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18年改定どうなった 生活援助・成功報酬・介護医療院

18年改定どうなった 生活援助・成功報酬・介護医療院

 2018年4月からの介護報酬の基準、新単価が諮問・答申された。今改定の中でも、特に注目を浴びていたテーマとして、生活援助の基準・報酬の引き下げ、ADLの維持・改善の実績によるアウトカム評価の導入(成功報酬)、介護療養病床の新たな受け皿として新設される介護医療院の基準・報酬などが挙げられ、介護給付費分科会でもさまざまな意見が飛び交った。4月以降どのようになるのか、各テーマについてみてみる。

【生活援助】 2単位減に止まる

 訪問介護の生活援助中心型は、今後新たに創設する研修「生活援助従事者研修(仮称)」でも認めるよう人員基準を緩和する。報酬は「20分以上45分未満」181単位、「45分以上」223単位。財務省は基準緩和とともに報酬も引き下げを求めていたが、それぞれ2単位減の微減に止まった。報酬引き下げについては、「処遇が悪化し、人材確保がさらに困難になる」など、慎重な検討を求める声も多かった。一方、身体介護中心型は「20分未満」は据え置き、それ以外の提供区分は報酬を引き上げる。

 新研修修了者が生活援助のサービスを提供する場合でも報酬に差は設けず、また訪問介護の「常勤換算で訪問介護員2.5人以上」の基準にも新研修修了者はカウントできる。

 現行の訪問介護の人員基準では介護福祉士、初任者研修修了者、旧ヘルパー資格2級以上などの資格要件を求め、身体介護も生活援助も同一の基準だった。今回の改定では人材確保のため、身体介護の基準は現行を維持し、生活援助中心型はすそ野を広げ、従来の初任者研修(130時間以上)などより研修時間が短い新たな研修修了者でもサービス提供を認める。

 今年度中に関係告示・通知で新研修のカリキュラムの内容や時間数などを定める予定。内容はサービス提供時に観察すべき視点の習得や認知症高齢者の知識習得に重点を置くほか、生活援助従事者研修とは別に新設される「入門的研修」との共通科目の省略や、初任者研修へステップアップする際の科目免除などがすでに提案されている。

 09年3月(経過措置で10年3月)まで3級ヘルパー(52時間研修)の訪問介護(身体介護含む)が認めらおり、専門性の向上を目指して廃止になった経緯がある。今回の研修、介護人材の確保を理由に生活援助に限定して復活をした形だ。

【成功報酬】 デイに「ADL維持等加算」 3単位(6単位)/月

 通所介護、地域密着型通所介護では、心身機能に係るアウトカム評価が創設される(図)。一定期間内に、利用者のADLの維持・改善度合いが一定水準を超えた場合に「ADL維持等加算」として報酬上の評価を行う。

 ADL維持・改善の評価指標には、「バーセルインデックス(BI)」を用いる。BIは▽食事▽車いすからベッドへの移動▽トイレ動作――など10項目を5点刻みで点数化し、合計100点満点で評価するツール。例えば車いすからベッドへの移動は、「自立、ブレーキ、フットレストの操作も含む(15点)」「軽度の部分介助または監視を要する(10点)」「座ることは可能であるがほぼ全介助(5点)」「全介助または不可能(0点)」から選ぶ。評価手法としてリハビリで定着しているFIMを用いなかった。

 毎年1月~12月を評価期間とし、各要件をクリアすれば、評価期間終了後の4月から3月までの1年間、「ADL維持等加算」(月3~6単位)の算定を認める。要件は評価期間に連続して6月以上利用した集団が、①総数20人以上②評価開始月に要介護3以上の利用者が15%以上③評価開始月が初回の要介護・要支援認定があった月から12月以内の利用者が15%以下④評価開始月と6月目に機能訓練指導員がBIを測定し、それぞれの月に結果報告されている利用者が90%以上⑤④の要件を満たす利用者のうち、「BI利得」が上位85%について、各々のBI利得が0より大きければ1、0より小さければマイナス1、0ならば0として合計が0以上――。「BI利得」は6月目のBIから評価開始月のBIを差し引いて算出する。維持・改善の見込みが高い利用者のみを受け入れる「クリームスキミング」への対策として、要介護3以上の利用者が15%以上いることなどを要件に設定している。
 これらの要件を満たす通所介護事業所は利用者全員についてADL維持等加算Ⅰ(3単位/月)を1年間に渡り算定できる。さらに評価期間の終了後もBIを測定、報告した利用者については、より高い同加算Ⅱ(6単位/月)を算定できる。報告されたデータは「科学的介護」の実践に向けたエビデンス収集として活用していく考えだ。同加算の報酬が低いのではとの指摘に対し、厚生労働省の担当者は、「労力に見合っているかなど、色々な議論はあり得ると思うが、適正な範囲だと認識している」と説明する。

 今回のアウトカム評価創設では、「他サービスの利用状況によっても維持・改善度に差が出てくる」など、さまざまな指摘も挙がっていたが、厚労省は「まずは介護報酬にアウトカム評価を拡大することを優先させた」と説明し、試行的に進めていきたい考えをもつ。次回以降、要件や対象サービスの拡大などの見直しが図られる可能性もありそうだ。

【介護医療院】 介護療養病床より高く

 新設の施設サービスとなる「介護医療院」は介護療養病床(療養機能強化型)相当のサービスのⅠ型と老人保健保険施設相当以上のサービスのⅡ型のサービス類型を設ける。日中・夜間を通じた長期療養を主目的とし、人員基準もⅠ型が介護療養病床、Ⅱ型は介護療養型老健の基準を参考に設定。Ⅰ型は療養病床と同様に宿直の医師の配置を求めるが、医療機関併設の場合は兼任可。Ⅱ型では宿直医の配置を求めない。

 設備について、療養室は定員4人以下で床面積8.0㎡以上/人で、転換の場合は大規模改修まで療養病床の基準の6.4㎡/人以上で認める。廊下幅なども同様に配慮する。療養室以外の設備基準では、老健にはなかった処置室、臨床検査施設、エックス線装置などを求める。

 基本報酬は、多床室・要介護3の場合、Ⅰ型介護医療院サービス費(Ⅰ)で1144単位/日。介護療養病床(療養機能強化型A)の1119単位/日より25単位高く設定されており、療養室などの療養環境の基準を満たさない場合は25単位減算する。Ⅱ型介護医療院サービス費(Ⅰ)(多床室・要介護3)は1056単位/日。「重篤な身体疾患、認知症高齢者の割合」「喀痰吸引などの実施された者の占める割合」など、医療処置や重度者要件をⅠ型・Ⅱ型それぞれに設け、メリハリをつけた評価を行う。

 介護療養病床で評価されている加算などの取り扱いも介護医療院でも同様とするほか、新設の「排せつ支援加算」なども算定できる。介護医療院への転換を促すため、療養病床・療養型老健から転換した介護医療院については、利用者や地域住民に転換後の説明などを要件に「移行定着支援加算」93単位/日を1年間算定できる。

(シルバー産業新聞2018年2月10日号)

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