コラム

これからの福祉用具提案 根拠ある複数提示【屋内用歩行器】(連載10)

これからの福祉用具提案 根拠ある複数提示【屋内用歩行器】(連載10)

 昨年4月から義務化された福祉用具貸与の「機能や価格帯の異なる複数の商品の提示」。本連載では現場で想定されるケースから、具体的な複数提示の例を解説します。今回のテーマは屋外用歩行器です。

Bさんの事例

 Bさん(80歳・男性)は最近、足にしびれを感じたり、つま先が上げづらくなったりしてきました。整形外科では脊柱管狭窄症との診断を受けました。歩行障害もみられ、10分も歩くと痛みで、それ以上は歩けなくなってしまいます。座って休むと痛みは一旦落ち着きますが、再び歩き出すとまた痛み出します。慢性疼痛の鎮痛剤が処方され、多少は良くなりましたが、自宅で一人暮らしのBさんは自分で買い物にもいかなくてはなりません。そこでケアマネジャー、福祉用具専門相談員に相談し、屋外用の歩行器を使うことにしました。要介護度は1です。

座面付や馬蹄型。痛みを抑える方法別に複数提示

 Bさんのニーズから、選定提案の「福祉用具が必要な理由」は「一人で買い物に出かけられるよう、屋外用歩行器を利用します」と設定します。脊柱管狭窄症は名前の通り、脊柱管が狭くなって、中を通る神経を圧迫し、痛みやしびれなどを引き起こします。椅子に座ったり、前かがみになって骨盤を後ろに傾けたりすることで、神経の圧迫を軽減し、症状を緩和できます。そこで、①座ると痛みが緩和する②骨盤を後ろに傾けて歩くと痛みが緩和する――の2パターンから、Bさんの症状をより抑えられる歩行器を複数提案してみます。

 ①の「脊柱管狭窄症の症状で、長時間歩くことができないが、座ると痛みが緩和する」場合は座面付きの歩行器が有効です。選定提案の記載例は、「付属の座面に座って休むことで、痛みを軽減できる機種です」などです。②の「脊柱管狭窄症の症状で、長時間歩くことができないが、骨盤を後ろに傾けて歩くと痛みが緩和する」の場合、前腕部で支持ができる機種だと、骨盤が後傾し、痛みを抑える姿勢をつくることができます。記載例は、「腕で体重を支えられ、痛みを抑える姿勢がつくりやすい機種です」としました。坂道がある場合など使用環境によっては、抑速ブレーキ付やロボット歩行器なども提案候補になるでしょう。

 特に屋外用歩行器では、利用することで生活範囲が広がると、「もっと遠くの場所まで行きたい」といった意欲の向上に繋がるケースが少なくありません。そうした際は、再度アセスメントをし、新たなニーズに対応できる福祉用具の提案に繋げましょう。
高齢者生活福祉研究所所長 加島 守

(シルバー産業新聞2019年2月10日号)

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