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奈良県の介護保険 働きやすさの見える化、地域包括ケアを推進
2022年10月時点の奈良県の人口は約130.6万人、高齢者数は約42.3万人で高齢化率32.4%と全国平均を超える速さで高齢化が進む。高齢化率は、最高の御杖村は61.8%、最低の香芝市では24.6%と2.5倍の開きがある。南部・東部の中山間地域を中心に地域包括ケアシステムの構築と人材確保に力を注ぐ。
介護保険事業支援計画では、県を奈良、西和、東和、中和、南和の5つの圏域に分け整備を行うが、介護資源は都市部の県北部・西部に集中しており、南部・東部の中山間地域では少ない。南和圏域では受けられるサービスに地域差が生じる可能性があるなど課題が残されている。これらの地域では、一般の事業者が採算を取ることが難しく、各町村の社会福祉協議会が地域の介護資源を支えている。
将来を見据え中山間地域での地域包括ケアは必須
「サービスの不足が懸念されるが、中山間部であっても自分たちで必要な介護サービスは提供できていると、保険者から不足を訴える声はそこまで挙がらない。地域で住民を支えているという意識の表れだろう」と介護保険課中屋敷晃弘課長は語る。
中山間部では、お互いが顔見知りであることが多く、町村全体が助け合いの精神で介護サービスが成り立っている。また、看護師や保健師など専門職を上手く活用して自治体の実情にあった取り組みを行っている。「現在の体制を5年、10年後も維持できるかは難しい。県が率先して仕組み作りに取り組んでいる」と地域包括ケア推進室丸岡嘉人室長は語る。
現状は、役場が住民と近い関係にあり、「あの家庭の息子が最近出てこない。引きこもり状態になっているのでは」と職員が困り事に気づくケースもある。保健師が地域で健康の啓発や病院の手配を行い、近隣住民が通院の手助けをすることなどで維持できている。「人助けで成り立っている部分をシステム化していきたい」と丸岡室長は意気込む。
南部では小規模自治体が多く、役場に保健師はいるが精神保健福祉士などの専門職が不在の町村が多い。高齢の両親がいる家庭の息子が引きこもり状態にあるなど、精神疾患に関連する困難事例も見られる。それらに対応するため、県のOBの保健師と精神保健福祉士、地区を管轄する吉野保健所の保健師の3人で広域カンファレンス支援チームを編成し、町村の困りごとや地域課題を洗い出し解決に向けた支援を行っている。
中山間部では、お互いが顔見知りであることが多く、町村全体が助け合いの精神で介護サービスが成り立っている。また、看護師や保健師など専門職を上手く活用して自治体の実情にあった取り組みを行っている。「現在の体制を5年、10年後も維持できるかは難しい。県が率先して仕組み作りに取り組んでいる」と地域包括ケア推進室丸岡嘉人室長は語る。
現状は、役場が住民と近い関係にあり、「あの家庭の息子が最近出てこない。引きこもり状態になっているのでは」と職員が困り事に気づくケースもある。保健師が地域で健康の啓発や病院の手配を行い、近隣住民が通院の手助けをすることなどで維持できている。「人助けで成り立っている部分をシステム化していきたい」と丸岡室長は意気込む。
南部では小規模自治体が多く、役場に保健師はいるが精神保健福祉士などの専門職が不在の町村が多い。高齢の両親がいる家庭の息子が引きこもり状態にあるなど、精神疾患に関連する困難事例も見られる。それらに対応するため、県のOBの保健師と精神保健福祉士、地区を管轄する吉野保健所の保健師の3人で広域カンファレンス支援チームを編成し、町村の困りごとや地域課題を洗い出し解決に向けた支援を行っている。
施設サービスでは入所率が減少傾向
特養や老健などの施設サービスに関しては、県全体を一体とした広域施設として整備を進めていることもあり、南部では数が少ない。「今後は、町村がニーズに合わせて(看護)小規模多機能型居宅介護事業所等を整備し、充足に向けて対応していく予定」と中屋敷課長は見通しを語る。県内の特養の入所率は90%程度で、待機者数は厚生労働省のデータで約2000人とされるが、実際は、空室が出たと連絡しても、立地や他に希望の施設があるなどの理由で見送られることが多いため、実質的な待機者はあまりいないと分析。また、県内の老健の入居所率は80%程度であり、1000床ほどが空床となっている。
こういった状況から、現在開催している次期9期介護保険事業支援計画の策定委員会では、施設入所率が8割から9割という状況であり、老健では赤字の施設も増加しているため、入所者不足の中でも施設を整備していくことに疑問の声も挙げられている。
「現時点ではニーズに対して充足しているとも言えるが、高齢化がさらに進む2040年を見据えるとまだ不足しており、整備を進める必要があると考えている」と中屋敷課長は語る。
こういった状況から、現在開催している次期9期介護保険事業支援計画の策定委員会では、施設入所率が8割から9割という状況であり、老健では赤字の施設も増加しているため、入所者不足の中でも施設を整備していくことに疑問の声も挙げられている。
「現時点ではニーズに対して充足しているとも言えるが、高齢化がさらに進む2040年を見据えるとまだ不足しており、整備を進める必要があると考えている」と中屋敷課長は語る。
認証制度で働きやすさを見える化
介護人材に関しては、25年に県内で訪問系サービスを中心におよそ3000人が不足する見込み。
福祉・介護人材確保に向けた取り組み方針の3つの柱として▽参入促進▽離職防止・定着支援▽資質向上――を打ち立てており、一人でも多くの人に福祉・介護の仕事を選んでもらうために、YouTubeやSNSを活用した情報発信を進めている。
16年からは奈良県福祉・介護事業所認証制度を開始。働き方や給与、研修体制、地域貢献やサービスの質向上など細かな評価項目をクリアした場合、知事による認証事業所として県のホームページで公表している。22年度末時点で、介護サービスは県内3003事業所のうち370件が認証。「働く環境が整備されている点を見える化し、職員の採用などに役立ててもらうことがねらい」と長寿・福祉人材確保対策課の島岡義典課長は説明する。
これから認証取得を目指す場合にはチャレンジ事業所として位置付け、個別訪問・支援を行っており現時点で19法人が対象になっている。経営面を含め職場改善に向けた知識を得てもらえるよう無料でコンサルタントを派遣する。「すでに認証を受けている事業所も対象に含め、人材育成や介護ロボット・ICT活用など最新の情報を盛り込んだ無料セミナーを開催している。基準以上までレベルアップを目指している」と同課福井万美子課長補佐は意気込む。
加えて、認証事業所の若手職員が奈良県福祉・介護のお仕事PR隊として、県内の小・中学校の体験学習や大学生との交流を通して魅力を発信。「年齢が近いこともあり話がわかりやすかったという声が聞かれている」と島岡課長は振り返る。
福祉・介護人材確保に向けた取り組み方針の3つの柱として▽参入促進▽離職防止・定着支援▽資質向上――を打ち立てており、一人でも多くの人に福祉・介護の仕事を選んでもらうために、YouTubeやSNSを活用した情報発信を進めている。
16年からは奈良県福祉・介護事業所認証制度を開始。働き方や給与、研修体制、地域貢献やサービスの質向上など細かな評価項目をクリアした場合、知事による認証事業所として県のホームページで公表している。22年度末時点で、介護サービスは県内3003事業所のうち370件が認証。「働く環境が整備されている点を見える化し、職員の採用などに役立ててもらうことがねらい」と長寿・福祉人材確保対策課の島岡義典課長は説明する。
これから認証取得を目指す場合にはチャレンジ事業所として位置付け、個別訪問・支援を行っており現時点で19法人が対象になっている。経営面を含め職場改善に向けた知識を得てもらえるよう無料でコンサルタントを派遣する。「すでに認証を受けている事業所も対象に含め、人材育成や介護ロボット・ICT活用など最新の情報を盛り込んだ無料セミナーを開催している。基準以上までレベルアップを目指している」と同課福井万美子課長補佐は意気込む。
加えて、認証事業所の若手職員が奈良県福祉・介護のお仕事PR隊として、県内の小・中学校の体験学習や大学生との交流を通して魅力を発信。「年齢が近いこともあり話がわかりやすかったという声が聞かれている」と島岡課長は振り返る。
高い介護ロボット・ICT導入へのニーズ
介護ロボット・ICT活用に関しては、地域医療介護総合確保基金を利用した補助金制度を用意し、今年度はおよそ4100万円の予算に対し5倍を上回る申し込みがあった。また、導入支援と併せて、導入後に上手く運用できていないようなケースにも改善に向けたアドバイスを行う。
「介護サービスの安定的な供給は県の責任でもあるが、民間事業として運営されている側面も考慮しながらの支援を要する。課題である中山間地域でのサービス提供の維持や人材確保のためには、過疎地域の状況に合わせた対策が鍵となる」と中屋敷課長は総括した。
(シルバー産業新聞2023年12月10日号)
「介護サービスの安定的な供給は県の責任でもあるが、民間事業として運営されている側面も考慮しながらの支援を要する。課題である中山間地域でのサービス提供の維持や人材確保のためには、過疎地域の状況に合わせた対策が鍵となる」と中屋敷課長は総括した。
(シルバー産業新聞2023年12月10日号)