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クラウド・音声入力で残業減、外出時間創出に ~キヤノンシステムアンドサポートの伴走支援~

クラウド・音声入力で残業減、外出時間創出に ~キヤノンシステムアンドサポートの伴走支援~

 特養かおる園は1992年に町立施設(当時)として移転改築した。30年が経過した昨年、社会福祉施設整備事業で大規模修繕を実施。あわせて介護サービス提供基盤整備事業補助金を利用しICTを導入、ケア環境を整備した。

 施設がある新十津川町の人口は、ピーク期に1万3000人だったが、現在は6000人を切る。「どの仕事も働き手の確保が厳しい中で介護職を選んでもらうためには、『現場が大変』というイメージを払拭しなければなりません。そのためには、ICTによる業務効率化が必要です」と西川雅浩理事長は導入の経緯を話す。

リアルタイム入力で正確な生活記録に

西川理事長

西川理事長

 介護記録ソフトはクラウド、かつ音声入力に対応したタイプに変更。以前は入力するために「パソコン渋滞」が発生していたが、導入後は各職員が手元のスマートフォンで記録・閲覧。転記はほぼ無し、情報共有の精度も上がった。同施設では食事・水分摂取項目に必要な情報を記録できるよう入力項目に軽微な変更をかけた。さらにケアプランのアセスメントには課題分析表を組み込む等、少しでも各職種が業務のなかで使いやすくできるよう声を拾い上げて記録様式に反映させている。

 音声入力も有効だ。勤務中は骨伝導ヘッドセットを装着し、両手が塞がっている状態でも記録が行える。不慣れな職員もいるため、入力内容の事後確認を必ず行うよう、業務フローに追加した。

 長田雅徳施設長は「食事の記録は下膳しながら行うことができます。水分量も1日の合計だけでなく、どの時間にどんなものをどのくらい摂取したか、つぶさに残せるようになりました」と説明。自立支援介護に取組む同施設にマッチした介護記録ソフトだと評価する。

 これら記録業務の効率化により残業時間は10%削減。長田施設長は成果の一つとして「職員と利用者の外出時間が増えました。また、単なる時間の捻出だけでなく、職員の精神的余裕にも影響していると思います」と述べる。
職員へのレクチャーに関しては、使用方法をマスターした専任の職員を1人配置。疑問点などを集約し、FAQを共有した。「40~50代のベテラン職員も多く、抵抗があると予想していましたが、看護やリハビリ職などの専門職ほど早く使い慣れようという意欲が高かった印象です」(長田施設長)。
長田施設長

長田施設長

訪室回数が半減

 見守り機器はマットレスの下に敷くタイプを導入した。寝返り、呼吸、脈拍などの体動を検知し、データは介護記録ソフトへ自動的に記録。既に8台保有していたが、98台追加しショートステイを含む全床に設置した。これまで決まった時刻に6回行っていた訪室による安否確認は半減。見守り機器で安眠が確認できれば訪室しない等の判断ができるようになった。

 「常時、全利用者の状態が把握できるようになったことが大きいです。夜勤は最少人数の5人体制で、皆緊張感をもって働いています。利用者の安眠を妨げないことに加え、職員の疲労、精神的負担を緩和させることも導入の目的です」と長田施設長は話す。

 また、7台導入したカメラは転倒リスクが高い利用者の部屋の外や、2方向が見渡せる廊下の角などに設置。見守り機器で離床を検知後の状況確認が行え、万が一、転倒が発生した場合の原因究明に生かす。西川理事長は「トイレのタイミングを把握できれば、適切に誘導を行うことができ、排泄ADLの維持・改善にもつながります」と、自立支援に活用する余地も十分にあると述べる。
見守り機器とカメラで夜間の状況が見える化

見守り機器とカメラで夜間の状況が見える化

地域活動で「ICT活用施設」アピール

 同施設は地区自治会と合同で夏祭りを開催するなど、地域活動にも積極的。多世代と交流する機会も多い。「子どもや若年層が福祉・介護に触れる過程で、ICTを駆使する現場や、科学的にアプローチする専門職の働き方を見せ、介護を憧れの仕事として目指してもらいたいと考えています」と西川理事長。今後、ICT化を法人全体で推進するため、かおる園をモデルケースに必要な人材を育てていきたいと語った。

(シルバー産業新聞2024年9月10日号)

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