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在宅介護事業4社が協働 経営課題の効率的な解決めざす

在宅介護事業4社が協働 経営課題の効率的な解決めざす

 通所や訪問など在宅介護事業を主として行う、AIケアサービス(東京都大田区、相川貴志代表)、カラーズ(同、田尻久美子代表)、スマイルクリエーション(同、田中功佑代表)、ケアメイト(東京都品川区、板井佑介代表)は4月、協働して介護事業者の経営課題を解決するスキーム「東京城南BASE.」を発足した。各社は港区、世田谷区、目黒区を含む5自治体で約30事業所を展開する。今年度からの3年計画を策定している。

 同団体は、経営課題を効率的に解決して経営者やマネジメント層の負担を軽減し、サービスの質の向上や人材育成・定着、企業の成長をめざす。本来、協働が難しい事業者同士で連携し、課題解決の方法などを繰り返しディスカッションしてきた。

 スマイルクリエーションの松橋良副社長は「中小企業は▽働き手がいない▽退職者が出て現場が回らない▽コンプライアンスが適正に維持できない▽営業活動ができなくて数字が上がらない――などの課題を抱えている。本来は理念やビジョンをしっかりと成長させ、そこに向けて仕事していくはずだが、それができていない」ともどかしさを訴える。

 こうした課題を解決するために、同団体では研修や採用、社員教育などの成功事例を共有し、実践を促している。デイサービスの運転手が退社した場合は他社の運転手に協力を求める。また小規模多機能型に興味がある職員がいたら、すでに実績がある会社に実習に行くこともできるなど、職員のキャリアアップにもつながる。

こころざしの軸を共有

 連携するメンバーに求めるのは「こころざし軸」。

 具体的には▽ともに生み出したい人▽利他の精神がある▽損得でなく尊徳重視▽短期的でなく中長期的展望をもつ▽できない理由を挙げるのではなく、できる方法を考える▽競争でなく共創をもつ――を重んじることを挙げる。介護や福祉の原点にかえった価値観の一致が重要なポイントとなる。

具体的な策定事項

 3年計画の柱には①人財確保②教育・研修③業務運営(a:人財サポート、b:ツール、c:コストコントロール、d:地域連携・協働)の3本を定めている。

 人財確保では、合同採用やハローワークとの連携、事業所を実際に見て回るツアー企画など、ユニークなアイデアも多数出ている。

 大田区主催「おおた福祉フェス」の合同就職相談会では合同ブースを出展した。「介護人材を自ら掘り起こさなければ誰が支えるのかという危機的状況になっている」と松橋氏。

 AIケアサービスの相川氏は「同じ価値観を持つ事業者が集まったことで、各社の強みを活かす連携になっている」と評価。こうした就職相談会では、面接に来た人が「自分とは合わない会社かもしれない」と感じたときに、他の3社を紹介できる。

 研修はこれまで1社が行ってきた養成研修を共有。講師を探す手間などが軽減される。各社が積み上げてきた技術等を持ち寄り、職員のステップアップもはかる。

 業務運営は、共同購入による「コストコントロール」、各種様式やツール、委員会等の共有による「オペレーションの効率化」などを挙げる。長期的には、一時的な不足人員を補填できる人財のシェアなども検討する予定。

報酬改定に対応できるさらなる連携体制を

 カラーズの田尻氏は「地域で頑張ってきた介護事業者の選択肢が、M&Aか廃業しかないという事態をなくしたい。人材を1社で抱え込むのはナンセンス」と指摘。人材に関する基準も厳しくなっているため、夜勤やオンコール体制も連携して作れないかと考えているという。「介護報酬改定のたびに運営基準が厳格化・複雑化し、情報を追いかけるだけでも本当に大変。4社の『利用者に質の高いサービスの提供をしたい』という思いが一致しているこの活動は、連携を模索していく一つの実証実験的な位置づけ」(田尻氏)。

 またケアメイトの板井氏は、M&Aについて「運営課題の解決がクローズアップされ過ぎると、いま国が推進しようとしている大規模化(=大企業化)を推奨することにもなりかねない」と懐疑的な姿勢をみせた上で、「地域の中小事業者が残ることの意義、そのための活動であることを伝えたい」と話した。

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