インタビュー

地域全体で高齢者を支える仕組みに転換

地域全体で高齢者を支える仕組みに転換

 尾崎守正前振興課長は本インタビューで、介護保険は地域全体で高齢者を支える仕組みへ変わっていくと話した。地域包括ケアシステムの中核にある地域包括支援センターでは、機能強化・体制充実を目指して、ケアマネ事業所や介護サービス事業所のブランチ(窓口)化などを推し進める。ケアマネジャーについては、ケアプランの標準化・ITプラン化は全人的視点から対応する必要があるとした。

尾崎守正(おざき もりまさ)
1996年3月 慶應義塾大学法学部 法律学科卒業、同年4月厚生省入省
2005年4月 香川県 健康福祉部 医務国保課(出向)
08年4月 厚生労働省復帰、診療報酬、医療保険、年金、児童福祉等を担当
13年7月 医薬食品局総務課 薬事企画官
14年7月 大臣官房 人事課 企画官
16年6月 老健局 企画官
18年7月 老健局 振興課長
20年8月 健康局 難病対策課長(現職)

地域包括支援センターの機能・体制の強化

ケアマネ事業所をブランチ化

 ――地域包括支援センターの強化点を教えてください。

 地域包括ケアシステムの中核を担う地域包括支援センターの機能強化が求められている。社会保障審議会介護保険部会の「介護保険制度の見直しに関する意見」においても、今後の高齢化の進展等に伴って増加するニーズに適切に対応するために、地域包括支援センターの機能強化や体制の充実を図る旨が指摘されている。地域包括支援センターの機能強化を図っていくためには、現状を評価して、それに見合う体制を確保していくことが必要であり、実施主体である市町村がセンターの運営にしっかりと関与していくことが大事だと思っている。
 18年の前回改正においては、地域包括支援センターが自己評価を行うことや市町村による評価を実施することになった。市町村のインセンティブ交付金(保険者機能強化推進交付金)においても、地域包括支援センターの機能・体制強化は評価指標になっている。市町村は、こうした評価の実績に基づいて、自分たちの地域包括支援センターのどこが弱いのか、どのような取組を進めていかなければならないのかを判断して、そのための必要な費用の手当もしていただくことになる。

 ――体制の充実はどう図っていくのでしょうか。

 どのような専門職の配置を充実させるか、事務職の配置をどうするかなど、それぞれの地域や専門職の状況を見ながら、各市町村において判断されることになる。インセンティブ交付金では、基準を超える職員の配置を評価している。

 ――総合相談機能を強化するための方策について。

 もう一つ「見直し意見」で掲げられたのは、地域との関係を深めること。たとえば居宅介護支援事業所や介護サービス事業所などの既存の地域資源と連携しながら、地域の相談機能を強めていく方向だ。
 地域全体として総合的な相談機能を高めていくことが必要だと思っている。ケアマネ事業所が地域包括支援センターのブランチとしての機能を果たしたり、同様に老健施設などがブランチとなって、地域全体の相談機能を高めていく。介護サービス事業所がブラチ化することによって、これまでも行ってきた地域貢献活動に対して財政的な裏付けを行うことが出来るようにもなる。

 ――予防プランの委託料は引き上げられますか。

 予防プランを外部委託する場合にも、プランの最終的な責任は地域包括支援センターにある。一方で外部委託によって地域包括センターの業務負担が軽減されることから、外部委託をしやすいように介護報酬をどうするか検討が必要と考えている。

 地域包括支援センターは、地域の高齢者の総合相談、権利擁護や地域の支援体制づくり、介護予防の必要な援助などを行い、高齢者の保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援することを目的とし、地域包括ケア実現に向けた中核的な機関として市町村が設置する。
 地域包括支援センターには、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員等の専門職を配置し、地域の総合相談事業などを担っている。2019年4月時点で、全国で5167カ所が設置されている(ブランチ1830カ所、サブセンター344カ所を含めると7341カ所)。

ケアマネジメント標準化・AIプラン・国家資格化・処遇改善・ネット研修

 ――ケアマネジメントの標準化について。

 ケアマネジメントの質の向上をめざして、ケアマネジメントの標準化として、これまで4年間、要介護の主要因となる脳血管疾患、大腿骨頸部骨折、心疾患、認知症について、疾患ごとにケアマネジメントの際の留意点を見極める研究を行ってきた。

 ――手応えはいかがですか。

 5年目になる今年度は、疾病ごとの指標を検証し、整理し直す作業を行って、どのような見直しが必要か探ることとしている。
 また、個別の疾患ごとの標準化を推し進めるのであれば、研修を通じて、研究成果をケアマネジャーによく知ってもらうことから始めていくことになるのだろう。同時に、ケアマネジメントは全人的なものであり、要介護の原因となった疾病とともに家族の要因、環境の要因などもあり、そうした広い視点から標準化を進めていかなければならず、簡単な作業ではないと思っている。

 ――ネット研修の推進について。

 集合研修にすると参加しにくい場合があり、自治体には開催を日数の分散やインターネットなどを活用して研修を依頼している。しかし、インターネットによる研修は残念ながらあまり進んでいない。新型コロナで人が集まっての研修が困難になっているので、ぜひネット研修のコースを増やして欲しい。

 ――AIケアプランについて。

 AIケアプランはどういうものか。何の目的でAIケアプランを捉えるか。中には、ある状態像を入力すると、ケアプランができて、ケアマネジャーが要らなくなる、と思っている人もいるかも知れない。一方で、まだまだそこまでいっていないと思っている人もいる。人によってイメージが異なるため、議論がしにくいのが現状だ。
 実際は、どういうデータをAIに勉強させるのかなど様々な問題があり、ただちに実用化できる段階にはないというのが私の認識だ。AIケアプランによって、業務が効率化する部分もあれば、しない部分もあるだろう。一人ひとりの状況は、心身の違いだけでなく、環境や地域の状況が違いもある。AIプランを参考にして、自分で考えたプランとどのように違うのか、気づきがもらえる有力なツールになる可能性はある。特に若いケアマネジャーには、AIプランによって引き出された答えがなぜこうなったのかが分かる解説とセットで提供する必要があるだろう。引き続き、検証や実証を行っていかなければならない。一定の時間がかかるように思う。

 ――国家資格化の可能性について。

 ケアマネジャーの国家資格化については、昨年、自民党の「日本ケアマネジメント推進議員連盟」でご議論をいただいたが、ケアマネジャーの果たしている現在の役割をみれば、事実上の国家資格であるとの議決もいただいた。このようなことを前提に物事を考えていかなければならないと思う。

 ――処遇改善は図られますか。

 介護職の処遇が上がってきたために、ケアマネジャーの処遇に追いついてきた。介護保険部会でもケアマネジャーの処遇改善を通じたケアマネジャーの安定的な確保、事務負担の軽減によってケアマネジャーが業務に集中できるようにすることが求められている。
ケアマネジャーの処遇改善は、報酬改定全体の中で検討しなければならないテーマだと思う。

<介護保険部会「介護保険制度の見直しに関する意見」(2019年12月27日)よりケアマネジメントに関連する主な意見>

○ケアマネジャーには、医療と介護の連携や地域における多様な資源の活用等の役割を、より一層果たすことも期待されている
○医療をはじめ、多分野の専門職の知見に基づくケアマネジメントが必要。そのための地域ケア会議の積極活用や介護報酬上の対応の検討も必要である
○インフォーマルサービスも盛り込んだケアプランの作成の推進
○公正中立なケアマネジメントの確保や、ケアマネジメントの質の向上に向けた取組の一層の推進。適切な修了評価やICT等を活用した受講環境の整備など、研修の充実や受講者の負担軽減等が重要
〇ケアマネジャーの処遇の改善等を通じた質の高いケアマネジャーの安定的な確保や、事務負担軽減等を通じたケアマネジャーが力を発揮できる環境の整備

プロの介護を提供してきた介護保険

地域を支える仕組みに転換

 ――ねんりんピック2021岐阜について。

 高齢者が主役のスポーツ・文化の祭典である全国健康福祉祭(ねんりんピック)は、今年33回を迎える予定だった。新型コロナウイルスの影響で残念ながら今年予定していた岐阜大会は延期になった。地元の岐阜県では開催に向けて準備を進めていただいてきたが、地方予選ができない状況などもあり、やむなく1年延期となった。21年10月30日(土)~11月2日(火)岐阜県全域で開催する。地元への経済効果も大きく今後も続けていきたい取組みだ。
昨年の和歌山大会開会式入場行進

昨年の和歌山大会開会式入場行進

 ――介護保険20年に想うこと。

 2000年に介護保険ができて、専門職が増えた。それまで家族で担ってきた介護から訪問介護員をはじめとする医療や介護の専門職による介護に変わり、介護保険制度は高齢社会を支える社会基盤となった。一方で、40年を見据えると、現役世代が減っていく。そのような中でも、しっかりとしたケアを提供し続けていくために、専門職だけに頼るのではなく、地域全体で高齢者の生活を支えていく仕組みを構築していかなければならない。介護保険制度は今後もそうした色合いが強まっていくことになるだろう。
 地域包括ケアシステムについても介護予防・日常生活支援総合事業などを充実しながら、高齢者の地域での暮らしを支えていく。高齢者が暮らしやすい地域になれば、障がいのある人や、母子家庭など何らかの支援が必要な人たちも含めて、すべての人が住みよい地域になっていく。

※8月7日付で、厚労省老健局振興課は認知症施策・地域介護推進課に名称変更、尾崎振興課長は厚労省健康局難病対策課長に就任されました。

(シルバー産業新聞2020年9月10日号)

関連する記事