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シリウス 施設でも、在宅でも洗身機器の普及を目指す

シリウス 施設でも、在宅でも洗身機器の普及を目指す

 訪問系サービスの撤退、ヘルパーの高齢化、入浴介助の身体的負担の高まりなどの課題解決に向け、シリウス(東京都台東区、亀井隆平社長)は、介護用洗身用具「switle BODY(スイトルボディ)」を開発し、在宅と介護施設の両方への普及をはかる。

施設では介護テクノロジー補助金活用へ道筋

 同機器は、要介護者をベッドに寝かせたまま全身を洗える介護用保清用具。タンクから伸びたホースのヘッドを肌に当てながらすべらせ、水やソープを噴射し、同時に吸いあげることで周囲をほとんど濡らさずに身体を洗うことができる。ヘッドを専用パーツに取り換えれば、陰部や頭髪の洗浄も可能。

 2024年4月の発売以来、介護テクノロジーを積極的に活用している介護施設などで導入が拡大。11月には介護施設や医療機関の声をもとに、お湯の温度や噴射量を増やし、ヘッドのスポンジ部分の厚みを改良した新モデルを発表した。25年4月以降は、介護施設等への介護テクノロジー補助金の対象となる「入浴支援機器」の定義見直し(▽浴槽への出入り動作の支援とともに「高齢者等の清潔を保つことを目的とした入浴ケア」の文言追加▽高齢者等が一人で使用できることに加え「一人の介助者の支援の下で使用できる」の文言追加)により、条件により最大75%の導入補助が受けられる道筋が整った。

動き出す在宅での福祉用具レンタル対象化

 次に目指すのは、在宅での介護保険福祉用具貸与としての取り扱い。

 「介護施設と自宅を行き来しながら、できる限り自宅生活を伸ばす試行的な在宅復帰もある。自宅では福祉用具貸与の良さを生かして、洗身ができる機器を使用するようなシームレスな活用も、今後は求められるのではないか」と亀井社長。また、「訪問入浴介護の事業者数は減少し始めており、地域によっては、お風呂に入れない要介護者もでてきた。利用者宅にスイトルボディを置いてもらい、ヘルパーや介助者の訪問時に洗身する手法も提案していきたい」と説明する。

 こうした考えは、将来を見据えた国の議論にも沿う。今後の介護サービス需要の増大と、介護職の不足について中長期的な方針を検討する「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方検討会」のとりまとめ案では、テクノロジー活用等による生産性向上として「訪問系サービスにおいて、テクノロジーの実証、現場での取組事例の把握、新たなテクノロジー開発を進めるとともに(中略)訪問先の利用者に対する福祉用具貸与も負担軽減の面で活用していくべきではないか」との記載が検討されている。

 福祉用具貸与の目指すところとして、本人の自立促進、介護者の負担軽減とともに、訪問系サービスの介護職等の負担軽減のため、福祉用具貸与を活用することを評価するものだ。
亀井社長

亀井社長

今年度中の追加決定めざし、検証データ収集

 3月4日開催の厚生労働省「介護保険福祉用具・住宅改修評価検討会」では、新規の福祉用具貸与種目「介護用保清用具」を創設する是非について議論が交わされた。

 提出された調査結果は、昨年10月から12月にかけて、在宅で介護を受ける3人の高齢者と2人の身体障がい者に機器を利用してもらい、終了後にアンケートを集計したもの。

 操作性は「簡単だった」が75%。ヘッド部分のボタンで水と泡の噴射を切り替えられることや、本体コントロールパネルの直感的にわかりやすい操作性により、介護テクノロジーを使い慣れていない人でも操作しやすかったようだ。

 水垂は「少し発生した」が7割だったものの、「何度か使用するうちに垂れなくなった」との声もあがった。亀井社長は「ベッド上で使用する際はバスタオルを身体の下に敷いてもらうことで、ほとんど問題のない程度で済む」と説明する。
皮膚の状態は全員が「赤くなるなどのダメージはなかった」と回答。また片付けは「短時間でできた」が85%だった。

 同機器を使った感想は要介護者の65%、介助者の75%が「満足」と回答した。

 この報告を受けた同検討会の判断は「検討の継続」。同社では、今後さらに在宅での活用の可能性を高めるため、一般家庭を想定して認知症グループホーム等での検証を予定する。対象者を高齢者に限定し実践に近いデータ集めを行うほか、より多くのn数のもと、一人の介護福祉士が同一カ所をスイトルボディでの洗身と清拭をした際のタイムスタディを行うことで、負担軽減・業務改善の数値化を目指す。

 「在宅での機器活用に関するさまざまな視点から、リビングラボ等の支援を受けながら、早急に検証調査を始め、25年度途中でも種目追加を認めてもらえるように、時間軸を意識しながら、しっかり進めていきたい」と亀井氏。

 さらに同機器の認知度向上に向け、全国の介護生産性向上総合相談センター等への機器展示も順次予定している。
(シルバー産業新聞2025年4月10日号)

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