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宇都宮市医師会 生活背景から健康支える「社会的処方」

宇都宮市医師会 生活背景から健康支える「社会的処方」

 宇都宮市医師会は、受診時に患者の生活課題を把握し、社会参加・地域活動等へつなぐ「社会的処方」の取組みを昨年より実践している。

 社会的処方は、孤立や貧困などの社会的課題の解決、生活全般の改善をはかるもの。先行的に実施しているイギリスでは、かかりつけ医が、地域資源に詳しい「リンクワーカー」へ患者を紹介し、地域活動やサービスへつなぐ手法がとられている。
 
 同会では1年前に社会支援部を立上げた。根底にあるのが「健康には社会的要因が影響する」という考え方。同会理事・村井邦彦氏(村井クリニック院長)は「顕著なのは、地域や社会との関わりが薄い人。周りで気づかう人がいないため、健康意識が低い。病状だけを見て糖尿病の指導をしても、なかなか治療に結びつかない」と説明する。
 
 人との関わりや生き甲斐といった「自己肯定感」を見出し、健康・幸福感を高めるための支援を医療側からもアプローチしようというのが本活動の主旨だという。

生活を問診

 社会的要因の把握については、医療機関の受診時に生活状況のアセスメントを実施。同会ではそのツールとして「SDH問診シート」(3種)、「生活・健康感シート」(2種)を作成している。
 
 例えばSDH問診シート(左上表)は「家事や子育て、介護などで困ることがありますか」「仕事や趣味などで外出することがありますか」「家族や親せき、友人などと話をしますか」など8つの健康の社会的決定要因についての質問項目を選択形式で回答。結果はレーダーチャートで表示し、社会的要因の強弱を見える化する。
 次に、社会的要因をもとに地域のサロン活動や各種支援制度を紹介。「新たなサービスを創るより、既存資源を活かす。地域支援事業や、インフォーマルサービスを含むケアプランと基本的な考え方は同じ」と村井氏は述べる。
 
 そのため行政やケアマネとは常に情報共有・連携体制をとり、医療機関だけで支援内容を決定するのではないという。「特にケアマネジャーは、本人の生い立ちや生活の場をよく知っている。連携することで支援の選択肢も増える」(村井氏)。
 
 宇都宮市内にはサロン活動が約280カ所と充実。「まだ活動して1年だが、これまで知らなかった通いの場や社協・民生委員の活動など、多くの地域資源が見えてきた」と同氏。「しばらくは事例を積み上げる段階。その中で、生活習慣病の改善や減薬に至ったケースが出てくるかもしれない」と語った。

(シルバー産業新聞2020年9月10日号)

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