インタビュー

介護人材不足 「ピンチをチャンスに」/厚労省 川端裕之さん(前半)

介護人材不足 「ピンチをチャンスに」/厚労省 川端裕之さん(前半)

 人材不足に悩む介護業界。厚労省では、あらゆる手を尽くして人材確保に取り組み、ピンチをチャンスに変えていく方針。キーワードは、ICTやAI、介護ロボットを使った「イノベーション(技術革新)」と、若い人からアクティブシニア、外国人介護人材まで幅広い人材を活用する「ダイバーシティ(多様性)」、さらに「介護のやりがい(魅力)」を見出すことだ――川端さん(福祉人材確保対策室長)のインタビュー。

介護の魅力を発信する

 ――「介護の日」とは、どのような日ですか。
 高齢化の伸展によって、介護を必要とする方が増えています。それに併せて、認知症高齢者の増加や、高齢者単身世帯.老老介護の問題など、介護のニーズも複雑化.多様化しています。そうした中、厚生労働省では、介護に対する理解や認識を深めてもらおうと、2008年から11月11日を「介護の日」として定めました。国民の皆様からの声を集め、制定日は「いい日、いい日」にちなんだ語呂合わせにしています。
 ――どのようなことが行われるのですか。
 「介護の日」の前後2週間を啓発活動の重点期間として位置づけ、国、地方自治体、関係団体などが一丸となって、全国各地で介護にまつわるイベントなどを実施しています。市民向けの公開講座や介護の仕事体験など、介護に関する情報や魅力発信を集中的に行うことで、介護をより身近なものとして捉え、介護に関心を持つきっかけにしてもらえればと考えています。
 ――介護分野では人手不足の問題が深刻化しています。
 人口構造的にどの分野でも人手不足の状態ですが、中でも介護分野は顕著です。昨年度の有効求人倍率は、全産業平均が1.46倍なのに対して、介護分野は3.95倍と高い水準になっています。必要な介護サービスが安心して受けられるように、厚労省としては、あらゆる手を尽くして介護人材の確保に努めています。

「イノベーション」「ダイバーシティ」

 ――具体的には。
 就業促進や離職防止など、総合的に取り組みを進めていますが、最近のトピックスは処遇の改善です。10月から消費税の財源を使って、ベテランの介護職員を中心に、更なる処遇改善を行う施策を実施しています。介護を自らの仕事としていくために、他産業と遜色のない賃金水準を実現していきます。その上で、「イノベーション」と「ダイバーシティ」をキーワードに、人材確保策に取り組み、ピンチをチャンスに変えていきます。
 ――「イノベーション」と「ダイバーシティ」とは。
 「イノベーション」とは、技術革新という意味です。今はICTやAI、介護ロボットなどのテクノロジーがすごく発達してきています。こうした技術を介護現場に積極的に取り込み、業務負担の軽減や生産性の向上につなげていきます。例えば、ICT機器を導入して、記録や情報共有にかかる業務の負担をできるだけ少なくしたり、介護ロボットやセンサーを上手く使って、効率的かつ効果的な見守りを実施したりするイメージです。厚労省でも生産性向上に向けたガイドラインを策定し、ホームページ上で公開していますので、うまく活用してかっこいい職場を目指してもらいたいです。
 ――介護現場に技術革新を起こしていく必要性があるということですね。
 その通りです。もう一つの「ダイバーシティ」は、多様性という意味です。介護現場に若い人や子育てを終えた人、アクティブシニア、外国人などの多様な人材が集まり、多様な働き方をすることによって、介護人材の裾野が広がっていくことをイメージしています。ただ、ここで大事なのは、そうした人たちに介護の仕事や魅力を知ってもらい、実際に入職するきっかけをつくっていくことです。そのためには、ターゲット層に合った、きめ細やかなアプローチが必要になります。そしてこの多様性の強みは、何より様々な人々が集まることにより、より良いアイディアが地域に生まれて自然と交流の機会が増えることに繋がります。
 (かわばた・ひろゆき)
 厚生労働省 福祉人材確保対策室長
 2002年に厚生労働省入省。障害者福祉政策、雇用創出政策、子育て支援政策を担当。14年9月から17年7月まで、日本貿易振興機構ニューヨーク事務所厚生部長としてJETROニューヨーク事務所に出向し、日米ヘルスケア産業の促進に取り組む。18年7月から医政局総務課課長補佐として、地域医療構想、医師偏在対策、医師の働き方改革を三位一体で進める医療政策に従事。19年度より現職。

(介護の日しんぶん2019年11月11日)

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