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大阪府高石市「なないろ」 3人に1人が主任ケアマネ

大阪府高石市「なないろ」 3人に1人が主任ケアマネ

 サービス事業所を併設しない単独型居宅介護支援事業所「高石介護相談所なないろ」(利用者数533人、ケアマネジャー13人うち主任ケアマネ4人)、「なないろぷらす」(利用者数390人、ケアマネジャー10人うち主任ケアマネ4人)、「なないろらいと」(利用者数390人、ケアマネジャー14人うち主任ケアマネ5人)を運営する「なないろ」(大阪府高石市、渡部功司社長)は、2013年5月にケアマネジャー2人で開設、直近では36人が所属する大規模な事業所となった。ケアマネジャー不足が指摘される中で同事業所に入職者が増える理由は、単独型の特徴である公正中立に専門性の高い仕事ができる環境づくりと、専門性に似合った正当な給与評価を徹底したこと。渡部社長は「利用者へのより良いサービス提供は当然で、ケアマネジャーも働きたい職場を目指した」という。利用者・ケアマネジャーを大切にする事業所経営について聞いた。

 介護保険での事業収入の大部分は介護報酬が占めるため、その最大化によって経営を安定させ、ケアマネジャーの処遇改善に取り組むことが欠かせない。

 同社の事業所では▽基本報酬はICT活用や業務補助者を配置することでケアマネジャー1人あたり44件まで逓減制なく担当できる「居宅介護支援費Ⅱ」を算定▽各種加算の徹底した算定――など取得可能な介護報酬を最大化した。

 たとえば加算については、全国的にも算定率の低い特定事業所加算(Ⅰ)(505単位、全国事業所ベースの算定率1.3%=第220回介護給付費分科会資料より)や、特定事業所医療介護連携加算(125単位、1.1%)、ターミナルケアマネジメント加算(400単位、1.7%)などを取得している。

利用者負担なくサービスの質向上と処遇改善

 積極的な加算の算定は、一方で利用者負担の増大に繋がるため、敬遠する事業所も多い。しかし、居宅介護支援については保険給付が10割で、利用者負担はないため、基本報酬や加算を算定しながら、より良いサービス提供に取組みやすいともいえる。

 ケアプラン有料化の議論も盛んな中、国は24年度から3年間についても利用者負担なしを継続することを決めた。渡部氏は「3年後の27年改定では、ケアプラン有料化を含めた議論に結論を示すとされている(経済財政諮問会議/新経済.財政再生計画改革工程表2023)。仮に27年度に有料化されるのであれば、利用者負担のない形で質の高いケアプラン作成に取り組む最後のチャンスかもしれない。国の考える良いサービスの評価は、加算の算定要件に込められていると考える。高みを目指していくことで、良いケアプランを提供することができるようになる」と話す。

入職者を引き付ける「公正中立」「専門性」「給与水準」

 全国的にケアマネジャー不足が叫ばれる中、同事業所は専門職としてやりがいを感じたケアマネジャーの口コミで、主任ケアマネジャーや意欲の高いケアマネジャーの入職が続いている。

 渡部氏は「ケアマネジャーのやりがいに繋がっていると感じるのは、単独型居宅介護事業所のため、利用者の意向を汲み、自身の専門性を活かしたケアプランの提案ができることのようだ」と話す。

 介護サービス情報公表システムによれば、同法人運営3事業所の「半年間に作成したケアプランの上位3事業所の最上位割合」は▽訪問介護(5.0~11.4%)、通所介護(7.6~13.0%)、地域密着型通所介護(17.5~25.1%)、福祉用具貸与(10.8~15.0%)――と分散している。

 専門性に見合った給与水準の実現にも取り組んでいる。渡部氏は「採用面接時にケアプラン30件目安で担当をお願いしている。それ以上の担当件数についてはその時々のライフステージに合った働き方で選んでもらえるようにしている」と話す。

 結果として平均担当件数は40件程度で推移。44件を担当するケアマネジャーも8割近くおり、自身の判断で専門職として満足のいく給与水準を狙っていくエンゲージメント(事業所と職員の成長の方向性が同じで、お互いに貢献しあう関係)の高い職場を作り上げている。

24年改定での国の期待に応えたい

 渡部氏は「24年介護報酬改定では、基本報酬の引き上げ、逓減制を受けない担当件数の5件の上乗せや、特定事業所加算の上位の加算算定の取得のしやすさ、予防プランの受けやすさなど国の期待する居宅介護支援の在り方が示された。21年改定により収支差率の改善が言われているが、24年はしっかり取り組めばより収支差率を高めることができ、ケアマネジャーの専門性に処遇改善で報いることができそうだ。利用者からも、ケアマネジャーからも選ばれる事業所をこれからも目指していきたい」と語った。
(シルバー産業新聞2024年3月10日号)

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