インタビュー

厚労省 齋藤高齢者支援課長 地域の実情に合わせたサービス運営を(前編)

厚労省 齋藤高齢者支援課長 地域の実情に合わせたサービス運営を(前編)

 2040年に日本の高齢者数がピークを迎える一方で、地域によってはすでにピークを越え、介護が必要な利用者数が減少しているところもある。厚生労働省老健局の齋藤良太高齢者支援課長は「地域の実情に合わせたサービス展開を考えるべき時代に入った」と話す。高齢者支援課での取組みについて聞いた。

特養とサ高住・有老

 私どもの高齢者支援課は、高齢者の施設サービス、例えば特別養護老人ホームや有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅や、福祉用具などを所管している。

 介護保険制度創設から今までの20年を振り返ると、要介護認定者が3倍に増えるなか、いかに施設を整備していくかが重要な課題だった。

 2015年4月から、特養は原則要介護3以上に重点化していく形に役割を明確化し、要介護2以下の人たちをサポートするために住宅型有料老人ホームなどの整備も進めてきた。

 11年には改正高齢者住まい法により、国土交通省と厚生労働省が共管して、新たな高齢者の住まいとして「安心・見守り」などのサービスを併せもつ、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)がスタートした。

 要介護状態の変化とともに、在宅から施設に向かっていく中で、幅広いニーズに合ったサービスが提供できるよう取組んできた。

 これまでは高齢者人口の増加に合わせて施設を一気に増やしてきた。もちろん、これからも必要に応じて増やしていくが、今後はより地域の実情に合わせた調整が必要な段階にきたと考えている。

2040年サービス利用者ピークも、増加率変わらず

 厚労省「保険者別の介護サービス利用者数の見込み(図1)」で、地域ごとに、40年まででサービス利用者が最も多い年はいつかを調べた。

 すでに18年にサービス利用者がピークに達し、減少に転じる保険者もある一方で、都市部を中心にサービス利用者が増え続けている保険者が多くなっている。

 地域により利用者数や増加率の違いに対してどう対応するかは大きな課題だ。

 地域の利用者が減って施設が立ち行かなくなると、その地域の福祉の拠点が失われることになる。高齢者増加のピークアウト対策も考える必要がある。都市部を中心に2040年までサービス利用者数が増え続けている。

都市部の有老ホームの設備補助事業

 今後、大都市部で高齢者が増えていくと、特養だけではニーズを賄えなくなる。特養というのは基本的に社会福祉法人が所有する土地に建設をするため、都心部ではなかなか建設しにくい状況がある。

 そこで、民間で介護サービスを提供する施設として、サ高住や介護付き有料老人ホームの開設を推進している。地域医療介護総合確保基金の介護施設等の整備分で、「介護付きホームの整備促進」を拡充し、介護離職ゼロ実現をめざす。

 介護付きホームの整備促進は都市部の12都道府県に限定して支援する。

介護施設の大規模修繕費の補助

 地方部では、施設が老朽化しているのが大きな問題だと考えている。今年度新たに「介護施設等の新規整備を条件に行う、広域施設の大規模修繕・耐震化整備」事業を開始した。地域に残る福祉拠点である介護施設の修繕と新規整備をセットで取り組んでいただきたい。

 大規模修繕費が捻出できない施設を支援することで介護施設が長寿命化し、新たに必要なサービスの整備も行ってもらいたい。

 地域医療介護総合確保基金の関係では、介護施設職員のための寮の整備も今回から新たに支援している。現在はコロナで入国ができていない状況だが、外国人人材の住まいの確保の課題に対応した。

生産性向上とロボット・ICT活用

 介護施設サービスでの生産性向上については、直接的な介護の部分と間接的な部分を分けて、直接的なところはサービスの質を落とさないために人の手で行い、間接的な見守りや介護記録の作成については、ロボットやセンサーに委託していくことが考えられる。

 生産性向上に取組むことで、結果として職員の働き方改革や利用者へのサービスの質の向上にも繋がったとの結果もでている。

 例えば、見守りセンサーを付けることで「夜間の訪室が減り夜勤が楽になった」や「2時間に1回起こされるのがなくなって、よく眠れるようになった」など職員・利用者双方から前向きな評価をいただいている。

 さらに、抱え上げによる腰痛も、リフトをうまく活用することで腰痛を防ぎ介護を継続できる。働き方の面からの改善も期待している。

 高知県では以前から積極的にノーリフトに取組んでおり、今年のパイロット事業の一つにも含まれている。介護現場でうまく横展開したいと思っている。

 生産性という観点からだけではなく、いろいろなところに着目しながら取り組んで頂きたい。

虐待抑止へ「介護サービス相談員」活用推進

 18年度に行った調査によると、養介護施設従事者等による虐待は、相談・通報件数2187件、虐待判断件数621件と過去最多だった。

 そこで今年度から利用者の不満をヒアリングし、介護事業者にフィードバックする「介護サービス相談員」(介護相談員を改称)の派遣先に有料老人ホームとサ高住を追加した。第三者の目を入れることで、虐待発生のリスクを軽減するとともに、サービスの質改善にもつなげる。

 また、介護サービス相談員育成にかかる研修の費用の補助も行っており、各自治体には積極的に取り組んで頂きたい。

(シルバー産業新聞2020年10月10日号)

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