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鳥取県の介護保険 認知症本人の参加の場、拡充はかる
鳥取県の人口は2023年4月1日時点で全国最少の53万9190人。うち65歳以上高齢者は17万8391人で、高齢化率は33.1%に達する。65歳以上の高齢者夫婦世帯は25年頃にピークを迎えるとの推計だが、75歳以上世帯、85歳以上世帯はその後も増加。並行し、要介護(支援)認定者は23年4月の3.5万人から35年の3.8万人へ、12年間で約8.5%増加する見込みとなっている。
同県ではかねてから認知症支援を重点施策の一つとしてきた。認知症サポーター養成数は23年度末時点で11万人を超え、人口に占める割合は全国で3番目。人口1万人あたりの講座開催数は全国で最も多い。
このほど策定した第9期(24~26年度)介護保険事業支援計画(鳥取県高齢者の元気福祉プラン)も、認知症施策推進計画を盛り込んだ内容に。同県福祉保健部の藤原浩明係長は「昨年度施行した認知症基本法では、認知症を自らの問題として捉え尊厳と希望をもって暮らせる社会づくりの重要性が改めて認識された。本県では『認知症施策のステージアップ』に位置付けている」と話す。
今年度は①認知症本人の社会参加支援②認知症になっても安心して暮らせる共生社会③若年性認知症の人への支援④認知症医療体制の充実⑤認知症高齢者介護制度人材の育成――の5つが認知症サポートプロジェクト事業の柱。認知症本人や家族の視点に立った総合的な取組みを前年度に引き続き推進する。
①の社会参加支援では、「本人ミーティング」を2カ月に1回、県内3圏域(東部・中部・西部)で開催。認知症本人が5~10人ほど集まり、住みやすい地域に向けた話し合いを行う。「図書館の表示、バスの乗り方など、日常生活での困りごとを共有できる場。集まった意見は施策にも反映させる」と藤原氏。「認知症の診断を受けてから支援機関につながるまで時間がかかる」「不安な気持ちを受け止めてほしい」といった声を受け、21年からは本人と家族が互いに支え合うピアサポート事業も開始している。
②の「認知症になっても安心して暮らせる共生社会」では、認知症サポーターのうちステップアップ講座修了者を中心に構成する「チームオレンジ」の取組を促進する。国の認知症施策推進大綱では25年までに全市町村で整備することとされており、同県は昨年度までに米子市、日野町の2カ所で実績がある。
このほど策定した第9期(24~26年度)介護保険事業支援計画(鳥取県高齢者の元気福祉プラン)も、認知症施策推進計画を盛り込んだ内容に。同県福祉保健部の藤原浩明係長は「昨年度施行した認知症基本法では、認知症を自らの問題として捉え尊厳と希望をもって暮らせる社会づくりの重要性が改めて認識された。本県では『認知症施策のステージアップ』に位置付けている」と話す。
今年度は①認知症本人の社会参加支援②認知症になっても安心して暮らせる共生社会③若年性認知症の人への支援④認知症医療体制の充実⑤認知症高齢者介護制度人材の育成――の5つが認知症サポートプロジェクト事業の柱。認知症本人や家族の視点に立った総合的な取組みを前年度に引き続き推進する。
①の社会参加支援では、「本人ミーティング」を2カ月に1回、県内3圏域(東部・中部・西部)で開催。認知症本人が5~10人ほど集まり、住みやすい地域に向けた話し合いを行う。「図書館の表示、バスの乗り方など、日常生活での困りごとを共有できる場。集まった意見は施策にも反映させる」と藤原氏。「認知症の診断を受けてから支援機関につながるまで時間がかかる」「不安な気持ちを受け止めてほしい」といった声を受け、21年からは本人と家族が互いに支え合うピアサポート事業も開始している。
②の「認知症になっても安心して暮らせる共生社会」では、認知症サポーターのうちステップアップ講座修了者を中心に構成する「チームオレンジ」の取組を促進する。国の認知症施策推進大綱では25年までに全市町村で整備することとされており、同県は昨年度までに米子市、日野町の2カ所で実績がある。
行方不明者の迅速な保護へ ICT機器補助も
また、認知症高齢者等の行方不明対策に関しては、ガイドラインを昨年10月に改正。捜索の対象をこれまでの65歳以上から、65歳未満の若年性認知症、精神・知的障がいのある人、記憶喪失のある人、満18歳に満たない児童へ広げた。隣接県への通知も72時間後から24時間後に見直した。きっかけとなったのが、昨年8月に認知症の女性(米子市在住)が行方不明になった出来事。65歳未満だったため一般失踪者扱いとなり、旧ガイドラインに基づく通知が行われなかった。
関連し、今年度はGPSタグ等を活用した見守り機器の購入費を一部補助する「ICT活用による認知症行方不明防止支援事業」を創設。本人負担割合は市町村がそれぞれ定め、1人あたり補助上限は2万円。市町村負担分の2分の1を県が補助する。藤原氏は「既に地域支援事業の枠組みで同様の助成制度を運用している市町村もあるが、今回は県の独自事業。対象者の要介護度などは問わない」と説明する。
機器は▽ブルートゥースなどを経由せず、位置情報を直接伝達するGPSタグ▽アップルタグ(紛失防止タグ)▽警備会社等の位置情報提供サービス――を想定している。
③「若年性認知症への支援」については、14年より若年性認知症サポートセンターを運営。若年性認知症コーディネーターを配置し、生活相談や就労等支援、また相談内容に応じて家庭訪問やケア会議参加、受診同行、職場訪問などのきめ細やかなサポートを行う。23年度は認知症本人からのべ1326件の相談があった。
若年性認知症の本人、家族が参加するつどい「にっこりの会」も人気。認知症地域支援推進員、介護サービス事業所の専門職等が2カ月に1回、県内3圏域で開催し、高齢者だけでなく世代が近い人どうしの交流もはかられるなど、参加者が増えている。
④の医療体制では、鳥取大学病院を基幹型に据え、地域型の認知症疾患医療センターを県内4病院に設置。かかりつけ医や介護サービス等との連携体制を敷く。鑑別診断件数は年800~1000件で推移。認知症患者の診療に習熟し、かかりつけ医への助言・支援や専門医療機関、市町村等との連携の推進役となる「認知症サポート医」研修は23年度末時点で101人が修了している。
関連し、今年度はGPSタグ等を活用した見守り機器の購入費を一部補助する「ICT活用による認知症行方不明防止支援事業」を創設。本人負担割合は市町村がそれぞれ定め、1人あたり補助上限は2万円。市町村負担分の2分の1を県が補助する。藤原氏は「既に地域支援事業の枠組みで同様の助成制度を運用している市町村もあるが、今回は県の独自事業。対象者の要介護度などは問わない」と説明する。
機器は▽ブルートゥースなどを経由せず、位置情報を直接伝達するGPSタグ▽アップルタグ(紛失防止タグ)▽警備会社等の位置情報提供サービス――を想定している。
③「若年性認知症への支援」については、14年より若年性認知症サポートセンターを運営。若年性認知症コーディネーターを配置し、生活相談や就労等支援、また相談内容に応じて家庭訪問やケア会議参加、受診同行、職場訪問などのきめ細やかなサポートを行う。23年度は認知症本人からのべ1326件の相談があった。
若年性認知症の本人、家族が参加するつどい「にっこりの会」も人気。認知症地域支援推進員、介護サービス事業所の専門職等が2カ月に1回、県内3圏域で開催し、高齢者だけでなく世代が近い人どうしの交流もはかられるなど、参加者が増えている。
④の医療体制では、鳥取大学病院を基幹型に据え、地域型の認知症疾患医療センターを県内4病院に設置。かかりつけ医や介護サービス等との連携体制を敷く。鑑別診断件数は年800~1000件で推移。認知症患者の診療に習熟し、かかりつけ医への助言・支援や専門医療機関、市町村等との連携の推進役となる「認知症サポート医」研修は23年度末時点で101人が修了している。
認知症予防プログラムの普及
同事業支援計画のフレイル予防対策でも、認知症に関連する取組が随所に見られる。
鳥取県は日本財団との共同プロジェクトで鳥取大学、伯耆町と連携し、16年度に県独自の「とっとり方式認知症予防プログラム」を開発。初めて実証効果が得られた手法として注目を浴びた。
同プログラムは①運動(50分)②座学(20分)③知的活動(50分)――で構成。運動は筋力運動、有酸素運動を中心とし、座学では認知症の基本から早期発見・相談の流れなどを学ぶ。知的活動は「近時記憶」「視空間認知」「作業記憶」など8つの課題を週ごとにこなす。「活動内容は主催者側で柔軟に決めても良い。参加意欲を引き出すことも大切」と藤原氏。今年度は老人クラブと連携し、「集合型+オンライン」のハイブリッド型教室の普及、立上げ支援を昨年度に引き続き行う。
また、各世代の特性に応じた取組として、1回約30分の動画プログラムをスマートフォンやPCで学べる「オンライン認知症予防教室」は半年開催を通年開催へ拡張。LINEを活用した認知症情報の配信サービスはフレイル予防のコンテンツを追加し、さらに認知症疾患医療センター(地域型4病院)への相談受付機能も設けた。
鳥取県は日本財団との共同プロジェクトで鳥取大学、伯耆町と連携し、16年度に県独自の「とっとり方式認知症予防プログラム」を開発。初めて実証効果が得られた手法として注目を浴びた。
同プログラムは①運動(50分)②座学(20分)③知的活動(50分)――で構成。運動は筋力運動、有酸素運動を中心とし、座学では認知症の基本から早期発見・相談の流れなどを学ぶ。知的活動は「近時記憶」「視空間認知」「作業記憶」など8つの課題を週ごとにこなす。「活動内容は主催者側で柔軟に決めても良い。参加意欲を引き出すことも大切」と藤原氏。今年度は老人クラブと連携し、「集合型+オンライン」のハイブリッド型教室の普及、立上げ支援を昨年度に引き続き行う。
また、各世代の特性に応じた取組として、1回約30分の動画プログラムをスマートフォンやPCで学べる「オンライン認知症予防教室」は半年開催を通年開催へ拡張。LINEを活用した認知症情報の配信サービスはフレイル予防のコンテンツを追加し、さらに認知症疾患医療センター(地域型4病院)への相談受付機能も設けた。
認知症検査・治療費を補助
認知症治療薬「レカネマブ」が保険適用になったことを受け、市町村が制度を設けた場合に検査・投与などの医療費を市町村へ間接補助する「鳥取県アルツハイマー病治療薬間接補助事業」を今年度創設。対象経費は▽アミロイドPET検査▽脳髄液検査▽レカネマブ投与▽レカネマブ投与中の頭部MRI検査――とし、レカネマブ投与治療の開始前に実施した検査費用は10分の10以内、それ以外は2分の1以内を補助する。補助上限額は40万円、生涯で算定する。「治療薬の主な投与の対象となる人は軽度認知障害(MCI)や早期、軽症の人。早期検査・治療につながるよう啓発に力を入れていきたい」(藤原氏)
(シルバー産業新聞2024年8月10日号)