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“食支援” の大切さを多職種で共有 /宮下今日子(連載91)

 “食支援” の大切さを多職種で共有 /宮下今日子(連載91)

 2回目(前号)の安田和代さんからバトンを繋ぐのは、岡山県のつばさクリニック(医療法人つばさ、中村幸伸理事長)に勤務する梅木麻由美さん。

在宅訪問の管理栄養士に聞く③ 梅木麻由美さん

 現在、5人の管理栄養士が活躍中!

 ある時、安田さんの話に魅了された職員が、ぜひ当院で話して欲しいと思い立ち、2017年に安田さんを招いた。ケアマネを含む約100人の多職種が講演を聞き、食支援の大切さを共有した。

 その後、日本在宅医学会第2回フォーラム(主催:日本在宅医療連合学会)が岡山で開かれた時には、食支援をテーマに据え、理事長の中村医師が座長を務めた。

 岡山県でも17年頃から在宅診療における「食」「栄養」がキーワードになってきたという。「以前は在宅に管理栄養士が入るとか、クリニックが管理栄養士を雇用するなんて考えられなかった。つばさクリニックでは、先生に食支援を理解して頂けたのが嬉しい」と梅木さんは笑顔で話す。
右側が梅木麻由美さん

右側が梅木麻由美さん

 訪問診療を専門とする同クリニック(2カ所)では、「つばさ食支援」と名付け、5人の管理栄養士が日々在宅を回っている。

 同クリニックの訪問栄養指導の利用者数は、累計で200人、毎月80人を訪問している。そのうち、摂食嚥下と低栄養での管理栄養士の介入事例は約6割にも上る(17年7月~20年7月末。2カ所のクリニックの合計値)。

 中村理事長は「口から食べたい、食べさせたいという在宅の希望に直面するようになってきた。また、栄養状態の悪化から褥瘡になっている方を少なからず診てきた」と〝食〟の大切さを伝える。

 また、地域への食の相談支援も行っていて、最近ではケアマネからの相談も増えてきたという。相談内容は、誤嚥性肺炎で入退院を繰り返している、体重が減少し栄養状態が心配、治療食で困っている、下痢で困っているなどが多い。

79歳男性Sさんのケース

 今回、梅木さんから紹介して頂いた事例は、ALSで飲み込みに課題がある方。

 要介護1の79歳男性Sさんが退院と聞き、梅木さんはケアマネジャーと一緒に退院時カンファレンスに出向いた。そこで、病院から指示された食形態はミキサー食。退院後、早速お宅を訪問すると、おかゆが半分も残っていた。奥さんは指示通りに作っていた。そこでまずおかゆのアドバイスをした。
お雑煮(嚥下食)

お雑煮(嚥下食)

おかゆの作り方

 おかゆには粘りがあり、喉に残ることがある。そこで、滑らかさを出す「スベラカーゼ」という調整剤を使い、滑りのよいゼリー
状のおかゆを作った。その結果、Sさんはおかゆを食べるようになった。

 以下は、梅木さんの食支援のポイント。

エネルギー量を上げる

 ミキサー食は水分を使うため、栄養価が下がりやすい。ALSなどの病気ではエネルギー消費も高くなる。その補給として、油の摂取が大事で、マヨネーズ、オリーブオイルなどを積極的に使うのがベスト。

水分の摂り方:ゼラチンで作るお茶ゼリー

 トロミを付けたお茶を嫌う方は結構多い。ドロっとしたものが口に残り不快らしい。その場合、ゼラチンを使ってお茶を作ると、滑りがよく、のど越しが良くなる。市販の経口補水液も同じようにすると飲み込みやすい。

トマトゼリー

 冷凍したトマトを水につけて皮むきする。「ミキサーゲル」という調整剤を加えてミキサーにかけ、ラップに包んで丸くする。見た目も美しく、食欲がわく。
トマトゼリー

トマトゼリー

おかずは家族と同じメニューを

 まず今日は何を食べたい、から会話を始める。そして、好物を作るようにして、さらに家族も同じものを食べるようにする。

 こうした食支援により、梅木さんはまだ介入してから3カ月だが、Sさんの食事量は増えた。体重も増えはじめ、伝い歩きから室内歩行が自立し、一人でトイレにも行けるようになった。

 梅木さんら管理栄養士は、お正月になると嚥下食のお雑煮を作る。見た目では分からない綺麗な仕上がり。希望者宅で毎年作り続けている。

 普段は訪問前にお店でUDFマークの介護食品をリサーチするという梅木さん。「福祉用具のカタログで介護食を調べる利用者さんもいるが、もっと食の素晴らしさを伝えたい!」と日々、食支援に向き合っている。

 宮下今日子

(シルバー産業新聞2020年8月10日号)

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