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感染予防は「正しい対策を知り、正しく恐れる」 墨田区訪問介護事業者連絡会

感染予防は「正しい対策を知り、正しく恐れる」 墨田区訪問介護事業者連絡会

 訪問介護は利用者に身近に接する職種。感染対策マニュアルはあっても、現場では常に不安は付きまとうという。こうした思いを受けて、墨田区訪問介護事業者連絡会(小谷庸夫代表、会員数は約30事業者)は、「新型コロナウイルス感染拡大予防で在宅訪問する際の気をつけていること」として、対面での研修会を開いた。「正しい対策を知り、正しく恐れる!」だと話す、代表の小谷庸夫さんに話を聞いた。

墨田区の訪問介護事業者らが対面で研修会

 ――研修会の開催経緯は。
 墨田区の議員からヒアリングを受けた時に、コロナの感染予防ガイドラインを作成できないかとお伝えした。その後、保健所の所長、西塚至さんを呼んでくれて、話を聞く機会を得た。そして、訪問介護員に研修をすることになった。西塚さんには、ヘルパーさんに安心して働いてもらえるよう、ぜひ実現して欲しい、と言って頂いた。当日も挨拶して頂き、講師は、東京都向島歯科医師会副会長の大久保勝久さん、東京都看護協会危機管理センターアドバイザーの堀成美さんにお願いすることができた。

 ――訪問介護で恐れを感じる場面とは。
 訪問介護は、食事や入浴介助、排泄介助など密着しないとできない仕事なので、ソーシャルディスタンスをとるのも難しい。利用者の中にはマスクが着けられない人もいるし、話しかけないとできない。自分の日常生活は、外食なども一切していないし、とくかく自分が感染することで利用者にうつしてしまうことが怖い。

 3月に知り合いのケースを聞いて不安になった。利用者が37.5度の熱を出し、訪問介護に行くのを迷い、ケアマネに相談したところ、家族から事業所を変えると言われた。仕方なく直行、直帰で訪問したが、結果は陰性だったものの、自分の事業所でも起きる可能性はあると感じ怖かった。

 ――マスクの着用について。
 堀先生は、講義中マスクを着けて話されたが、始める前に、こちらが準備したビニールシートを外してください、と言った。マスクをして1m以上離れていれば大丈夫だからと言ったので、それが安心材料になった。マスク着用とソーシャルディスタンスが有効なのだと実感できた。研修会で学んだ重要ポイントを挙げると、次のようになる。

 マスク着用については、介護職と利用者双方ですることが望ましい。ソーシャルディスタンスを取り、1m離れていれば、仮に利用者がマスクを着用できなくても、基本は大丈夫。堀先生は、利用者がマスクを着けられない場合は、顔と顔を近づけないことや、正面に立つことは避けて、横や後ろから介助することを奨める。それだけでも感染を防ぐことができると話してくれた。もともと高齢者は大声を出さないので、過剰に恐れることはないと私も後から気づいた。

 また、マスクを外してホっとしている瞬間も注意が必要で、休憩や食事の時もなるべく会話は控えることが大事。マスクを外す時には、手指の消毒をしてから外すことや、顔などを触ることを警戒して、手指消毒を先にしておくことが大事なことも分かった。

 ――入浴介助の場合は。
 入浴介助の場合、紙のマスクだと濡れてしまうので、布マスクなど濡れてもよいものを使う。講師の堀先生は、口元をプラスチックフィルムで覆うマウスシールドも有効だと説明してくれた。

 ――感染疑いのある人を介護する場合は。
 感染しているかどうか疑いがある人を介助する場合に備えて、研修会では防護服を着ての実演が行われた。防護服や手袋の着脱については、まず、手指をこまめにアルコール消毒することが大事で、手袋は乱暴に脱がず、静かに外すこともポイントとなる。私の訪問介護事業所「ヘルパーステーション和翔苑」では、7人のヘルパーが約20人の利用者を日々支えているが、幸い、防護服を付けたケースは今のところ一つもない。

 ――研修を終えて。
 研修前は、極端な話、人とすれ違うだけでも、また電車の密は怖いとか、買物中も人が近づいてくるだけで不安になった時期もあった。4月には都立墨東病院でクラスターが発生したり、相撲部屋が多い墨田区ではお相撲さんが一人感染で死亡していた。

 しかし、墨東病院は感染症専用の病棟から感染したわけではなかったので、予防対策がしっかりしている場所からは発生していないことが分かった。また、相撲部屋で死亡者が出た後、保健所は一丸となって対策に取り組んだ。コロナ禍で開催された7月場所は、厳格な感染症対策が施され、その感染対策を支えたのも保健所だったことも知った。特に、普段接しない保健所の方と顔の見える関係ができたことは大きかった。

 幸い墨田区のデイサービスでは陽性者は発生したが、クラスターは発生していない。訪問やデイサービスの利用控えも比較的少なかった。今後も、漠然と不安にならず、正しく恐れて現場を支えていきたい。

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