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ケアマネアンケート 24年介護報酬改定で「担当件数増えた」28%「変化なし」71%

ケアマネアンケート 24年介護報酬改定で「担当件数増えた」28%「変化なし」71%

 2024年度の介護報酬改定から半年が経過した。居宅介護支援では、逓減制の緩和や介護予防支援の指定対象拡大、要支援者を3分の1カウントにするなど、今後のケアマネジャーの働き方に影響を与える改正が行われた。そこで、本紙では9月~10月にかけて全国のケアマネジャーを対象に「居宅介護支援の24年度介護報酬改定による変化」についてアンケートを実施。68件の回答が得られた。「逓減制の緩和によるケアプラン担当件数の変化」を尋ねたところ、「担当件数が増えた」と答えたケアマネジャーは28%、「変化なし」は71%と、多くのケアマネジャーが担当件数に変化は生じていないと回答した。また「介護予防支援の指定対象拡大や、要支援者の3分の1カウントによる予防プランの担当件数の変化」については、79%が「変化なし」と回答。要支援者を担当する余裕はないという意見や、報酬に見合わない業務負担増を懸念する声が多く寄せられた。

Q1.逓減制の緩和によるケアプランの担当件数の変化について

 24年度の介護報酬改定では、居宅介護支援の基本報酬の逓減制が39件から44件に緩和。さらにケアプランデータ連携システムを活用し、事務職員を配置している場合は49件まで上限が緩和される。

 また、介護予防支援の指定対象を、居宅介護支援事業所にも拡大。これまで2分の1でカウントしていた要支援者の取扱件数を3分の1に緩和した。

 アンケートでは、まず、逓減制の緩和によって自身のケアプラン担当件数が変化したかを尋ねた。その結果、「担当件数が増えた」と答えたケアマネジャーは28%、「変化なし」は71%と、7割以上のケアマネジャーが担当件数に変化はなかったと回答した。

 自由記述で逓減制の緩和に対する考えを聞いたところ、ケアの質低下を懸念する意見が多くみられた。「担当人数が増えると、ケアマネジメントの質を保つ自信はない」(大阪府、女性)、「今担当しているだけでも、いっぱいいっぱい。利用者一人ひとりに対する熱量や質を落としたくないが、やむを得なくなってしまうのではないか」(静岡県、女性)などの声が上げられた。

 また、ケアマネの業務負担増を危惧する意見として「ケアマネが不足していて担当を多く持つ必要があるのは分かるが、その分負担が大きくなるのが課題」(和歌山県、男性)や、「件数増加に伴って必然的に定期訪問も増え、ケアマネの負担も大きくなる」(東京都、男性)などの声が寄せられた。

 さらに、「緩和になったとはいえ、事業所が体制を整えてもらわないと進まないと思う」(長崎県、女性)、「人数が多くなれば、自分の仕事が煩雑になりやすい。同等レベルの質を担保するためには、ICT、給与面など環境を含めた整備が必要と考える」(静岡県、女性)など、事業所のICT機器等の環境整備を求める意見も目立った。

 この他に、「現状に見合った配慮ではないと思うので、これまでどおりの件数でいる」(東京都、女性)、「現場ケアマネの意見も聞かずに勝手に数だけ増やしているとしか思えず、対応する気にもならない」(神奈川県、女性)、「緩和されても書類に追われる日々は変わらない。その時の状況次第で受け入れるので、特に変わりない」(大阪府、女性)など、自ら利用者の受入れを制限していることを明かす意見も見られた。

 「担当件数が増えた」と答えた人の中でも、「緩和により担当数が増えたことで忙しくなった。課題を抱えた利用者に対応することが多くなり、記録や計画書作成まで時間外にせざるを得ない。報酬が増えても、時間外手当により、事業経営としては変化がないように思う」(和歌山県、女性)や、「ケアマネの業務量が多く、請求業務などの事務職がいない事業所は、逓減制緩和されても担当できる件数に限界がある現状」(東京都、女性)など、担当件数が増えたとはいえ、業務負担増により事業所にとってプラスになるとは限らないという実態が窺えた。

Q2.指定対象拡大などによる予防プランの担当件数の変化について

 次に、介護予防支援の指定対象拡大や要支援者の3分の1カウントによる予防プランの担当件数の変化ついても質問。その結果「変化なし」が79%、「担当件数が増えた」が21%と、こちらも担当件数に増減がないケアマネが多いことが分かった。

 自由記述で目立ったのは、「要支援者こそ安定しているようで変化があり、モニタリング訪問でも訴えや話の内容が濃く、マネジメントの難しさがある」(東京都、女性)や、「要支援者も要介護者も同じ支援が必要。メンタルの疾患は特に大変。同額の報酬を望む」(大阪府、女性)といった、予防プラン作成の業務量とそれに対する報酬が見合わず、数を増やせないという意見。

 一方、「指定を受けることで、ケアマネ事業所は要支援から要介護への移行時に同一ケアマネによる継続的支援を提供でき、利用者は契約し直す手間なく質の高いケアを受けることができる」(大阪府、男性)といった、利用者にとってはよい改正だと評価する意見もあった。

 今回のアンケートで、逓減制は緩和されたが、現状の業務量や報酬との釣り合いが取れていないことから、担当件数は変わらないケアマネがほとんどであること、「増えた」と回答したケアマネも業務量増の実態や、ケアの質低下への不安を抱えていることなどが分かった。

 アンケートは9月から10月にかけて行い、全国のケアマネジャー68人から回答を得た。
 ※アンケートご協力ありがとうございました。
(シルバー産業新聞2024年11月10日号)

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