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沖縄県の介護保険 効果的な通所C型・通いの場へ

沖縄県の介護保険 効果的な通所C型・通いの場へ

 沖縄県の人口は今年1月時点で約148万人、今年4月時点の65歳以上の高齢者人口は35万人であり、高齢化率は約23.6%となっている。全国の高齢化率が約29%であることと比較すると、約5%低い状況にある。また、県内の高齢者数の内訳として、前期高齢者が約18万人、75歳以上の後期高齢者が約16万7000人で、全国と比較しても若い世代が多いことが特徴だ。

 その要因の一つとして、39年連続で全国トップを誇る出生率の高さが挙げられる。県の昨年の出生率は1.6%で、全国平均の1.2%を大きく上回る。県内でも人口は減少しているが、その減少の程度は全国に比べて緩やかである。長期的な推計では、団塊ジュニア世代が65歳以上になる2040年には、県でも高齢化率が30%を超え、現在の全国平均に並ぶとされている。「昨年の自然増減率は▲0.17%で、全国の▲0.67%に対し、約4分の1に留まっている」と高齢者介護課主幹の平良龍さんは分析する。

 「出生率が高い一方で、子どもの貧困率の高さが指摘されており、県としても重点課題として取り組んでいる」と高齢者介護課班長の山城博康さんは状況を語る。

 そのため、今年度、組織改編を行い「こども未来部」を立ち上げ、子どもや若者に関する施策に力を入れている。

高齢化進展を視野に介護予防に注力

 県の高齢者保健福祉圏域は、沖縄本島の北部・中部・南部、離島の宮古・八重山の5圏域が設定されている。

 多くの離島を抱える県では、高齢化率の上位15位以内に8つの離島町村が含まれている。高齢化率1位は、県の西方に位置する離島の渡名喜村で40%。その他の離島でも多くが30%を超える状況だが、全国的には50%を超える自治体もある中で、現時点では比較的高齢化の進展が緩やかと言える。

 要介護認定者数は約6万1000人と増加傾向にある。この状況を受け、介護予防にさらに力を入れ、要支援者を元の生活に戻す「リエイブルメント」を目指し、今年度から通所C型と住民主体の「通いの場」のモデル事業を開始した。伴走支援により効果的な実施方法を具体的に指導し、好事例の横展開を図る。

 通所C型は、北中城村、西原町の2町村をモデル町村に選定し、通いの場に関しては、糸満市と久米島町を選定し、県からの支援が行われている。

 通所C型では、リハビリ専門職の介入が欠かせない。県では医療経済研究機構に委託し、大阪府寝屋川市および山口県防府市でモデル事業に携わったスタッフによる現地支援が行われ、リハビリ専門職に利用者に対する面談方法等の指導がされた。

 「これまでも通所C型は実施されていたが、さらに効果的な運営を目指していく。通いの場についても、移動手段の確保や開催頻度、活動量を増やすなど、内容面の充実を図っていく」と地域包括ケア推進課班長の神谷リカさんは意気込む。

高齢者の住まいへのニーズ

 高齢者の単独世帯は、20年度に約6万9000世帯となり、一般世帯の11.2%を占めている。全国平均よりは低いものの、徐々に増加しており、特に離島町村でその数が多い。「沖縄では『15の春』という言葉がよく使われる。離島には中学校までしかないため、高校進学時に本島へ渡る際、親も付き添ってくることが多いと聞く。若者の人口流出につながっている」と山城さんは語る。

 高齢者の住まいに対するニーズは高く、特養の待機者はおよそ800人程度。県内でも全国と同様に有料老人ホームの数が年々増加しているが、20~30床程度の小規模な住宅型が多く、特定施設が少ない。
「待機者を考慮すると、計画上は特養を増やしていく予定だが、建設資材の高騰や人員、土地の確保の難しさなど、さまざまな要因から応募が集まらない状況。待機者の一部が有料老人ホームで受け入れられている可能性がある」(山城さん)

認知症のある人の医療アクセスを推進

 県では、認知症高齢者の割合が全国平均に比べて低い。これは、全国と比較して県の高齢化率がまだ低いことが要因だが、今後の高齢化率上昇を見越して、認知症施策を推進している。

 今年度から、認知症の人に対するバリアフリー事業として、周知広報、県民向けの講演、官民連携によるシンポジウムの開催が予定されており、認知症の人が暮らしやすい社会の実現に向けて取り組んでいる。また、介護・医療関係者に対する研修も充実させているほか、認知症疾患医療センターを7カ所指定。琉球大学病院を基幹病院とし、北部に1カ所、中部に1カ所、南部に2カ所、宮古および八重山に各1カ所を指定し、認知症の人が医療機関に適切につながる仕組み作りを進めている。

 「認知症は誰でもなりうるものと理解を深めてもらい、暮らしやすい環境を整備するため、地域や企業を含めて周知を進めていく」と神谷さんは計画を語る。

離島・過疎地の人材確保を後押し

 介護人材に関しては、今後のニーズを踏まえるとますます不足することが予想される。

 離島が多い県では、移動にコストがかかり、求人をかけても人が集まらないという問題がある。これを受け、離島や過疎地域に特化し、介護職員を過疎地域外から採用する際の渡航費や研修費用を、1事業所につき1人あたり20万円まで補助する事業が実施されている。「毎年、およそ10人前後が県外や本島から離島に就職するなど、実績をあげている」と高齢者介護課主査の見里智美さんは語る。

 また、昨年からは特定技能1号の外国人のマッチングを県が支援している。委託された事業者が海外で人材を集め、施設に対しては、日本人との意識の差などのギャップを埋めるためのフォローを行い、採用負担を軽減する工夫もしている。日本語学習や介護技術向上のための支援も。さらに今年度からは、1事業所あたり20万円を上限に、外国人を育成する際の費用に対する補助も開始された。

課題の多い介護生産性向上総合相談センター設置

 介護生産性向上総合相談センターについては、来年度の開設に向けて準備が進められているが、解決すべき問題が多い状況だ。処遇改善や労務管理に関しては、県内の関係機関に委託して対応できる見込みだが、テクノロジー分野では、介護ロボットやICTの活用に関する相談・助言を行う専門家が不足しており、さらに介護ロボットの展示・貸し出しの運営方法が大きな課題となっている。

 「介護ロボットを活用するためには、県外から輸送しなければならず、その運搬コストやメンテナンスなども考慮しなければならない」と山城さんは状況を語る。

 県では、今年度に地域包括ケア推進課を新設。「高齢者の誰もが住み慣れた地域で生活できる地域社会の実現を、これまで以上に推進していきたい」と神谷さんは目標を語る。 

(シルバー産業新聞2024年10月10日号)

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