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2018年改定検証 求められる医療機関との密な連携

2018年改定検証 求められる医療機関との密な連携

 厚生労働省は3月14日の社会保障審議会介護給付費分科会介護報酬改定検証・研究委員会(委員長=松田晋哉・産業医科大学教授)で、2018年介護報酬改定の効果検証等に係る7調査の結果を報告した。居宅介護支援事業所・ケアマネジャーの業務については、18年改定で要件が変更された入院時情報連携加算や退院・退所加算、新設の「ターミナルケアマネジメント加算」など、主に医療連携の実態に関して居宅介護支援事業所に対して行われた調査の回答等が示された。

 18年改定の主な内容は①入院時情報連携加算の単位数を入院後の日数で区別。情報提供方法は不問とする②退院・退所加算の単位数を病院・施設からの情報提供の「回数」と「方法」で5段階に細分化③末期がん患者へのケアマネジメントを評価する「ターミナルケアマネジメント加算」の創設④特定事業所加算の要件に、他法人と共同での事例検討会・研修会の実施を追加⑤特定事業所加算に退院・退所加算やターミナルケアマネジメント加算の算定を要件とした新加算(Ⅳ)を創設⑥管理者を主任ケアマネジャーとする(⑥は21年3月末まで経過措置あり)――。

入院時情報連携加算 在宅生活の情報に不足感

 ①の入院時情報連携加算は、入院後3日以内に医療機関へ情報提供した場合に加算(Ⅰ)(200単位)、入院後4~7日以内の場合に加算(Ⅱ)(100単位)を算定。面会、FAXなど提供方法は問わず、入院後より迅速な情報連携が評価される。2018年7~9月に居宅介護支援事業所で医療機関に入院した利用者数は1事業所平均8.0人。うち同加算の適用人数は(Ⅰ)5.1人、(Ⅱ)0.7人と、多くは3日以内の情報提供に努めている。

 入院時の情報提供で、ケアマネジャーが困難と感じた点で最も多かったのが「入院したことがすぐに分からなかった」の9.7%。「医療機関から情報提供を求められなかった」(7.5%)や、「連携の窓口や担当者が分からなかった」(7.0%)など、平時からの関係強化が求められる結果となっている。
また、今回の調査では医療機関側にもヒアリング。入院時にケアマネジャーから提供される情報のうち「役に立つ」と感じる項目は「入院前の介護サービスの利用状況」92.0%、「ADL」85.4%の順に高い。実際に提供されている情報が「不足」していると感じる割合はそれぞれ8.0%、7.4%にとどまる。

 しかし、「入院前の本人の生活に対する意向」については「役に立つ」が70.8%に対し、30.2%が不足と感じている現状。また「在宅生活に必要な要件」も「役に立つ」67.9%に対し「不足」が32.1%に上っており、医療機関がより在宅生活の情報を必要としていることがうかがえる(グラフ1)

退院・退所加算 退院カンファ参加9割近く

退院・退所加算は、ケアプラン作成にあたり、退院・退所元の医療機関・介護施設から必要な利用者の情報を受けた回数が「1回」「2回」「3回以上」で単位数が分かれる。3回以上の場合は最低1回、カンファレンスでの情報提供が必要。1回、2回の場合は、カンファレンス「有り」と「無し」でさらに単位数が分かれる。

 18年7~9月の利用者で同期間に退院した人数は1事業所平均5.7人。うち退院時に医療機関の職員と面談を行った人数は4.2人だった。 退院時に医療機関がケアマネジャーへ期待する役割は、「退院日程に合わせた迅速なサービス調整・ケアプラン作成」が85.4%と最も多く、次いで「退院時カンファレンスへの参加」が81.2%。これらをケアマネジャーが実際に行っている割合は88.1%、87.2%と高い。

 退院時の連携で困難と感じる点をケアマネジャー、医療機関それぞれに聞くと、ケアマネジャーは「急な退院の連絡があり、対応が困難」(50.5%)、「医療機関の都合に合わせた訪問日程の調整が難しい」(32.5%)、「退院時カンファレンスが行われていない」(25.9%)など。一方、医療機関は「治療等の都合により、ケアマネジャーへの退院の連絡が直前になることがある」(72.7%)、「ケアマネジャーとの日程調整が難しい」(39.3%)、「文書での情報提供が煩雑」(22.0%)など、急な退院への対応も含めた日程調整が共通課題となっている。

ターミナルケアマネジメント加算 主治医連携がカギ

ターミナルケアマネジメント加算(400単位)は、末期がん患者への頻回なモニタリングや必要に応じたプラン変更等の負担を勘案し、18年に新設された。18年10月の算定件数は469件。4月の365件から少しずつ伸びてはいるが、利用者全体のわずか0.02%となっている。

 ただ、今回の調査では17年10月~18年9月に担当した末期がんの利用者のうち、18年4~9月の半年間に亡くなった人数は「1人」39.6%、「2人」20.7%、「0人」が18.9%と、約8割が2人以下。算定対象者がそもそも限られている現状も明らかになった。算定上の課題で多かったのが、要件の一つ「死亡日を含む死亡日前14日以内に2日以上在宅を訪問」が難しい(49.0%)、次いで、「利用者または家族の同意を得ることができない」が26.2%だった。また、「主治医等の助言を得ることが困難」(24.0%)や「訪問により把握した心身状況等の情報を記録し、主治医およびケアプランに位置づけた居宅サービス事業者等への提供が難しい」(24.4%)など、主治医を含む他職種との情報共有に課題を残す。

主任ケアマネ・特定事業所加算 管理者に主任ケアマネで育成・研修多く

 居宅介護支援事業所の管理者は、人材育成の取組を促進するため主任ケアマネジャーの配置が必須に。21年3月末まで3年間の経過措置が設けられている。同調査で、主任ケアマネジャーを管理者に配置している事業所の割合は18年時点で51.2%。2年前より6.3ポイント増だが、まだ半数近くが未配置となっている。

 管理者が主任ケアマネジャーか否かで事業内の育成・研修の取組みを比較すると、「事例検討会を定期開催」は主任ケアマネが管理者の事業所のうち60.2%が該当。それ以外の事業所では29.2%と、2倍の開きがあった。また、「ケアマネジャーの育成・資質向上へ、訪問等へ同行し指導」の割合についても、主任ケアマネ事業所42.7%、それ以外の事業所19.0%と、取組みに差がみられた(グラフ2)。

 また、特定事業所加算の算定割合は(Ⅰ)5.4%、(Ⅱ)53.8%、(Ⅲ)31.9%。18年改定で(Ⅰ)~(Ⅲ)に追加された要件「他法人が運営する居宅介護支援事業者と共同で事例検討会、研修会等を実施」に関して課題を聞くと、「業務多忙で研修の時間確保が難しい」(51.9%)や「研修の講師確保が難しい」(27.8%)が多かった。
(シルバー産業新聞2019年4月10日号)

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