インタビュー・座談会

主体性育て、2040年見据えた経営基盤づくり進む 大慈厚生事業会 坂本和恵理事長に聞く

主体性育て、2040年見据えた経営基盤づくり進む 大慈厚生事業会 坂本和恵理事長に聞く

 チームコーチングの導入で、トップダウン型だった組織を変え、職員の主体性を引き出してきた。神戸市西区を中心に高齢者施設と保育事業を展開し、約500人が働く社会福祉法人・大慈厚生事業会。改革を主導してきた坂本和恵理事長に、組織風土の変化と2040年を見据えた経営戦略を聞いた。坂本氏は全国社会福祉法人経営青年会の会長も務める。

指示待ち組織から脱却

 ――チームコーチングで何が変わりましたか。

 坂本 最も大きいのは、組織風土と職員の姿勢です。導入前は指示を待つトップダウン型の組織でしたが、今は管理者や役職者が主体的に動くようになりました。

 ――導入のきっかけは。

 坂本 長年続いた組織風土と、リーダー個人の資質に頼るマネジメントに限界を感じたことです。父や前施設長の時代は、目の前の仕事をこなすことが優先され、新しい取り組みへの理解も得にくい状況でした。

 ――新たなリーダーとして何を重視しましたか。

 坂本 私一人の力で、この風土を変えるのは難しいと痛感し、専門コーチを招いたチームコーチングの導入を決めました。スポーツ選手にコーチがつくように、施設のチームにもコーチをつけるという発想です。

「点」から「面」へ転換

 ――導入のプロセスは。

 坂本 まず、私自身がコーチングを学び、有効性を理解しました。個人の力量に頼るマネジメントでは、リーダーのコミュニケーション能力次第で現場が左右されます。そこで、組織として標準化したコミュニケーション教育が必要だと考えました。
 
 具体的には、各部署のリーダーが集まり、共通の目標に向かって対話する場を設け、最初は行事を一緒に行うといった小さな協力から始め、成功体験を重ねました。その結果、職員の自信と前向きな姿勢が育ち、取り組みは次第に専門領域へと広がりました。今では、人員配置や入居者配置、職員育成など、以前は各主任が個別に担っていた業務も、組織全体を見ながら協力して進めています。

正解のない時代を乗り切る力に

 坂本 この方法の有効性を確信し、10年弱にわたりぶれずに続けてきたことが、変化を定着させた最大の要因です。目的は単なるスキル習得ではなく、人間力や非認知能力を高めることにあります。人手不足やコロナ禍のように正解のない困難に直面したとき、自分たちで考え、工夫し、乗り越える力を養う取り組みになっています。

「食」軸に新たな事業展開

 ――団塊世代が90歳を迎える2040年に向けて、何が必要ですか。

 坂本 一方で、介護報酬だけに頼る経営は、物価高騰や人件費上昇を踏まえると限界があります。そこで、給食の直営化をめざし、外部委託から切り替えて、自施設で調理・加工するセントラルキッチンの運営を進めています。1カ所の厨房で一括調理し、急速冷凍機で短時間に冷却することで、おいしさを保ったまま保存・配送できる仕組みです。今後は、地域の独居高齢者への配食サービスや子ども食堂、近隣の老人ホームへの提供など、「食」を軸にした地域密着型の事業展開を構想しています。

復職後も給与は維持

 ――当面の人材確保で重視する点は。

 坂本 女性が多い職場の特性を踏まえ、キャリアを継続できる環境整備が重要です。例えば、産休・育休から復帰した職員は、1日1時間から1時間半早く帰宅できる一方、給与は減額せず、フルタイムと同額を支給しています。

 これに加え、保育料補助や学童保育支援など、子育て世代が働き続けられる仕組みも必要です。生き残るには、利用者にも働く人にも、この地域に欠かせない存在になることが求められます。
(シルバー産業新聞2026年5月10日号)

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