インタビュー

西尾俊治氏に聞く カテーテル抜去し、おむつ使用で格段のADL向上

西尾俊治氏に聞く カテーテル抜去し、おむつ使用で格段のADL向上

 日本慢性期医療協会(武久洋三会長)が2019年9月~10月にかけて、急性期、回復期、慢性期など調査対象病棟への新規入院患者(153施設386病棟=病床数計1万9677病床)を対象とした「急性期機能を有する病棟からの膀胱留置カテーテル持ち込み患者とその実態についての調査」によれば、約1割の患者がカテーテルのある状態で慢性期に転院しており、「在宅・自宅」からも4.4%を占めるなど、長年抜去されないままカテーテルのある状態で生活している実態が分かった。排尿自立実践の第一人者の西尾俊治氏(南高井病院院長)は、在宅でも排尿自立の意識が高まるように、評価が求められると指摘する。

 ――医療現場でカテーテル抜去が進まず、在宅復帰後に残った状態なのは、ADL維持向上のために問題ならないでしょうか。

 その通りです。適切に判断して病院で不必要になれば抜去する必要があります。

 しかし在宅では、かかりつけ医が、病気等で基幹病院から退院されてきたときにカテーテルがついたままであれば「抜去してはいけない」と考えています。確かに、当初は尿量測定や身体状況によって必要のあるカテーテルであったとしても、実はすでに不要であることが多いということです。医師ですら「抜去する」という思いに至らないようです。

 その多くは急性期で抜去をしないことがあるのですが、今回の調査で急性期がカテーテルを抜去しない理由に多かった「脳血管疾患等の神経因性の閉尿」「尿路の閉塞」は理由となりますが、「全身状態不良」の多くは抜去できます。まして、看取り期で回復の見込みがないから抜去しないという判断は人の尊厳にかかわる問題と言えます。

 ほかにも「骨折などの整形外科手術後」は股関節の手術後の感染を避けたい目的だと思いますが、これもできる限り早く抜去のタイミングを探るべきです。「厳密な尿量計測のため」は重度の心臓疾患のため尿量を㏄単位で管理するような状況であれば、認められると思いますが、「安静臥床のため」「泌尿器・生殖器疾患の術後に治癒を促進するため」「高齢患者が病院内で転倒しないように予防策として」などのカテーテル利用は、少なくとも慢性期に転院される段階では抜去できるはずです。

 カテーテルがついた状態ではリハビリもはかどりませんので、できるだけ早く不要なカテーテルは抜去すべきです。急性期で早くカテーテルを抜いたら、すぐ動けるようになり、あまり介護度が高くならない状態で次の慢性期にバトンタッチできるのではないかと思います。
 ――抜去の効果はどのように表れていますか。

 抜去したその日から、自分でトイレに行って排尿したという事例もあります(図)。抜去しても完全に自立排尿ができず、おむつを使用される場合でも、カテーテルがある状態とはADLが明らかに良い状態になります。

 抜去後は現場に排尿自立のトレーニングをお願いすることになるのですが、重要なのが「尿意の有無」です。尿意がない方の場合「何時頃にトイレに行くかな」ということを周囲が把握し、トイレ誘導するのです。最近では残尿測定が簡単にできる予測機器「リリアムスポット」(リリアム大塚)なども登場しているので、以前より取り組みやすくなってきています。

 尿意のある方なら、声掛けをして早めのトイレ誘導をすることです。夜間については、介助者の負担や本人の安眠の観点からも、吸収量の多い夜間用のおむつを併用することも選択していただいてよいのではないでしょうか。

 その効果はFIM(機能的自立度評価法)70点以上の方が増えるなど明確になっています。同時に点数が低い人が減り、全体に高い方向にシフトします。全国1万人以上、カテーテルのある人1000人のデータに基づいて、こうした傾向を示すことができたのは、自立排尿に取り組む後押しになると思います。

 ――排尿自立に関する評価が診療報酬や介護報酬にも位置付けられていますが、この評価はどうですか。

 排尿自立の研修会で話をさせてもらうのが、病院入院患者にカテーテル抜去を目指した評価が始まり、次いで介護施設でも排泄自立の取り組みへの評価も認められました。今後は自宅でも報酬上で評価をしてほしいということです。

 かかりつけ医や訪問看護師などとの協力の中で取り組むことができれば、ご本人の排尿自立のよい結果に結びつけられるのではないかと考えています。

 地域包括ケアシステムでは患者さんが地域の施設と在宅を行き来しますから、急性期から慢性期、介護施設、在宅まで一貫して自立排泄に取り組む体制が整っていないといけません。一番取り組みやすいのが、慢性期ではないかと思っています。

 医療機関で抜去が進まないと、介護は利用者の受け入れのハードルが高くなってしまいますから。

(シルバー産業新聞2020年10月10日号)

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