ニュース

スマホで複数提案・全国平均価格説明(横浜市・みんなの福祉用具)

スマホで複数提案・全国平均価格説明(横浜市・みんなの福祉用具)

 福祉用具貸与では、2018年度からの制度見直しによって、複数用具を提案することや、全国平均価格の説明が義務付けられたことで、福祉用具専門相談員の仕事量が大幅に増加している。発展的に事業を継続していくためには、増加した業務負担を軽減し、生産性の高いサービス提供を実現できるかがポイントになる。横浜市にある「みんなの福祉用具」(森元陽子社長)では、福祉用具レンタル卸事業を全国展開する日本ケアサプライの事業者支援ツール「e―KaigoNet Look」を活用し、業務負担の軽減と効率性の高いサービス提供を実現している。

 「みんなの福祉用具」は、併設する訪問看護ステーションが母体の福祉用具貸与事業所。訪問看護認定看護師の資格をもつ森元陽子社長が、病院から退院した人たちを地域で支えていく中で、住環境整備の重要性や、重度者を支える必要性から、今から5年前に事業所を開設した。
 福祉用具専門相談員は、管理者の兵頭修さん、主任の磯山純正さん、車いす安全整備士やシーティングエンジニア基礎講習課程の修了資格などを持つ室橋英二さんの3人。重度者を支えるための知識や、看護師・セラピストらと連携するためのスキルを持ち合わせたスペシャリストたちだ。

左から磯山さん、森元社長、 兵頭さん、室橋さん

 事業所として悩みだったのは、自分たちの専門性を最大限に生かすために、書類作成などの事務負担をいかに減らしていくかという点。18年度より複数用具を提案することや、全国平均価格の説明が義務付けられたことで、書類作成にかかる時間が大幅に増加していた。「12年にサービス計画書の作成が義務化されて、昨年からは全国平均価格の説明も始まった。書類の作成のための時間がどんどん増えていく中で、利用者に関わる時間やモニタリングをきっちりと行う時間が削られ、良いサービスが提供できなくなるという危機感があった」と管理者の兵頭さんは説明する。そうした時に、福祉用具レンタル卸の日本ケアサプライから、新たな事業者支援ツールとして開発された「e―KaigoNet Look」の活用を提案され、導入することを決めた。
 「e―KaigoNet Look」は、レンタルカタログに記載されている「TAISコード」や「届出コード」を、スマートフォンのカメラを使って読み込むことで、当該用具の商品情報や価格情報を簡単に表示できるアプリ。スマートフォンのカメラで、カタログに記載された「TAIS」などのコードを撮影すると、OCR(文字認識)技術がコード部分の情報だけをスキャンし、画面にコードの一覧を表示。該当する商品のコードをタッチすることで、商品の名称や型番、画像などの「商品情報」と、全国平均価格や上限価格、自社価格などの「価格情報」が表示される。さらにそこから「選択する」のボタンをクリックすることで、選定リストへと商品をストックしていくことができ、簡単に複数用具の提案と全国平均価格の説明が行える仕組みになっている。

カタログに記載されたコードを撮影するだけで複数用具の提案や全国平均価格の説明が行える

 「カタログに記載されているコードを、スマートフォンのカメラで写すだけで、法令順守に則ったサービス提供ができ、さらに選定提案書の作成までできるので、本当に助かっている」と磯山さん。これまでは、選定提案書を作成するために、事業所に戻って来てから、パソコンを立ち上げて、厚労省が公表しているリストの中から、一つひとつ全国平均価格を調べ、入力作業を行っていた。時間にして利用者1人あたり15分程度かかっていたという。それが「e―KaigoNet Look」を導入したことで、利用者宅でコードを読み込み、複数用具を提示、全国平均価格の説明までをその場で行えるようになった。時間にしておよそ5分。これまでの3分の1程度の時間にまで短縮されている。「1日あたりの件数で見ると、その差は非常に大きいものになります」と評価する。「e―KaigoNet Look」導入後に同事業所の残業時間は目に見える形で減っており、働き方改革にもつながっているという。
 「導入してから、使い方を教えてもらったのは1回だけ。直感的に使用できるので、使い方は10分くらいで覚えました」と室橋さん。導入費用はスマートフォンにアプリをダウンロードするだけなので、専門相談員1人あたり月額360円。「気軽に導入できるわりに時間短縮効果は抜群なので、費用対効果はとても高い。帰ってから書類を作成しないといけないという精神的な負担を解消してくれる部分は、まさにプライスレスです(笑)」と磯山さんは太鼓判を押す。
 日本ケアサプライでは今後、「e―KaigoNet Look」をサービス計画書の作成や商品の発注とも連動させていく考え。「書類作成などの事務負担は、ICTや業務支援ツールを上手く活用して軽減させていくのが、安定的に事業を継続させる上で重要だと思います。福祉用具専門相談員は、福祉用具に関する情報や専門性を分かりやすくご利用者に伝えていくのが役割。効率化を図れる部分は業務支援ツールに任せて、難病の方など、地域で困っておられる方のどんな相談にも対応できる相談員になっていきたい」と磯山さんは話している。

(シルバー産業新聞2019年9月10日号)

関連する記事

2024年度改定速報バナー
web展示会 こちらで好評開催中! シルバー産業新聞 電子版 シルバー産業新聞 お申込みはこちら

お知らせ

もっと見る

週間ランキング

おすすめ記事

人気のジャンル