上」の場合では、報酬に3倍以上の開きが出ている。

 同様の仕組みが居宅療養管理指導に適用された場合、サービス付き高齢者向け住宅だけでなく有料老人ホーム、グループホームでのサービス提供への影響も大きい。

(シルバー産業新聞2017年7月10日号)

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