コラム

日本介護支援専門員協会 常務理事 中林弘明氏に聞く (新・地域特集:近畿②)

日本介護支援専門員協会 常務理事 中林弘明氏に聞く (新・地域特集:近畿②)

 ケアマネ確保へ制度改革を提起ケアマネジャー(介護支援専門員)の担い手不足を解消するには、処遇改善に加え、教育・資格制度の見直しや仕事の魅力の再定義が欠かせない。日本介護支援専門員協会の中林弘明常務理事は、大学での養成課程整備や国家資格化の検討、段階的な権限付与による柔軟なキャリアパスの構築を提起する。DXの推進で業務負担を軽減し、若い世代が早い段階から専門職として選べる環境づくりが重要だと訴える。

ケアマネ確保へ制度改革を提起


――ケアマネジャー不足の背景をどう見ているか。
中林 担い手の高齢化と退職、処遇の問題、過度な業務負担、そして若手が入職しにくい資格制度の構造が重なっている。ケアマネジャーの平均年齢は50・6歳程度と高く、介護保険制度開始期を支えた「第1世代」が定年退職の時期を迎えている。現場職には夜勤手当などがあるため、ケアマネジャーに転向すると、かえって給与が下がるケースも少なくない。事務負担に加え、法定業務外のいわゆる「シャドウワーク」も担わざるを得ず、精神的な負担感も大きい。


――その状況を改善するうえで、制度見直しにはどのような意味があるか。
中林 27年度の制度見直しで、受験に必要な実務経験が5年から3年に緩和されることで、より早い段階でケアマネジャーへのキャリアパスを選択できるようになり、若手の入職を促す効果が期待できる。また、資格取得後の5年ごとの更新制も廃止される。介護福祉士や看護師には資格更新制がなく、ケアマネジャーにとっては時間的にも精神的にも大きな負担となっていた。更新研修自体は形を変えて残るようだが、これまでのように5年ごとに同様の研修を繰り返し受ける負担感は、一定程度和らぐのではないか。処遇改善加算が2・1%付くようになったことも前進と受け止めている。


――協会は長年、国家資格化を要望してきた。
中林 日本介護支援専門員協会は、ケアマネジャーの専門性の確立と社会的地位向上のため、社会福祉士などと同様の国家資格化を長年、政府に訴え続けている。協会としては、大学などの養成課程で専門知識を学び、卒業時に国家試験を受けられるような仕組み、いわば「社会福祉士モデル」が理想だと考えている。そうした仕組みができれば、若い世代がケアマネジャーを志す流れも生み出せる。

国家資格化や養成課程の見直し DX推進で若手が選べる職種へ

兵庫県の尼崎市・西宮市で高齢者・障がい者の事業を運営する

兵庫県の尼崎市・西宮市で高齢者・障がい者の事業を運営する

――若い世代が選びやすい職種にするには。
中林 教育・資格制度を抜本的に見直す必要がある。現在の「現場経験を積んでから目指す」という形に加えて、「若いうちから専門職として選べる仕組み」の創設が重要だ。例えば、大学卒業時に国家資格を取得できる仕組みが考えられる。社会福祉士のように、大学の養成課程で学び、卒業時に国家試験を受けられるようにすることで、20代の若者が最初から専門職としてキャリアをスタートさせることが可能になる。さらに、試験合格後すぐに働けるようにしつつ、独立や主任になるには一定の実務経験を条件とするなど、段階的な権限付与による柔軟なキャリアパスも考えられる。



――仕事の魅力をどう打ち出していくべきか。
中林  
ケアマネジャーの仕事を、単なる調整役ではなく「マネジメント職」として再定義していく必要がある。地域の資源、人・物・金・情報を活用して最善の結果を導く仕事であり、ビジネススキル、特にMBA的な考え方と親和性もある。相談援助という目に見えにくい業務を、学生にも分かりやすく可視化して示していくことが求められる。高度なマネジメント職としての側面を打ち出すことが、若い世代への訴求力につながる。


――専門職としてのやりがいが大きい。
中林 ケアマネジャーは人生の最終段階を支える役割を担っている。医療職ではなく、介護職のケアマネジャーが本人の望む最期をマネジメントする「ターミナルケアマネジメント」は、他職種にはない大きな醍醐味であり、深い専門性が求められる仕事だ。さらに、認知症高齢者をネット詐欺や悪徳業者から守るなど「権利擁護」の役割もある。家族に代わって高齢者を守る、強い使命感を持てる仕事だといえる。



――働きやすい環境づくりではDXも鍵になる。
中林 紙からデータへのDX化は、若い世代にとって歓迎されるだろう。ICTの活用やケアプランデータ連携などのデジタル化を進めることは、デジタルネイティブである若い世代にとって自然な環境であり、従来の「書類まみれ」という悪いイメージの払拭にもつながる。ICTに強い若手職員がベテランに教える「出前講座」のような仕組みをつくり、若手が職場で活躍し、評価される場面を増やすことも提案していきたい。

(シルバー産業新聞2026年5月10日号掲載)

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