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佐賀県の介護保険 小学生から就職まで切れ目ない人材確保支援

佐賀県の介護保険 小学生から就職まで切れ目ない人材確保支援

 県の総人口は昨年10月時点で約79万4千人であり、65歳以上の高齢者人口は24万8800人、高齢化率は31.3%で全国でも中ほどに位置する。高齢者数は2025年ごろの約25万4600人をピークに、40年まで横ばいで推移し、その後、緩やかに減少すると見込まれる。75歳以上の後期高齢者人口についても35年の15万9200人まで増加した後、減少に転じる。一方、高齢化率は全国平均を上回るペースで上昇を続ける。

子どもが多い佐賀県

 県の人口構成として、子どもが多いことが特徴。15歳以下の年少人口は、沖縄、滋賀に続く全国3位、合計特殊出生率も全国7位と高い値を示し、九州の中でも福岡に次いで高齢化率が低い。「子育てし大県(たいけん)さが」をテーマに、出会いから結婚・出産・子育てまで切れ目なく支援する。「子どもたちが地元に残れる地域づくりが必要」と長寿社会課の今村一幸課長は語る。

 特に福岡に隣接した東部圏域では人口が微増または横ばい。「佐賀市内から特急に乗れば36分で福岡の博多に着くため利便性が高い。地元志向の強さも関係しているかもしれない」と木塚厚志副課長は分析する。

大人気の「キッザケアサガ」

 同県の面積は全国で6番目に小さい。山間部を含めて県全域から佐賀市内まで車で概ね1時間で移動でき、介護資源へのアクセスには恵まれているが、人材確保や働きやすい介護の職場作りが第9期でも最大の課題だ。

 県のアンケートで、介護職員を志した理由として多かったのが幼少期の介護職業体験だった。これを受け、人材確保の取り組みとして、21年より小・中学生向けの介護の仕事体験イベント「キッザケアサガ」を開始。県老施協、老健協、グループホーム協会などが実行委員会としてプログラムを考え、施設の介護福祉士、看護師、理学・作業療法士、管理栄養士、歯科衛生士がスタッフとして参加し、子どもたちがそれぞれの仕事を本格的に体験できる。

 無料で参加でき、参加賞としてオリジナルのエプロンやスクラブがもらえる。キッザマートという買い物コーナーが併設されており、仕事を体験した小・中学生は会場で使える専用通貨やQUOカードがもらえる。働いて給料をもらうことで、介護の仕事を楽しみながら学べる。

 このイベントは人気で、当初320人の定員で始まったが、昨年は定員500人に対し1600人以上の応募があった。今年は定員を1000人と倍に増やして実施する。

 「福祉系高校に進学する人もいるが、進路を決める一番のキーパーソンは保護者」と今村さん。県では、今年度より「SAGA介護ツアー」として親子で介護施設と福祉系高校を見学できるバスツアーを企画。併せて、就職直前の高校生、大学生に向けて、実際に介護現場で働く各校のOBとの意見交換の場を設ける事業も開始する。

 さらに、介護総合フェスとして、先進機器の展示や、直近ではハリー杉山さんなど有名人に自らの介護体験を話してもらい、介護のネガティブなイメージの払拭に取り組む。

 今年度、これらの介護人材育成に3600万円の予算を確保。「すぐに結果が出るものではないが、福祉系高校に進学した子どもたちの多くが介護職を選んでいると聞く。そのステージに応じた切れ目のない働きかけを続けたい」と今村さんは意気込む。

働きやすい職場へ予算1億5000万円

 CT・先進機器導入による職場環境整備に向けて、県では毎年、介護事業所から要望を聴取し、予算を確保している。「昨年度はそれでも採択漏れがあったので、今年度は通常分に加えて補正予算を積み増し、およそ1億5000万円の予算を確保した」と木塚さんは強調する。

 介護施設での見守り機器や移乗支援機器などの導入率は約半数程度。第9期計画の3年間で8割までの増加を目指す。

 「見守り機器は、複数台導入しても比較的価格が抑えられ、成果も見えやすく導入が進む。移乗支援機器は、大きな施設では導入例もあるが、小規模だと運用面でも難しい印象だ。小規模事業所でのテクノロジー導入推進も課題であり、補助金に加えてさらなる支援が必要」と木塚さんは分析する。

 介護現場の生産性向上や人材確保に向けたワンストップ窓口、介護生産性向上総合相談センターに関しては、来年度中の開設を目指す。老施協、老健協から、機器活用のノウハウを持つ人を推薦してもらい、求められる支援について議論を予定する。

 「センターは、今ある資源を活用したほうがよいと思っているが、これからの議論次第。常時相談できるスタッフや現物の展示が必で、実際に体験したいといった具体的な話がしたい」(今村さん)

県民の7人に1人がSAGATOCO

 県では、「さが健康維新県民運動」として住民の健康増進に取り組む。「高齢者になってから健康志向を掲げるのではなく、若いときからの取り組みが大切」と今村さん。「歩こう。佐賀県。」をキャッチフレーズに、県公式ウォーキングアプリ「SAGATOCO」を開発。これまで県の人口の7分の1に相当する11万7千ダウンロードを誇る。

 体重・血圧・消費カロリーなどの健康記録のほか、1日あたりの歩数や健診などイベントへの参加に応じてポイントがたまり、県内約500の協力店で様々なサービスを受けることができる。「佐賀駅前も車道を減らし歩道を広げた。昨年、佐賀市内にオープンした多目的イベント施設SAGAアリーナには大型イベント時の一般用駐車場を設けておらず、歩くことを促す意図がある」と木塚さんは説明する。

 県の22年度の要介護認定を受けていない高齢者の割合は全国10位。さらなる介護予防、重度化防止を目指し、通いの場の充実にも力を入れる。同年の週1回以上通いの場に参加した高齢者数1万1730人から、26年度には1万6410人への増加を目標に掲げる。

 「通いの場のメニューのマンネリ化が起こらないよう佐賀大学医学部と協力し、現場で使えるトレーニング動画の作成にも取り組んでいる。一方で、非参加者の発掘が課題。市町村と協力して、新規の参加を促すために通いの場の充実と健康維持を支援していきたい」と今村さんは意気込む。
(シルバー産業新聞2024年6月10日号)

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