連載《プリズム》

みんなの「介護」保険

みんなの「介護」保険

 18年改定は、診療報酬(本体)+0.55%、介護報酬+0.54%、障害福祉+0.47%のプラス改定になった。ただし、診療報酬はプラス改定の本体報酬に対して、薬価は長期収載品の点数引き下げなどで▲1.65%、医療材料は▲0.19%のほか、大型門前薬局の調剤料の引下げがある。(プリズム2018年1月)

 12月18日の加藤厚労大臣は、「介護報酬改定については、厳しい財政事情を踏まえて通所介護などの各種の給付の適正化を行うが、介護事業者の安定的経営の確保などの観点から、改定率は0.54%とした」と会見で説明した。

 有効求人倍率が上がり、物価上昇の予想のある中で、人件費が6割を占める医療・介護費を切り落としては、労働市場での求心力を失う。しかし、第7期となる介護保険料改定では、全国平均保険料は6000円をうかがう状況にある。「やむを得ない」と受け止める国民は多いと思われるが、高齢化の一層の伸展によって医療・介護の基盤整備をさらに求められる日本の現状では、保険料はますます上がらざるを得ない。日本社会最大のテーマになった高齢者介護を担う介護保険制度も、そろそろ被保険者や受給者の範囲を広げて、全世代型に転向する時期に来ている。

 日本の5年前、1995年にドイツの介護保険が誕生した。基本的に保険料が財源だが、20歳から被保険者で、受給者は1歳の赤ちゃんから高齢者まで。0歳児は医療保険が対応する。全世代に関わる介護を高齢者に特化した日本の介護保険制度の形は、世界のスタンダードではない。18年改正の地域共生社会づくりの展開も、誰もが等しく生きることをめざす、北欧で生まれたノーマライゼーションの考え方に沿った社会システムにつながるのだろう。

 被保険者の拡大には、保険料を折半する財界の反対や利用者負担が担えない障害者団体の反対をクリアしなければならない。17年8月から、財界が了解して保険料の総報酬割がスタートした。18年4月からは、65歳になるまで5年以上の障がい者サービス受給者は、介護保険になって相当サービスを受ける際にも、介護保険の自己負担割合ではなく、障がい者サービス受給時の負担割合で済むことになった。18年改正で3割負担の導入が決まったように、給付抑制に向けた財界の発言力は今後一層増すだろうが、介護の普遍化へ溝が埋まってきている。
(シルバー産業新聞2018年1月10日号)

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