地域力発見

地域力発見145 行政区を再編し、“住民自治の場”を制度化

地域力発見145 行政区を再編し、“住民自治の場”を制度化

 兵庫県豊岡市は、住民活動を継続的に支える体制を構築し、独自の基盤整備を行っている。従来からあった公民館をコミュニティセンターとして整備し、旧小学校区単位で29のコミュニティ組織を立ち上げている(2017年度実施)。各地区の組織は、「地域振興」「地域福祉」「地域防災」「人づくり」の重点機能を担う。具体的な取組みを紹介したい。

竹野南地区の特徴

 29区の一つ竹野南地区は人口約900人、世帯数約400の小規模山間地。高齢化率は5割を超えている。親子二世代同居が比較的多く、独居は少ない。生活には自家用車が大切な足となるが、高齢で運転できなくなると、家族が病院や買物の送迎を担うので、家族にも負担がかかる。

 また、今後は60代の子世代が高齢化すると、10年後には、独居高齢者が増加するという問題が控えている。

 孫世代は市外へ移住している人が多く、地域内に若年層が少ない。小中学校・幼稚園はすでに統合され、子どもたちはスクールバスで市内の学校へ通っている。こうして移動の問題は市の重要課題になっている。竹野南では高齢者向けに乗り合いタクシーの実証実験も行ってきたが、利用率などの課題があり、本格実施には至らなかった。

 現在は、近隣三地区合同で予約型乗合交通「たけの〜る」が導入されている。

NPO法人わいわいみ・な・み

 住民は任意団体を作り、地域の課題解決に取り組むが、行政に依存しすぎずに知恵をしぼる。29区の中でも住民主体の取組みが進んでいるのが竹野南地区。NPO法人格を取得している唯一の団体「コミュニティわいわいみ・な・み」(16年設立)が担う。

 活動はコミュニティセンターを拠点にしているが、新しくなった竹野南地区の同センターは、使いやすい設計にリニューアルし、床暖房やシャワー室も備える。施設経費は市が負担し、スタッフが運営に専念できる環境を市が整備。また、センターの空室は市が住民に貸し出すこともでき、収益も得られる柔軟なしくみにしている。

市の介護予防事業を引き継ぐ

 NPOを取得したことで、介護事業も展開している。市の「支え合い通所介護事業」を受託してスタートさせたもので、介護保険の要支援1、2の認定者と事業対象者が通うミニデイサービス(月35人)である。また、市の委託を受けて、「支え合い生活支援サービス」を担い、顔見知りのスタッフが住民の相談に寄り添う。現在は市からの委託者だけでも10人ほどが利用し、必要な支援を受けているそうだ。

 その他、配食サービスや高齢者カフェも開く。高齢者カフェは住民の交流拠点で、常連が来ないと民生委員やNPO職員へ情報が伝わる「ゆるやかな見守り」の仕組みが自然に組み込まれている。

避難マニュアルを作成

 この活動で特に進んでいるのは防災計画だと話すのは、コミュニティ振興課の高田久美子係長。台風の影響で倒木による停電を経験したことを契機に、住民による検討が始まった(20年)。防災について全世帯にアンケート調査を行い、3回のワークショップを開催。地区の16集落を4区分して検討し、「水害時避難マニュアル」を自分たちで作った。自分の地域は自分が一番よく知っている。だからこそ自分たちで守るという意志がうかがえる。

 また、男性だけに任せず、女性防災士の育成も行った。昼間、地域にいるのは女性。その力を借りない手はない。避難マニュアルは一般的には行政が作成するが、住民力が発揮されたこのマニュアル、一度拝見してみたい。

三地区合同の体制

 学校の統合や交通手段の工夫でもみたように、竹野南は、隣接する中竹野、竹野の三地区で資源を分けあっている。公的な機関としては、竹野町に特養、グループホーム、ケアハウスが各1カ所、デイサービスが3カ所、訪問介護事業所が1カ所ある。これを三地区で利用する形だ。

年間約500万円を交付

 行政サービスは広域的な制度として整備されているが、日常の細かな支援まではカバーしきれない。市はより細かい生活圏を基礎に29区の区域を創り、住民活動に年間500万円弱の交付金・委託料を支払い、制度化を図る。

 多くの自治体では、自治会や町内会は縮小傾向で、地域協議会はあっても権限なども弱くなりがち。住民と行政が役割分担し、協力し合うことで継続的な活動が期待される。(つづく)

(シルバー産業新聞 2026年6月10日号)

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