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動き出す防災・減災 災害関連法案審議、在宅避難者も支援対象に

動き出す防災・減災 災害関連法案審議、在宅避難者も支援対象に

 阪神・淡路大震災から30年を迎えた。政府は2025年1月からの通常国会に「災害救助法(救助法)」「災害対策基本法(基本法)」の改正法案を提出する。救助法では、在宅で避難生活を送る高齢者などへの支援を実施するため、福祉的な支援にかかる費用を国が負担することなどを盛り込んだほか、基本法では、地方自治体に保存食や簡易トイレといった災害用物資の備蓄状況の公表を義務づけ、内閣府に司令塔を担う次官級ポスト「防災監」を設置することなどを定めた。昨年1月の能登半島地震や同年9月の能登豪雨など災害関連死が問題となってきたことから、障がい者・高齢者を含むすべての人への支援体制の確立を目指す。

「在宅避難者」にも福祉支援サービス

 能登半島地震などこれまでの災害の教訓として、災害時に障がいや要介護状態など様々な理由で、避難所や2次避難所ではなく在宅で避難生活を送る高齢者などは把握されにくく、一部が災害関連死に至るなど、支援が受けられないことへの課題が指摘されてきた。

 法的にも、在宅で避難生活を送る人は救助法の対象外とされ、国の支援が受けられない。法改正により、介護福祉士や社会福祉士、理学療法士などによる災害派遣福祉チーム(DWAT)が、在宅避難者や車中泊の人などにも支援をしやすくなることが期待される。

必要な人に必要な食料・トイレを

 ほかにも、災害対応に詳しい有識者からは、自治体の財政状況により、要介護者や障がい者にも配慮した備蓄食・防災用品が確保されていないことへの指摘も行われてきた。

 このため、国は基本法改正により、地方自治体に保存食や簡易トイレなどの災害用物資の備蓄状況の公表を義務づけることとした。

 頻度は年1回とし、所定の項目ごとに個数などを公表する。障がい者や要介護者に配慮したトイレや、食べやすさに配慮したユニバーサルデザインフード認定の備蓄食など、実態に即した備蓄品が準備されることも期待される。
法案提出に先立って、内閣府は1月9日に全国都道府県・市町村の「災害用物資・機材等の備蓄状況に関する調査結果」(24年11月時点)を公表した。

 それによれば▽主食合計9280万食▽副食合計872万食▽乳児用粉・液体ミルク128万缶・本▽水合計2970万L▽暖房機器3.1万台▽冷房機器3.6万台▽携帯トイレ6570万回分▽設置型トイレ241万台▽簡易ベッド57.5万台▽大人用おむつ480万枚――など。特にトイレについては、防犯や衛生性の観点から気兼ねなく利用できるトイレカーやトイレコンテナなどが求められるが、全国で81台(設置型トイレの内数)にとどまる。内閣府では経済対策での新地方創成交付金で備蓄支援を行う。

 また、災害対応で人手不足や混乱が想定される自治体への支援の観点から、内閣府に次官級ポスト「防災監」を置き、自治体の要請がなくても物資などを届ける「プッシュ型支援」も基本法に規定する。

支援が必要な人とボランティアをつなぐ

 ほかにも、被災者のうち、高齢者や障がい者などが福祉支援を受けやすくするため、ボランティア団体などの登録制度を創設し、自治体との連携を促進する。

 具体的には、災害時にはボランティア団体側へ被災者に関する情報を提供することで連携をしやすくする。また、災害関連死の防止のため、在宅避難を続ける高齢者や障がい者などに社会福祉士による相談や、訪問リハビリなどを救助の種類に追加することとしている。

 また、能登半島地震の教訓から、水道管破損などに迅速に対応できるように、災害時には、水道復旧にあたる事業者が私有地に立ち入れるようにする。

26年度「防災庁」発足に向けて

 1月24日召集の通常国会の所信演説で、石破首相は「平時の備えにより被害の最小化を図るとともに、発生時にはスフィア基準を踏まえた環境を迅速に提供する必要があります」とするなど、防災減災に取り組む姿勢を明確にした。24年11月には内閣官房に防災庁設置準備室が開設されており、26年度の防災庁発足を目標とすることになる。
(シルバー産業新聞2025年2月10日号)

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