インタビュー・座談会
災害関連死を防ぐTKB~トイレ編~ トイレ整備は発生後数時間がカギ

災害発生後の避難生活で、被災者の命を守る「TKB」という考え方が注目されている。T(トイレ)、K(キッチン=食事)、B(ベッド=就寝環境)の略で、これらを迅速に整備することが災害関連死を防ぐ鍵となる。本特集では、各要素についての具体的な対策を3号にわたり解説する。今回は「T=トイレ」に焦点を当て、日本トイレ研究所の加藤篤氏の解説を交えながら、災害時のトイレ環境整備の課題と対策を探る。
1995年の阪神・淡路大震災では、断水等で使用できない水洗トイレに排泄物が蓄積して不衛生な状態になる「トイレパニック」が問題となった。しかし、東日本大震災や熊本地震、西日本豪雨などでもトイレパニックは繰り返され、トイレ環境の悪化が被災者の健康を脅かす事態となった。
当研究所が熊本地震の際に協力した調査では、地震発生後に最初にトイレに行きたくなった時間は「3時間以内」が39%、「4~6時間以内」が34%で、全体の7割以上が発災後6時間以内にトイレへ行きたいと感じていた。
当研究所が熊本地震の際に協力した調査では、地震発生後に最初にトイレに行きたくなった時間は「3時間以内」が39%、「4~6時間以内」が34%で、全体の7割以上が発災後6時間以内にトイレへ行きたいと感じていた。

Q「発災から何時間でトイレに行きたくなったか」
迅速に設置できる災害用トイレ
災害用トイレには▽携帯トイレ:断水や排水不可の際に便器に設置して使う便袋▽簡易トイレ:便座付きの小型トイレで、設置が容易▽仮設トイレ:行政や企業等が手配し、発災後数日で設置▽マンホールトイレ:下水道直結型や貯留型で、災害時に活用可能――がある。
時間経過に応じて利用できるトイレが異なり(図)、特に発災直後に活用できる携帯トイレや簡易トイレは事前の備蓄が重要となる。
能登半島地震でも発災直後は、トイレパニックがあったものの(写真1)、携帯・簡易トイレ等の活用により使い慣れたトイレや屋内トイレの環境が整備された(写真2)。
発災後しばらくの期間、自分たちだけでトイレ環境を維持することが必要となる。
時間経過に応じて利用できるトイレが異なり(図)、特に発災直後に活用できる携帯トイレや簡易トイレは事前の備蓄が重要となる。
能登半島地震でも発災直後は、トイレパニックがあったものの(写真1)、携帯・簡易トイレ等の活用により使い慣れたトイレや屋内トイレの環境が整備された(写真2)。
発災後しばらくの期間、自分たちだけでトイレ環境を維持することが必要となる。

(写真1)能登半島地震で断水で流せないトイレに排泄物が溜まり使用できない(出典:日本トイレ研究所)

(写真2)能登半島地震での災害用トイレの使用例(出典:日本トイレ研究所)
「日常のトイレ環境」に近づける工夫
災害時のトイレ対策では①衛生状態を保ち集団感染を防ぐ②トイレ我慢を防ぎ、災害関連死のリスクを軽減③安心して排泄できる環境――が重要。
屋内・屋外で共通するのは「誰が・どの頻度で掃除をするか」だ。掃除方法をあらかじめ考えるほか、手洗い用タンクやせっけん、手指消毒、トイレ用スリッパなど、病原菌やウイルスを広げないための準備も確認してほしい。
マンホールトイレや仮設トイレは屋外設置がほとんどで、特に仮設トイレは和式タイプも多い。トイレ入口に段差や階段があると雨で滑りやすくなり転倒リスクも高まる。不衛生でニオイがあるトイレは誰もが利用を控える。
しかも、トイレ回数を減らすために水分摂取を控えると▽血圧上昇▽脱水▽免疫力低下――などを引き起こし、心筋梗塞、脳梗塞、肺塞栓、誤嚥性肺炎などに繋がる。
我慢せずにトイレを利用してもらうためには、「日常」を再現することが重要だ。災害時も「いかに日常のトイレに近づけるか」を意識すると、必要な備品や支援がわかるだろう。また、男女別で明るく清潔なトイレの設置も第一に考えていただきたい。
屋内・屋外で共通するのは「誰が・どの頻度で掃除をするか」だ。掃除方法をあらかじめ考えるほか、手洗い用タンクやせっけん、手指消毒、トイレ用スリッパなど、病原菌やウイルスを広げないための準備も確認してほしい。
マンホールトイレや仮設トイレは屋外設置がほとんどで、特に仮設トイレは和式タイプも多い。トイレ入口に段差や階段があると雨で滑りやすくなり転倒リスクも高まる。不衛生でニオイがあるトイレは誰もが利用を控える。
しかも、トイレ回数を減らすために水分摂取を控えると▽血圧上昇▽脱水▽免疫力低下――などを引き起こし、心筋梗塞、脳梗塞、肺塞栓、誤嚥性肺炎などに繋がる。
我慢せずにトイレを利用してもらうためには、「日常」を再現することが重要だ。災害時も「いかに日常のトイレに近づけるか」を意識すると、必要な備品や支援がわかるだろう。また、男女別で明るく清潔なトイレの設置も第一に考えていただきたい。

トイレ充足度のイメージ
BCP・防災計画へのトイレ対策の明記
トイレ支援を円滑に進めるには、事前の計画が不可欠。施設のBCP(業務継続計画)や防災マニュアルには、▽トイレ衛生の管理責任者の設置▽携帯トイレ・簡易トイレの備蓄数▽設置場所と手順の策定▽使用方法の周知▽排泄物の回収・処理方法の確認▽建物の給排水システムの把握――などを明記してほしい。
防災訓練では、停電時の照明確保、手すりや段差の有無、手洗い場への動線、消毒セットの準備状況などを、発災後スムーズに動けるように日ごろから確認いただきたい。
当研究所では災害時のトイレ支援で求められることや具体的な対策を学べる「災害時トイレ衛生管理講習会」について、5月に基礎編、12月に計画編を実施している。両講座受講者を「防災トイレアドバイザー」として認定する。
高齢者とそのケアをする職員の命を守るためにも、施設での災害時のトイレ支援をしっかり考えていただきたい。
(シルバー産業新聞2025年4月10日号)
防災訓練では、停電時の照明確保、手すりや段差の有無、手洗い場への動線、消毒セットの準備状況などを、発災後スムーズに動けるように日ごろから確認いただきたい。
当研究所では災害時のトイレ支援で求められることや具体的な対策を学べる「災害時トイレ衛生管理講習会」について、5月に基礎編、12月に計画編を実施している。両講座受講者を「防災トイレアドバイザー」として認定する。
高齢者とそのケアをする職員の命を守るためにも、施設での災害時のトイレ支援をしっかり考えていただきたい。
(シルバー産業新聞2025年4月10日号)