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福祉用具専門相談員 指定講習カリキュラム見直し

福祉用具専門相談員 指定講習カリキュラム見直し

 全国福祉用具専門相談員協会(岩元文雄理事長)は、このたび、国から助成を受けた「福祉用具専門相談員指定講習カリキュラムの見直しに向けた調査研究事業」の報告書をとりまとめ、同団体のホームページに公表した。見直し案は、研修時間が現行の50時間から53時間に変更されているほか、「福祉用具の安全利用とリスクマネジメント」の科目の追加、演習形式の充実が図られていることなどが特徴。調査研究事業で委員長を務めた国際医療福祉大学大学院の東畠弘子教授に話を聞いた。

――今回のカリキュラム見直しの経緯を教えてください。

 指定講習カリキュラムの研修時間は、介護保険制度の施行時は40時間でしたが、福祉用具サービス計画書の作成が義務化されたのを受け、2015年から時間数が50時間に拡充されました。その後、介護保険制度や福祉用具を取り巻く環境が変化していく中で、21年度の「社会保障審議会介護給付費分科会」や「介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会」から、「指定講習カリキュラムの見直しを検討すべき」との意見がつき、今回、厚労省の老健事業により、指定講習カリキュラムの見直しを検討することになりました。

――どういうところを見直す必要があったのでしょうか。

 介護給付費分科会の意見書では「福祉用具の事故防止に資する情報を基に、福祉用具専門相談員の指定講習カリキュラム等の必要な見直しを行っていくべきである」と、福祉用具の安全な利用の観点から見直しが求められていました。

 また、15年にカリキュラムを見直してからも、介護保険制度では感染症や災害、虐待防止、認知症などの対策が強化・推進されています。こうした事柄は、福祉用具専門相談員として最低限備えておく知識であり、指定講習カリキュラムの中に取り入れていく必要がありました。

――前回の見直し以降の介護保険制度や福祉用具の環境変化をアップデートする必要があったわけですね。

 そうです。また、見直しを検討するにあたって、指定講習事業者や福祉用具貸与事業者にアンケートやヒアリングを行ったところ、指定講習の現場では新人教育を行うにあたり、実際に福祉用具を使って演習したり、グループワークやロールプレイを行い、受講者同士でディスカッションをして、理解を深めるなどの工夫が行われていることが分かりました。

 そこで、今回のカリキュラムの見直しでは、研修の実施方法について、講義と演習を組み合わせた形式を充実させました。これにより、受講者同士や受講者と講師が双方向の形で学びを深められることを期待しています。

――全体の研修時間はどう変わるのですか。

 アンケートでは、指定講習の日数は平均8.1日で、「平日のみの日程で開催している」事業者が半数以上でした。貸与事業者へのアンケートでは、時間数は「現行のカリキュラムの時間数が良い」との意見が56.6%で最も多く、「現行の時間数は短い」との意見は5.4%に過ぎませんでした。こうした現場の声や実態も踏まえて、内容は充実させましたが、全体の時間数は「53時間」と、現行の「50時間」に対して、3時間の増加にとどめました(表)。

――「わずか50時間程度の研修時間で十分なのか」という意見もありますが。

 誤解して欲しくないのは、指定講習カリキュラムは、福祉用具専門相談になるための“ファーストステップ”だという点です。そこからは、福祉用具専門相談員としての継続的な学びが必要になります。その点を理解してもらうために、カリキュラムの最終の講義・演習では、全体内容を振り返るとともに、継続的に研鑽することの必要性を学ぶ形にしてあります。福祉用具専門相談員には何故、継続的な学びが必要なのか。自らに問いかける姿勢こそが、専門職としての第一歩となります。
(シルバー産業新聞2024年5月10日号)

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