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黒滝村社協 限られた地域資源活かした通いの場

黒滝村社協 限られた地域資源活かした通いの場

 奈良県黒滝村は、かつて人口3000人ほどが住む地域であったが、主要産業の林業の衰退とともに人口流出が続き、2023年10月時点では約600人が生活する。高齢者数は315人で高齢化率53.8%と高齢化が進むが、年齢調整後の要介護認定率は約13%と奈良県で一番低く、通いの場など地域づくりに力を入れる。

 村での障がい、介護保険行政などは村役場の保健福祉課で担っており、社会福祉協議会が居宅介護支援、訪問・通所介護サービスを行い、村からの委託を受け地域包括支援センターの運用を行う。要介護・要支援者が併せて約60人ほどおり、約半数が社協の訪問・通所介護サービスを利用する。その他の人は、入院中であったり村外の施設へ入居しているが、約10人ほどはサービスから卒業したり、利用せずに生活している。

自助・互助の重要性を伝える

 同村は、第7期の介護保険料7700円と県内1位であり、全国でも高水準。これを契機に介護予防に本格的に取り組み、20年に県主催の地域マネジメント研修を受講。その中で、介護保険の現状と課題を住民と共有した方がよいとの指摘があり、区長会の場などで啓発を行い地域全体で意識を高めていった。

 当時は、何かあれば行政が対応してくれるだろうという住民の意識が根強くあった。そこで、住民に地域包括ケアシステムを運用するポイントとして、各人が自立した生活を行い、自ら健康を維持する自助、近隣住民や地域がお互いに助け合う互助の重要性を伝えた。また、自分たちが住む山間部では、共助、公助では全てを補いきれないことも知ってもらった。

地域での繋がりを取り戻す支援

 21年に県の人材育成プログラムを受講し、近隣住民や民生委員が互いに顔の見える関係を築く中、介護サービスを利用する人が地域に戻り、畑仕事やグラウンドゴルフへの参加など、これまでの繋がりを取り戻し、元ある暮らしに戻ってもらうことを目標にした。地域資源を再確認し、今あるものを活用し新しい機能を付加・開発していくことを目指した。

 ちょうど取り組みを始めた時期の診療所医師が在宅医療に力を入れており、県南部の医療を供給する南和広域医療企業団から理学療法士の派遣につき交渉を進めた。

 地域リハビリテーション活動支援事業として、理学療法士よりケアマネ・介護職への技術的指導を実施し、通所・訪問介護での環境調整などにも取り組んだ。また、要介護の状態の原因として多かった骨折、転倒に対しては、通いの場で転倒対策の啓発、周知を行った。さらに、通所介護の場において自宅でもできる体操などを指導。利用者の中には、家事などの普段の生活を取り戻し、介護サービスから卒業し、今まで行っていた車の運転や畑仕事、グラウンドゴルフを再開した人もいる。

通いの場で保健師が手厚い指導

 現在、村内の集落12カ所のうち8カ所で通いの場を運営。

 役場の保健師、地域包括支援センターの職員も口腔・栄養・運動などについて指導する。立ち上げ時は、ほぼ毎週、その後も3カ月に1回程度は指導を継続する。

 女性の痩せへの対策や、口腔衛生に関して歯科診療所の予約やバスなど交通手段の調整も行う。

 自宅での看取りを希望する場合は、社協と診療所が連携し、訪問看護を行い対応する。老々介護で90代同士の夫婦がお互いに介護を担っているケースなど、現実的に難しい場合もあるが、最期を施設で迎えるとしても限界まで在宅でケアをする体制を整備している。

 「へき地であり地域資源の限られる中、今あるものを活用し元気な村にできるよう『チーム黒滝』で取り組んで行きたい」と役場・社協のスタッフは意気込む。
(シルバー産業新聞2023年12月10日号)

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