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在宅ケアクリニック米子 多職種が同じ目線で進める医介連携

在宅ケアクリニック米子 多職種が同じ目線で進める医介連携

 在宅ケアクリニック米子(鳥取県米子市、佐々木修治院長)では、米子市を中心とした県西部圏域で訪問診療・訪問看護を行っている。もともと自治医科大学出身の佐々木院長は、地域医療への従事を通して全身を診るスキルを磨いた。次第に患者も増える中、自然に開業につながった。

 「在宅では、少し不自由が出てきた頃から、次第に年をとって亡くなるまで継続して関われることが魅力」と佐々木院長は語る。

「家で最期を」の希望に応える

 現場では末期がんの患者も多く、酸素投与や点滴を行っている状態であっても最期を自宅で迎えたいという希望がある。

 「家でできるならしよう」という方針で、今日帰りたいという場合でも、すぐに病院の退院時カンファレンスに参加し、その日に自宅に帰るケースもある。帰りの介護タクシーで呼吸が弱くなり、その日のうちに亡くなった人もいる。

看取りには多職種連携が必須

 クリニックでは現在、およそ300人の患者を常勤・非常勤合わせて8人の医師が担当し、年間50~70件の看取りを行う。

 退院時にはケアマネや介護事業所と連携。がん末期の場合、介護保険の認定調査の時点で非該当だった人が、急に要介護4~5相当に悪化するケースも見られる。

 「ベッドなど自宅環境の整備は介護保険を利用する方が良い。もし申請前の場合は自費レンタルから始めるケースもある。福祉用具事業所を含めて動くことが多くなっている」と佐々木院長は語る。訪問看護や、麻薬を使用するケースでの薬局の介入など、在宅ケアにおいて多職種連携は欠かせない。

在宅で進むICT化

 米子市を含む西部医師会では、医療介護連携を推進するためバイタルリンク(帝人ファーマ)と契約。会員は毎月の使用料負担だけで利用できる。

 クリニックが患者に関係する事業者を紐づける仕組みで、訪問介護・看護、薬局などは無料で使える。診療やケアの状況を共有でき、医師の考えが看護師や介護職、薬局にも伝わることで、連携がスムーズになる。一方で、褥瘡の写真なども共有できるため、介護職も医師に報告しやすい。定期訪問の時期なども気軽に相談できる。

 「法人のルールでシステム間での情報のやり取りが禁止されているなど、導入が厳しいケースもあった。今年度の診療報酬改定では、ICTを活用した在宅医療情報連携加算などが新設されたことで、導入を認めてくれた事業所が多かった。積極的に導入をお願いしている」(佐々木院長)。

期待されるおしどりネット

 県では、鳥取大学病院が中心となり運用する「おしどりネット」の整備が進められており、大学病院をはじめとした基幹病院のカルテをクリニックや薬局が閲覧できるネットワークが構築されつつある。

 「紹介元の病院で、どのような話をされているのか、どこまで告知されているのかなどを把握でき、治療がスムーズになる」と佐々木院長はメリットを語る。

在宅の要となる西部在宅ケア研究会

 県西部圏域の医療介護連携では、西部在宅ケア研究会が重要な役割を担う。

 医師、歯科医師、薬剤師、看護師、介護職員、行政などが参加し、在宅ケアに関わるテーマの発表や多職種でのグループディスカッションを通して、連携強化や現場の声を行政に届ける役割を果たす。

 「職種ごとに集まるのではなく、同じテーブルで話ができる環境が大切」と佐々木院長は連携のポイントを振り返る。
地域では、会設立当初からの医療・介護関係者の努力によって多職種の連携が進む。

 「在宅の現場では、ヘルパーの意見を活かした診療ができる。ケアマネを含めて、診察に同席してもらえると、困りごとを直に相談できる。利用者に接する現場の職員を含めて積極的に会に参加し、診療にも関わってほしい」と佐々木院長は期待する。
(シルバー産業新聞2024年8月10日号)

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