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地域区分「完全囲まれルール」 隣接地域との格差解消へ

地域区分「完全囲まれルール」 隣接地域との格差解消へ

 介護報酬は人件費の地域差を調整するため、「地域区分」を設定し、地域別・人件費割合別(サービス別)に基本単価(10円)に対して、割増しを行っている。地域区分は1~7級地と、そのどれにもあてはまらない「その他」の全8区分のうちいずれかが、自治体ごとに設定されており、隣接自治体と上乗せ割合が異なるケースも存在する。2018年度改定では隣接地域との公平性確保の観点から、特定の範囲内で区分を変更できる特例を設けることが決まった。

 18年度に地域区分級地の変更がある自治体は、48自治体。いずれも現行より引き上げる。地域区分の設定は、公務員(国家・地方)の地域手当設定がある地域については、その区分に準拠するのが原則。その上で現行では、公務員の地域手当設定がない「その他(0%)」地域で、隣接する地域の複数が「7級地(3%)」以上の場合本来の「その他(0%)」から、「地域手当設定のある複数隣接している地域区分のうち一番低い地域区分」の範囲内で選択できる特例を設けている。

 今回はさらに踏み込み、その他以外の地域でも、当該地域の地域区分よりも高い地域に囲まれている場合においては、当該地域を囲む地域区分のうち一番低い地域区分を上限とした範囲からの選択を可能とする「完全囲まれルール」の考えを設ける。逆のパターンとして、低い地域に囲まれている場合の引き下げも認める。
 例えば、現行では5級地(上乗せ割合10%)の東京都三鷹市で見ると、1級地(20%)の杉並区、世田谷区、3級地(15%)の武蔵野市、小金井市、調布市に囲まれているため、上限はその中で一番低い15%となる。下限は三鷹市の10%であるため、選択可能範囲は10%、12%、15%のいずれか。三鷹市の場合は最も高い15%を選択し、2段階の区分引き上げを予定している。

介護従事者のため「引き上げ」か、利用者のため「引き下げ」か

 特例創設の背景には、各自治体が抱える近隣地域との格差や過疎地の問題などがある。介護給付費分科会では、前回改定の議論段階から「地域区分の設定方法は、介護人材確保での近隣自治体との均衡を考慮し、地域の実情を踏まえ、設定が可能となるようにすべき」などの意見が寄せられていた。

 これらを受け厚生労働省が15年に行った地域区分に関する自治体意見調査によると、「具体的な課題」という問いに対する意見内容が、区分を上げたい意向と推測される自治体は44自治体、下げたい意向と推測される自治体は52自治体で、割合はほぼ拮抗していた。

 上げたい意向と推測される自治体から最も多かったのは、人材の確保や人材流出などへの不安。一方、下げたい意向と推測される自治体からは、保険料や利用者負担の増加を懸念する意見があがっていた。

 完全囲まれルールの対象となるのは全国68自治体で、適用自治体数(予定)は28自治体。うち18年度から開始する自治体は18自治体で、21年度まで経過措置を適用するのが10自治体となっている。実際に地域区分を引き上げる自治体は5自治体であるのに対し、引き下げる自治体は23自治体となっている。
(シルバー産業新聞2018年1月10日号)

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