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岐阜県「20分未満訪問介護」を普及・促進 実施事業所25年度に6割へ

岐阜県「20分未満訪問介護」を普及・促進 実施事業所25年度に6割へ

 7県に囲まれ、全国で7番目に面積が広い岐阜県。独居高齢者の増加が今後予測される中、在宅生活の限界点を高める居宅サービスの充実は重点課題の一つだ。その中心が「短時間巡回型訪問介護サービス」。利用者の自立支援、訪問介護の業務効率化、ケアマネジャーのアセスメント力向上、市町村の給付適正化の「4者良し」をめざす。

 岐阜県の65歳以上人口は2020時点で約19万人、高齢化率は30.4%。高齢者数は40年代にピークを迎えるが、高齢化率はその後も伸び50年には40%に達すると推計されている。

 これに伴い、高齢者単独世帯(独居高齢者)の増加が顕著に。30~35年の間に夫婦のみ世帯数を抜き、15年の7.3万世帯から35年の10.5万世帯へ、20年で1.5倍近くに増える見込みだ(グラフ)。
 こうした独居高齢者の在宅生活継続へ、居宅サービスの充実は同県第9期介護保険事業支援計画(岐阜県高齢者安心計画)上でも重要な施策の一つ。健康福祉部高齢福祉課の髙田昌司係長は「一方で訪問介護の担い手不足も深刻。効率的なサービス提供の手法を県・市町村が示し、経営支援をしていかなければならない」と話す。

 具体的には「短時間巡回型訪問介護サービス」の拡充がポイント。介護報酬上は「身体介護20分未満」がこれにあたる。「長時間の訪問介護は、必要な支援を済ませても時間が余ってしまうことや、予定外の頼み事も受けてしまうこともあると聞く」と髙田氏。短時間・頻回訪問とすることで事業所の業務効率化に加え、生活リズムに合わせ、排泄介助を中心に健康観察や見守り、水分摂取、服薬確認などを必要なタイミングで来てくれるサービスだと、利用者の認識の変化も期待する。
髙田昌司係長

髙田昌司係長

経営ノウハウも指導

 県では18年度より、市町村に対する短時間訪問介護の導入推進や、ケアマネジャーとの連携強化をはかる「訪問介護強化事業」を展開。①介護力向上コンサルテーション事業②新規導入事業所支援事業③圏域会議――を柱とする。利用者にとっては必要最小限のケアによる自立支援、市町村にとっては過不足のないサービス提供を通じた給付適正化を、それぞれ事業効果に見込む。

 ①のコンサルテーションは、短時間訪問介護の実績・ノウハウを有する専門職を市町村へ派遣。サービス利用状況のモニタリング・評価を行いつつ、導入促進を支援する。「短時間のケアでやるべきこと、見るべきことは何か。どのように1日・1週間のプランを組み、複数の利用者をどう効率的に回るか。運営手法も会得できる内容を重視した」(髙田氏)。現在は、岐阜市の新生メディカルがコンサルテーションを主に担当。同社は定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスにいち早く着手するなど、短時間・頻回訪問を積極的に展開してきた。21年度は美濃市、22年度は恵那市、23年度は川辺町でそれぞれ実施。今年度は現在募集しているところだ。

 また②の支援事業は、①の対象市町村に関わらず、希望する事業所へ直接的にコンサルテーションを行うものだが、まだ実績はないとのこと。「①の事業の延長で、対象市町村を通じて支援しているケースもあると聞く」(同氏)。

ケアマネが普及のカギ

 ③の圏域会議は、県と市町村、地域包括支援センター、訪問介護事業所、ケアマネジャーが集まり、短時間訪問介護の普及に向けた事例共有や課題抽出など行う場。県内5圏域(岐阜・西濃・中濃・東濃・飛騨)でそれぞれ年1回行う。

 意見でよく出てくるのが移動コストの問題。「サービスの中身は理解いただくが、移動距離が長い場合、同一利用者宅に1日数回訪問するのがかえって非効率になるとの指摘。ここを解消できるコンサルテーションが求められる。圏域差も大きいと感じる」と髙田氏は説明する。現在、取組みが比較的進んでいる中濃圏域の関市と可児市、東濃圏域の恵那市は地理的条件や人口規模が事業にマッチしている可能性があると、今後の分析課題に置く。

 髙田氏は、短時間訪問介護は何よりケアマネジャーの理解なくしては進まないと強調する。「事業者がメリットを感じても、ケアプランに入らなければ意味がない。短時間訪問介護を入れることで通所介護との組合せなど、居宅サービス全体を見直すきっかけにもなるだろう」。

 あわせて、ケアマネジャー自身の資質向上の側面も大きいと同氏。「サービスを継続することは、利用者の生活リズムの把握につながる。いつ排泄介助や服薬支援の訪問を入れるべきか、アセスメント力を高める上でも価値の高いサービスになり得る」と説明する。22年度時点で、県内訪問介護事業所のうち身体介護20分未満を提供している割合は45.8%。来年度にはこれを60%へ引上げる。

 また、同事業支援計画では、訪問介護利用者数の見込量は26年度1万7079人、30年度1万9791人。21年度(実績値)からそれぞれ16.4%増、34.9%増となっている。これを回数ベースで見ると、26年度68.0万回(39.1%増)、30年度72.1万回(47.6%増)と、利用者数の伸びと比べて大きい。短時間訪問介護の普及促進による頻回利用の増加を含んでいると考えられる。

 なお、国の介護保険事業状況報告(24年6月審査分)によると、岐阜県の要介護認定者のうち訪問介護を利用している割合は14.5%で、ほぼ全国平均(14.8%)並み。市町村別では岐阜市が18.2%で最も高く、岐南町17.3%、多治見市16.8%と続く。
(シルバー産業新聞2024年11月10日号)

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