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福井県の介護保険 在宅介護の負担を3段階評価

福井県は2025年に高齢者数のピーク(推計23.4万人)を迎え、緩やかに減少をはじめる。高齢化率は23年時点で31.6%と全国的に先行しているが、要介護認定率は17.4%と低い(全国平均19.0%)。
健康福祉部長寿福祉課の岡照晃課長(写真:左から2人目)は「平均寿命、健康寿命ともに全国上位。高齢者の有業率は全国で最も高く(30.9%)、元気な高齢者が比較的多い」と説明。高齢化率が進展する40年に向けて「まずは要介護となる人を減らすこと。生活、予防の段階から全世代間で支え合うしくみを構築しなければなりません」と強調する。
同県第9期介護保険事業支援計画では「次世代型の地域包括ケアシステム」を掲げ、医療・介護体制の整備だけではなく、「世代を問わず各々の力を活かしながら地域社会の中で共に支え合う福井」の地域づくりを推進。▽在宅ケアに対応する医療・介護体制▽地域での暮らしを支える介護基盤▽急変時における病院等での受入体制▽生活支援・介護予防▽就労支援・交流支援――を柱に置く。
「生活支援・介護予防」では、20年に「介護負担アセスメントシート」を県独自に作成。家族などの介護者の負担を客観的に評価するツールとして、ケアマネジャーを中心に活用されている。
アセスメント内容は、利用者本人の状態(6項目)に加え、介護者の状況(8項目)や家庭環境(6項目)におよぶ。介護者の状況に関しては▽75歳以上(老々介護)▽重い介護負担感、介護疲れ、身体的不調がある。食事や睡眠、入浴の時間が確保できない▽認知症や介護に関する知識・技術不足――など。家庭環境は▽家庭内暴力、または虐待の疑い(あざ、体重減少等)がある▽住環境が悪い(狭い、非衛生的等)▽経済的問題(低所得、介護離職、借金等)――などを把握する。
全20項目中10以上が該当する場合、負担「重」と判定。事業所だけで対応を判断せず、6カ月に1回、地域包括支援センターと検討することを支援の目安としているが、特に気になるケースについてはその都度、地域包括に報告を行う。地域包括でも対応が困難なケースは、県が介護支援専門員協会や学識者等のアドバイザーを派遣し、必要なサービスや支援機関との連携について助言を行う。
該当項目5~9の負担「中」の場合は、ケアプラン更新時に1回事業所内の複数のスタッフで検討。
該当項目4以下の負担「軽」の場合はケアプラン更新時に同シートを確認することをそれぞれ推奨する。同課田中佳那子主任(写真:右から2人目)は「支援や家族との関係性の中で徐々に把握できる項目も多く含まれています。生活状況が変わった人、虐待疑いのある人など、シートの使用対象者やタイミングは基本的に事業所に委ねています」と説明する。
県が23年8月に行った介護者実態調査によると、ケアマネジャーが所属する事業所のうち、同シートを活用しているのは49.4%と約半数。ただ、県のアドバイザー派遣の活用は5.5%にとどまり、「派遣事業を知らなかった」が43.0%あった。また、昨年4~9月の半年間でケアマネジャーから地域包括に提出されたシートの数は約400件、そのうち県の調査時に介護負担過多として提出された数は約140件(内訳は負担「重」2割、「中」4割、「軽」4割)。
田中主任は「全体の成果分析はこれから」としつつも、「ケアマネジメント力の向上につながるツールになり得ます」と述べる。ケアマネジャーや地域包括、市町担当者が集う年1回の対応力向上研修でも使用し、周知を促す。
同シート作成のきっかけは、介護疲れによる虐待死の発生。「こうした事案を未然に防ぐことが目的。障がい、家庭・子ども部門などの関係機関と、平時からつながりをもっておくことも大切です」(田中主任)。一方で、懸念されるのがケアマネジャーの負担。「身寄りのない人や困窮者の増加に伴い、本業務以外で頼られるケースも多く、負担になっていると聞きます」と田中主任。県ではまず、ケアマネジャーの業務実態に関するヒアリングを行う予定としている。
同県第9期介護保険事業支援計画では「次世代型の地域包括ケアシステム」を掲げ、医療・介護体制の整備だけではなく、「世代を問わず各々の力を活かしながら地域社会の中で共に支え合う福井」の地域づくりを推進。▽在宅ケアに対応する医療・介護体制▽地域での暮らしを支える介護基盤▽急変時における病院等での受入体制▽生活支援・介護予防▽就労支援・交流支援――を柱に置く。
「生活支援・介護予防」では、20年に「介護負担アセスメントシート」を県独自に作成。家族などの介護者の負担を客観的に評価するツールとして、ケアマネジャーを中心に活用されている。
アセスメント内容は、利用者本人の状態(6項目)に加え、介護者の状況(8項目)や家庭環境(6項目)におよぶ。介護者の状況に関しては▽75歳以上(老々介護)▽重い介護負担感、介護疲れ、身体的不調がある。食事や睡眠、入浴の時間が確保できない▽認知症や介護に関する知識・技術不足――など。家庭環境は▽家庭内暴力、または虐待の疑い(あざ、体重減少等)がある▽住環境が悪い(狭い、非衛生的等)▽経済的問題(低所得、介護離職、借金等)――などを把握する。
全20項目中10以上が該当する場合、負担「重」と判定。事業所だけで対応を判断せず、6カ月に1回、地域包括支援センターと検討することを支援の目安としているが、特に気になるケースについてはその都度、地域包括に報告を行う。地域包括でも対応が困難なケースは、県が介護支援専門員協会や学識者等のアドバイザーを派遣し、必要なサービスや支援機関との連携について助言を行う。
該当項目5~9の負担「中」の場合は、ケアプラン更新時に1回事業所内の複数のスタッフで検討。
該当項目4以下の負担「軽」の場合はケアプラン更新時に同シートを確認することをそれぞれ推奨する。同課田中佳那子主任(写真:右から2人目)は「支援や家族との関係性の中で徐々に把握できる項目も多く含まれています。生活状況が変わった人、虐待疑いのある人など、シートの使用対象者やタイミングは基本的に事業所に委ねています」と説明する。
県が23年8月に行った介護者実態調査によると、ケアマネジャーが所属する事業所のうち、同シートを活用しているのは49.4%と約半数。ただ、県のアドバイザー派遣の活用は5.5%にとどまり、「派遣事業を知らなかった」が43.0%あった。また、昨年4~9月の半年間でケアマネジャーから地域包括に提出されたシートの数は約400件、そのうち県の調査時に介護負担過多として提出された数は約140件(内訳は負担「重」2割、「中」4割、「軽」4割)。
田中主任は「全体の成果分析はこれから」としつつも、「ケアマネジメント力の向上につながるツールになり得ます」と述べる。ケアマネジャーや地域包括、市町担当者が集う年1回の対応力向上研修でも使用し、周知を促す。
同シート作成のきっかけは、介護疲れによる虐待死の発生。「こうした事案を未然に防ぐことが目的。障がい、家庭・子ども部門などの関係機関と、平時からつながりをもっておくことも大切です」(田中主任)。一方で、懸念されるのがケアマネジャーの負担。「身寄りのない人や困窮者の増加に伴い、本業務以外で頼られるケースも多く、負担になっていると聞きます」と田中主任。県ではまず、ケアマネジャーの業務実態に関するヒアリングを行う予定としている。

病院・ケアマネの役割を明確化
「在宅ケアに対応する医療・介護体制」では「福井県入退院支援ルール」を16年より運用開始。要介護者や退院支援が必要な人へ、医療機関とケアマネジャーが入退院時の情報共有を円滑にする手法を示した。策定にあたっては県内6カ所の健康福祉センターの圏域ごとに協議したものを集約。報酬改定に応じてアップデートを行ってきた。「県全域の統一ルールは全国でも先がけ。圏域を越えて入退院する場合にも利用しやすい」と田中主任はその目的を語る。
支援フローは入院前にケアマネジャーがいる場合・いない場合の2パターン。いる場合は①入院時の連絡②入院中の連携③退院支援開始の連絡④退院前調整⑤退院時の情報提供⑥退院後の情報提供――に沿って、病院担当者とケアマネジャーそれぞれの役割を示す。
例えば①では、ケアマネジャーは入院が分かり次第、速やかに病院担当者へ連絡することとし、情報提供には「入院時情報提供シート」の活用を促す。また③では、在宅への退院ができそうだと判断すれば、病院担当者が、ケアマネジャーのケアプラン作成や事業所との調整等に必要な期間を考慮し、入院時情報提供があったケアマネジャーに退院支援開始を連絡。④の退院前調整では病院担当者が、ケアプラン作成に必要な情報を「退院支援情報共有シート」等を用いて院内関係者から収集し、ケアマネジャーやかかりつけ医へ提供する。
昨年の調べでは、ケアマネジャーの7割、医療機関の5割がシートを利用。田中主任は「これ以外にも、県様式をアレンジ使用しているところも。定着してきた実感はあります」と述べる。
課題は情報提供のスピードだと田中主任。「入院日数が短縮化し、退院調整に充分な時間が確保できず、シートが活用しきれないとの声もいただきます」。また、退院時カンファレンス前に情報収集することが多く、かかりつけ医の手に渡る頃には状態が変わっている利用者も。現在の紙ベース・手書きから、随時更新・共有できるデジタル化を検討している。
支援フローは入院前にケアマネジャーがいる場合・いない場合の2パターン。いる場合は①入院時の連絡②入院中の連携③退院支援開始の連絡④退院前調整⑤退院時の情報提供⑥退院後の情報提供――に沿って、病院担当者とケアマネジャーそれぞれの役割を示す。
例えば①では、ケアマネジャーは入院が分かり次第、速やかに病院担当者へ連絡することとし、情報提供には「入院時情報提供シート」の活用を促す。また③では、在宅への退院ができそうだと判断すれば、病院担当者が、ケアマネジャーのケアプラン作成や事業所との調整等に必要な期間を考慮し、入院時情報提供があったケアマネジャーに退院支援開始を連絡。④の退院前調整では病院担当者が、ケアプラン作成に必要な情報を「退院支援情報共有シート」等を用いて院内関係者から収集し、ケアマネジャーやかかりつけ医へ提供する。
昨年の調べでは、ケアマネジャーの7割、医療機関の5割がシートを利用。田中主任は「これ以外にも、県様式をアレンジ使用しているところも。定着してきた実感はあります」と述べる。
課題は情報提供のスピードだと田中主任。「入院日数が短縮化し、退院調整に充分な時間が確保できず、シートが活用しきれないとの声もいただきます」。また、退院時カンファレンス前に情報収集することが多く、かかりつけ医の手に渡る頃には状態が変わっている利用者も。現在の紙ベース・手書きから、随時更新・共有できるデジタル化を検討している。
人材確保 愛着から定着へ「福井クラス」開講
人材確保・定着策の一つとして、外国人介護人材の受入支援を強化。昨年2月、ミャンマーの送出機関と連携し「福井クラス」を開講した。県内の介護事業所への受入れが決まった技能実習生が入国前に現地で受講。90分×12回のカリキュラムで、その内容は福井県の地理的情報、観光地、祭りや文化、イベント、さらに方言も学ぶ。
同課相澤世子主任(写真:右から1人目)は「入国前に福井を知り、その土地に愛着をもってもらうことで、地域の人材定着をはかりたい」と説明する。
昨年8月に1期生13人が入国し、10月から6施設で実習を開始。第2期は12人の入国を予定している。「外国人介護人材の受入れが始まった当時は『様子見』の雰囲気だったが、特養での受入れが進んでいます」と岡課長。外国人介護人材全体の受入れ数は23年時点で470人(受入れ事業所181カ所)と、19年の163人から約3倍に伸びている。
同課相澤世子主任(写真:右から1人目)は「入国前に福井を知り、その土地に愛着をもってもらうことで、地域の人材定着をはかりたい」と説明する。
昨年8月に1期生13人が入国し、10月から6施設で実習を開始。第2期は12人の入国を予定している。「外国人介護人材の受入れが始まった当時は『様子見』の雰囲気だったが、特養での受入れが進んでいます」と岡課長。外国人介護人材全体の受入れ数は23年時点で470人(受入れ事業所181カ所)と、19年の163人から約3倍に伸びている。

(シルバー産業新聞2025年3月10日号)